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お届け便  作者: フクフク
本編
14/23

14




 小川に着き、数日前に仕掛けてあった罠を引き上げる。

「おっ、大量!」と、魚の数に、嬉しくて声がでる。

 魔樹と何度も試行錯誤して、罠を大きくしたかいがあったと、結果に満足する。

 魚を選別して、小さな魚は川へ返す。

 その行動が不思議だったのか「キャン?」と、大人しく見ていた白銀が問うた。


「えーっと、小さな魚は食べてもお腹の足しにならないだろう? だったら、いま小さな魚を返して、大きく成長したら、もう一度獲る。そのほうが、美味しく食べられるし、嬉しいだろ?」


 幼少時に、俺がじっちゃんに聞いた説明をそのまま話した。

 俺の説明に、白銀がじっと小川を見つめ、なにかを考えているようだ。

 しばし様子を見ることにした。

 すると、白銀が俺の服を咥え、小川から遠ざける。「なんだ? なんだ?」と言いながらも、その指示に従う。小川から少し離れた場所で、立ち止まり、前足で地面をポンポンと叩いた。


「ここにいろってか?」

「キャン!」


 俺の問いかけに、白銀が大きく吠えた。

 なにをしたいのかわからないが、面白そうなので「わかったよ」と、素直にその場へ腰を下ろした。

 白銀は、俺の行動を確認したあと、小川に戻っていく。その行動に注目していると、小川の直前で、立ち止まる。

 なにをする気だ?

 しばらくすると、白銀の前が、ピカッと、強く光った。

「おいっ! 大丈夫か?」と、慌てて白銀に近づくが、それより先に、白銀は、小川へ飛び込み、すぐに小川からでては、飛び込みをくり返す。

 その付近の地面には、大きな魚が複数確認できた。

 よくよく見ると、小川には、複数の大きな魚が浮いており、小川を泳ぐ白銀の口には、その大きな魚が咥えられていた。

 もしかしなくても、これ白銀の能力だよな……。

 ん? ってことは、さっきの魔法?

 えっ? えーっ!?

 俺の戸惑いをよそに、小川に浮いていたすべての魚を獲り終えた白銀が「キャン」と鳴き、俺の前に座った。尻尾が褒めてーぇと、揺れている。

 いろいろと、まじでいろいろと、聞きたいことはあるが、とりあえず、頑張った白銀を「よくやった。すごい!」と、頭をなでながら、褒めてやる。

 俺が説明したことは、ちゃんと理解していたようで、地面にあるのは、すべて一定以上の大きな魚だった。

 数日では食べきれない大量の魚を前に、魔樹は魚いるかな? 確実に返却されるよなぁと、現実逃避する。

 獲りすぎ注意を説明しなかった俺に落ち度はある。

 このポイントでの、魚の捕獲は、とうぶん控えようと思う。自然の力の回復をまとう。

 魚たち、美味しくいただくからなっ!


 小川のそばで、火を焚き、ウサギの肉と魚を焼く。

 ウサギの肉は、白銀の要望だ。狼だし、毎食肉は食べたいようだ。たくさんあるから、遠慮せず、たんとお食べ。

 残った大量の魚は、袋へ簡単に収めれた。まじで袋の容量の限界を知りたい。

 シカは、持ち帰れないと困るので、白銀によく説明して、行きと同じく、ウサギを狩ってもらおう。俺は、薬草や果物を採取して、袋の限界を探るのもありだと思う。

 いい具合に焼けた魚の香ばしい匂いが、ただよってきた。

 木の大皿を白銀の前へだして、焼けた魚をその上に次々と置いていく。「骨に気をつけて食べろよ」と、小言もしっかりと伝える。

 白銀の食事の用意ができたので、俺も目の前の食事に手をつける。

 一部の魚は、生で食べれることを確認したので、お造りにした。美味しくはあるが、醤油とワサビの絶妙な組合せがなく、なにか物足りない感じがした。

 食事のデザートタイム中に、膝の上に乗せた白銀の口に果物を運びながら、先ほどの件について尋ねた。


「なあ、さっきピカッて光ったのは、おまえの能力か?」

「キャン!」

「俺の説明を聞いて、大きな魚だけに、その能力を使ったのか?」

「キャン!」

「おまえ、すごいな!」

「キャン!」

「それって、おまえ以外のやつでも、使えたりするのか?」

「キャンッ……」

「そうか、気にするな」


 俺の質問に答えられず、落ち込む白銀をなぐさめる。

 白銀が特別なのか?

 鑑定では、チーウルフが、魔法のような能力を使えるとの情報はなかった。

 鑑定レベルが低くて、その情報を取得できなかった可能性もある。

 ただあの場面では、どのチーウルフも能力を使ってはいない。

 白銀もだ。命の危機だったにもかかわらず、能力を使っていない。

 能力を使うにも、なにか条件があるのか?

 それとも、いま突然使えるようになったとか?

 拠点に戻ったら、翻訳の玉を使って、傷が完治したあとのことも含め、白銀に聞いてみよう。 



 帰り道、ちょっとしたトラブルがあった。

 袋の容量を確認するため、帰り道がてら採取をはじめたのだが、ウサギ狩りオンリーの白銀が、獲物を見つけて走っていったまま、なかなか帰ってこない。

 心配して、その方角へ進むと、大きな茶色の塊の前で、白銀が困ったようにウロウロしていた。

 かけつけると、そこには白銀の3倍以上の大きなイノシシが、横たわっていた。

 その大きさに、圧倒される。

 たしかに、イノシシはダメだとは、言わなかった……。

 結局、そのイノシシも、難なく袋に入り、容量を確認するのは、あきらめた。


 安全地帯との境界線付近に帰ってきた。

 ここまでくれば安心だと、警戒をとき「今日は、おまえのおかげで、大量だったよ。ありがとうな」と、隣で歩く白銀に感謝の言葉をかけ、安全地帯に一歩、足を踏み入れた。

 突然、隣にいた白銀の気配が消え、俺ひとりだけが、大草原に立っていた。






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