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お届け便  作者: フクフク
本編
13/23

13




 安全地帯と西エリアの境界線で、俺にピタリと寄り添う白銀に声をかける。


「さっき説明したけど、ここが安全地帯の境界線だ。一歩前に進めば、おまえがいた北の森とは、ちがうエリアにでる。比較的安全な場所ではあるけど、油断はしないように」

「キャン!」


 わかっているよーとの白銀の返事に、わかってないだろうなぁと、苦笑いをする。

 拠点にきて初の外出が、嬉しいのだろう。半開きの口からは、赤い舌がみえ、尻尾が激しく揺れていた。

「いくぞ」と、白銀に声をかけ、西エリアに足を踏み入れた。

 景色が一変する。

 先の見えない大草原から、木々が点々と生い茂る草原に変化した。

 何度経験しても、不思議だと思う。

 それに比べ白銀は、動揺した様子もなく、辺り一面をひと通り見渡すと、クンクンと鼻を鳴らして、その土地の匂いから情報を仕入れていた。

 冷静なその行動に関心し、白銀の情報収集が終わるまで、待つことにする。

 待つこと数分――。「キャン」との白銀の合図に「もういいのか?」と、歩きはじめた。


 小川までの道のりの中、白銀に罠を使用して、魚を捕獲することを説明し、もしウサギなどの気配があれば、食料として確保したいので、教えてと伝えた。

 結果、小川に着く前に、ウサギ8匹とシカ1頭を捕まえた。十分すぎる捕獲量に、もう拠点へ戻ってもいいんじゃねぇ? と、本来の目的を忘れそうになる。

 これらを捕まえたのは、もちろん白銀で、「キャン」と鳴いたなぁと、思った時には、凄まじい速さで前を走っていた。姿が一瞬消えて戻ってくると、口には、獲物を咥えていた。

 俺の前に獲物のウサギを置き、全身で褒めてと、尻尾を揺らすその姿に、白銀にダダ甘の俺は、まあウサギだし、怪我はないどろうと、褒めちぎった。

 それが悪かったのだと思う。

 がぜんやる気になった白銀は、次々とウサギを捕まえ、最後には、大きなシカを咥えて、戻ってきた。

 白銀より、大きなシカを咥えて、戻ってくる姿は、とてもシュールで、唖然とした。

 なんといっても、先日まで、シカには苦労させられたのだ。

 俺たちが、捕獲しているウサギやシカは、姿形は地球の動物に似ているが、れっきとした魔物なのだ。正式名称が、やたら長く、面倒くさいので、俺が、慣れ親しんだウサギ、シカと言っているだけだ。なので、大きさや強さは、地球のそれとは異なる。この世界基準なのだ。


 白銀が、ドサッ――と、シカを俺の前に落とす。

 あまりにも大きなシカに、言葉がでてこない。

 えっ、この短時間で、この大きさのシカを仕留めたのかよ……。

 俺が、この前仕留めたシカは、これのふた回りぐらい小さなシカで、時間も要したし、かなり格闘したよ……。

 だれだ? 野生が消えた? リハビリが必要などと言ったのは!

 無理してそうもないし……。

 傷も完治していなくて、これ仕留めるの、やばくない?

 これが正常運転なのか?

 だとすれば、北の森で、チーウルフに囲まれた時って、相当やばかったのでは?

 何の反応もなく、何も言わない俺に、白銀が不安そうに「キャン?」と、呼びかける。

 その声に、ハッと我に返り、白銀の頭をなでる。


「わるい。わるい。おまえが、すごくて、びっくりしたんだ。だけど、シカとウサギは、もういいからな」

「キャン?」

「ここで解体すると、時間もかかるし、袋にそのまま――って、入った! えーっと、袋の容量もわからないからな。今日は、魚を獲るのが目的だから。でも助かったよ。ありがとな!」

「キャン!」


 これ以上の狩猟は不要だと、白銀に伝え、納得させる。

 素敵アイテムの袋でも、さすがに容量はカツカツだろうと思う。

 鑑定レベルが不十分なため、腰にある袋の容量が未だにわからないのだ。

 鑑定では、たくさん入る袋との情報しかない。

 袋の大きさと、入るものの大きさが明らかにちがう点と、出したいものを頭に浮かべて、袋に手を入れれば、でてくる点。以前、意図とちがうものがでた翻訳の玉事件で、少し信頼性を疑ってはいる。おそらく袋の中に収納されたものは、時が止まっていると思う点から、この袋は、素敵アイテムだと認識した。

 とはいっても、あの大きさのシカがそのまま入るとは、恐れ入った。

 前のシカ肉も残っているし、一部燻製にしてみるか……。

 魔樹に燻製部屋みたいな、小さな収納部屋を作ってもらって……。

 想像しただけで、涎がでる。

 朝食をとってから、あまり時間は経っていないが、色々とありすぎて疲れた。

 頭を働かせるために、袋から、真っ赤に完熟したリンゴをだす。

 甘い香りが、辺りにただよう。

 一番の功労者である白銀の口にリンゴを運び、俺も口にする。

 甘くて、うまい! 鍋があれば、ジャムなどにできるのになあと、考えながら足を進めていく。

 もうすぐ、今日の目的地である小川につく。






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