予兆
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この作品は長編になります。
宜しくお願い致します。
この女、どう考えても人間では無い。
(逃げないと……)
身体が震えて上手く走れない。
足がもつれて転んでしまった。
『クックッ……』
後ろで、ゾクッとするような声が聞こえる。
這ってでも逃げなきゃ……
『うわぁ~』
いつの間にか乳白色の霧が立ち込めている。
逃げなきゃ……
足がもつれながらも、頭を上げて前方を見た。
突然、湧いて出たように墓石が現れる。
さっきまでは無かったのに……。
足を掴まれた。
もう駄目だ……。
『助けて!』
と、叫んだ途端に目が醒めた。
早瀬光一は、悪夢のせいで寝汗をびっしょりかいた。
首や肩が、ガチガチ凝り固まっている。
濡れた下着を着替えながら、首をゆっくりと回す。
『ゴキゴキ』
と音が鳴った。
最近、同じような悪夢を見るのは何故だろう。
悪夢を見るたびに首や肩が、
ガチガチになる。
理由が分からない。
……何かの予兆か前兆なのか?
枕元の目覚まし時計に視線を移すと午後4時を指している。
(えっ、嘘だろう……?)
たった2時間しか寝てないのに満ち足りた感じがする。
今日は1週間振りの本宮明菜とのデートだ。
明菜の事を思い浮かべると嫌な気分が消える。
光一は鼻歌を口ずさみながら、ステップを踏んだ。
明菜との出会いは六本木のジャズグラフだった。
CD発売ライブをやっていた時にお客として来ていた。
彼女とはフィーリングが合い、
それからの付き合いになるから、かれこれ2年になる。
プロポーズしたのは去年の12月15日。
自分のマンションに彼女を招待した。
10畳のフローリングの部屋の真ん中に
丸い硝子のテーブルを置く。
テーブルの上には、明菜の好きなケーキと赤ワイン。
蝋燭をテーブルを囲むようにハートの形に合わせる。
約束した8時が迫ってくる。
光一は中腰になり、5分前にすへての蝋燭に火をつけだした。
すへての蝋燭に火を点け終えて、
『ふー』
と息を吐く。
『ピンポーン』
玄関のチャイムが鳴った。
「よし」
光一は小さく呟くと部屋の電気を消した。
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