表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
陰陽師~光と闇~  作者: 彦麿呂
7/7

ホワイトストーン

「あっ、そうだ。山川くんに似ている」



山川と言うのは小学校6年の3学期に、親の転勤で引っ越して行った男の子だった。



明菜が苛められると山川が、

いつも助けてくれた。



明菜にとって山川は初恋の相手だった。



『明菜ちゃん。これあげる』


『えっ! これ何?』


『この箱は今日の夜の12時になったら

開けて。約束できる?』


『うん。分かった』


中身は何だろう?


明菜はワクワクしながら、目覚まし時計を12時にセットした。


よし、あと30秒。


時計の秒針に合わせて、明菜は数を数える。


『ジリン……』


目覚まし時計が鳴り出した。


『よし!』


ドキドキしながら包装紙を開く。


白い箱が現れた。


一気に箱を明菜は開けた。



『えっ! どうして?』



箱の中身は山川が大事にしているホワイトストーンの携帯ストラップだった。


初めてホワイトストーンを見せて貰った時に、明菜はホワイトストーンの魅力に、すっかり取り付かれてしまった。


太陽光線を吸収する、そのホワイトストーンは、様々な光りの輝きを放って、微妙な色合いを(かも)し出す。


山川の家は明菜の家から50メートル離れていたので、帰りはいつも一緒だった。


「ねえ、見せてよ」


帰りはいつもホワイトストーンを見せて貰っていた。


ホワイトストーンを見詰めている明菜は、ゆったりとした幸せな

気分がジャンジャンと湧き上がって来るのを感じた。


明菜が何も言わなくても、


「ほら」


と、山川は明菜の前にホワイトストーンを差し出す。



ニッコリと微笑みながらいつも受け取っていた。



山川から包装紙で包んだ箱を貰った日は


「ゴメン。今日、忘れたんだ」


「いいよ。明日見せてね」


と、言っていたのに。


明菜は次の朝、いつもより早く山川の家に行った。


ホワイトストーンは忘れたと言っていたのに……。


どうして箱の中に入っていたのか?


明菜は気になって、その夜は目が冴えて眠れなかった。


『えっ! そんな馬鹿な!』


山川の家は空き家になっていた。




「訳わかんない……」


家の回りをぐるぐる歩く。


ガラス戸から家の中が見えた。


部屋の中はガランとして何も家具類は無い。


「どこ行ったの……」


茫然として、明菜は玄関の前の石畳に

ちょこんと座っていた。


そう言えば昨日は山川くんの様子が

変だった。


いつもより元気が無かった。


明菜がダジャレを言えば、ゲラゲラ

笑いこけるのに、昨日は少し笑っただけだった。


「アキちゃん。どうしたの?」


隣のおばさんがごみ袋を持って聞いてきた。


おばさんとは毎日、顔をあわせるうちに知り合いになった。


「おばさん。山川くんがいないの……」


「何かあったのかねぇ。

昨日の夜、急に逃げるみたいに

出て行ったのよ。

アキちゃんにも何も言わなかったのね。可哀想に……」


「おばさん。ありがとう」


そう言って、明菜はホワイトストーンを

握りしめながら、ゆっくりと立ち上がった。


そして、トボトボと歩き出した。


「可哀想に……」


明菜の後ろ姿を見ながら、

おばさんが呟いた。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ