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お届け便  作者: フクフク
本編
10/23

10




 あれは、魔樹が成長しはじめて3日目ぐらいだった――。

 植物の育て方がわからず、少量の水で爆成長をしていく成木に、無知は怖いと学び、この世界の常識が知りたいと思った。

 お届け便に願うとしても、この世界の常識では、大まかすぎて『その商品は、お取扱いしていません』なんて、新たな機械音が流れそうだ。逆に購入できても、使用するのを戸惑ってしまう。

 常識が身につく能力があったら、それはそれで面白そうだけれど、性格や価値観などの概念を変えられたら、俺が俺でなくなってしまうので、やめておこう。

 無難に本だよな。お決まりの『ポイントが――』が、流れたら、まだ俺には必要ない知識だったと思い、あきらめよう。

 願う言葉も大事だ。慎重に考えて――この世界の基本が載っていて、生活に役立つ本が欲しい(・・・)と願った。


『承りました』


 ドスンッ。分厚い本が届いた。

 あぶねぇー!

 あと一歩手前だったら、足の上に落ちていた。

 お届け場所を指定できないのが、怖いよなと、グチグチ文句を言いながらも、足元にある本を開く。

 読めねぇー!

 アラビア語のような文字の羅列に、少し頭が重く感じる。

 俺、外国語、すっげー苦手なんですけど?

 ここは特典として、言語理解とかあってもよくないですか?

 もしくは、日本語でもよかったんじゃないですか?

 まあ俺には、お届け便があるから、いいですけど。

 言語を理解する能力が欲しい(・・・)


『ポイントが不足しています。チャージして下さい』


「おおいっ!」と、大声をあげた。

 いまの所有ポイントで、無理って、どれだけ高いんだ!

 お届け便の価格基準。価格基準を教えて欲しい(・・・)。あっ!


『その商品は、お取扱いしていません』


 …………。

 でたよ。新たな機械音。

 しかも、予想通りのアナウンスだった。

 予想が的中して、少し嬉しいと思っている自分が、すごくいやだ。

 まあこれで価格基準は、一生不明だとわかったので、逆にあきらめもつく。

 少し興味があったので、知りたかったぶん、残念ではある。

 ただ意図せずの欲しい(・・・)は、心臓に悪いので、注意がいる。注意しても、本心で欲しいと思っているので、なかなか防ぐのは難しいとも思う。

 それに、いままで届いたアイテムは、すべて大活躍中だ。無意識の欲しいは、悪くはないかもしれない。

 木の苗0ポイントが頭をよぎる。

 あれは……0ポイントだったし、いまは成木だし、拠点の目印にもなっているし、結果としてよかったよ。

 そっ、そうだ。本の購入ポイントを確認しよう。今後の商品購入のサンプルになるしね。

 頭を切り替え、お届け履歴を確認する。

 基礎本300と表示されていた。高くはあるが、微妙な感じだ。

 この便利な袋の3倍。火打石や棒術などのスキル玉にいたっては、30倍の価格だ。

 この世界では、識字率が低く、本は貴重で、それが考慮されての価格だと予想される。

 だとすれば、言語の能力は、相当高いようだ。

 この分厚い本が、基礎の本であることは確認できたが、読めないんじゃ意味がない。

 どうするんだよ。単語さえわからないのに、文字だけで解読しろってか?

 俺は言語学者じゃないんだぞー。

 肩を落として、嘆いていると、ふと閃いた。

 別に能力じゃなくてもいいんじゃない?

 あっ! この本を読めるものが欲しい(・・・)


『承りました』


 よし! 慣れ親しんだ機械音に、大きくガッツポーズをする。

 白い玉が、俺の手のひらに現れた。

 すぐに鑑定をして、効果を確認する。

 翻訳の玉。言葉や文字が翻訳される。効果は約1時間。

 充分な答えに、頬が緩むのを止められない。

 今後の翻訳の玉の使い道を考えると、ここで翻訳の玉を発見できたことは、大きい。

 上機嫌で、白い玉を口へ運び、飲みこんだ。

 本の表紙を開くと、アラビア文字の下に日本語が表示されていた。

 おっ? 文字が日本語へ変化すると思っていたので、この翻訳の仕方には、少し驚いた。

 これは文字の勉強にもなるかもしれないと思いつつ、知りたい内容が書いてあるページを探りはじめた。


 ――1時間後。

 突然読んでいた日本語を消え、アラビア文字だけとなった。

 はぁー。大きく深呼吸して、基礎の本を閉じる。

 1時間って、早すぎる。知りたかった内容のほとんどが確認できていない。

 不満があるとすれば、この基礎本、目次がないのだ。お目当ての情報を探すにも、ページ数が多すぎて探すだけで時間を要した。

 これは再挑戦が必要だが、明日のことも考えて延長することはやめておく。

 それに翻訳の玉の消費ポイントが30と、高めだったので、苦手だけれど、本当に苦手だけれど、言語の勉強も視野にいれる。

 本を読む限り、日本語と同じ方式で文字が成り立っているように感じた。

 アラビア文字を平仮名に割り当てることができたら、翻訳の玉を使用せず、本が読めることになる。

 ポイントの節約にもなり、基礎知識もえられる。一石二鳥だ。

 まあ、俺が自力で言語を習得できればの話だけれど……。

 可能性はあるし、次の機会に文法や単語の意味を注視して読んでみよう。






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