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真珠星  作者: 夢乃マ男
49/50

偶像5

街を一望できる高いビル。

ここから夜景を観る事ですら

ほんの一握りの存在。


私はそこから、さらにひとつまみされた人間だ。

私はアイドル。あの流星風流の秋田憂だ。

暗い闇の中に際立つ窓から洩れた光。

街灯、車のヘッドライト。イルミネーション。

全てが私の目に映る。


ここに来ると思い出すのは

ファンがペンライトを手に持ち私たちに向けてくれた。幸せな時間。街の光が客席の光と重なるのだ。

でも、ライブでのその時の光は気持ちのこもった光だった。

前に地方に行った時私のカラーで会場が埋まった事があった。あの時は嬉しくて泣きながら笑顔で歌って踊ったなぁ。その後ありがとうを伝えたくて泣きながらブログを更新した。


思い出に浸っていると目の前の光達の意味の無さに冷静になる。

風が冷たい。みんなといる時は寒い!と言いながら体を寄せ合い、暖をとっていた。

いろんな季節を皆と過ごしてきたなぁ。


目の前にある光と違い、意思のある光に私は何度も包まれた。

ここから見えるあの球場も私色に染めた事だってある。


私の大好きな大事な衣装に着替える。

それにしても寒い。

雪まで降り始め、私の身体を虐める。


私色に染まったあの小さなライブのセットリストを歌いながら踊りきる。


そして私にとって大事な曲をそこに付け足す。私がセンターを務めた曲。

歌い踊る全力で。さっき着替えた衣装もこの、曲の為に作られた曲だ。

何故だろう。涙が溢れてくる。

自然と涙で、景色にピントをあわせられなかった。

やけに綺麗だ。


今、二葉ちゃんと話したくなった。


そう思った瞬間二葉ちゃんから着信があった。

電話をかけようと思った時、メッセージを送ろうと思った時、その相手から連絡が来るのはなんでなんだろう。あるあるだ。


二葉ちゃんからの着信と画面を見ずともわかったのは、今時珍しく彼女からの着信だけは着メロ設定してあるからだ。


抽選で選ばれたファン数人とのスペシャルイベントのカラオケ大会。そこで2人で歌った曲だ。

いろんな思い出が蘇る。


彼女が新規メンバーとしてグループに入ってきた時、正直受け入れる事ができなかった。


どうして私たちオリジナルメンバーだけじゃだめなんなんだろう?

そう思っていた。

あの舞台を観るまでは。


新メンバーとして入ってきた彼女たちの中から二人がいきなりの舞台主演を務める。休業中だった私は冷やかし半分でその舞台を観に行き一喝させられた。


復帰の背中を押された。と言えば聞こえが良いが新メンバーに負けてられない!と思ったのだ。


二葉ちゃんとセイカちゃんに初めて会った時、私はずっと、会いたかった!と二人に握手を求めた。

どちらが先輩なのかよくわからない光景に彼女らは戸惑い、周りが笑っていたのが記憶に新しい。


そして、舞台終了とともに発表されたシングルで彼女らはダブルセンターを務めた。

その時に二列目の真ん中、通称裏センターに私は抜擢された。


この時期から二葉ちゃんとセイカちゃんと一緒に仕事することが多くなり二葉ちゃんとはファンも知る仲良しコンビだ。


そして裏センターがきっかけなのかわからないが世間に認知されて、センター曲をはじめ、雑誌のモデルや映画の主演をいただいた。


映画は憧れの三好監督。

あの舞台の監督だ。二人一組の監督と聞いていたが三好龍馬さん一人での監督作品だった。


グループのファンのおかげで映画の成績も上々だった。


私はその時がピークだった。

それ行こうシングルのパフォーマンスメンバーに選んではいただいたが私はどんどん目立たないポジションに追いやられる。

私はこのグループが好きだ。


もし、話題になり彼女達を応援する声が増えるなら私は私を捧げても良い。

みんなの糧になるのなら。


生まれ変わってもこのグループのメンバーになりたいな。


ふと目をやった景色。だんだんと光が少なくなってようやく気づいた。私たちがライブをやったあの球場のすぐ側で青と白の光が見える。


私の色。真珠星の青白い光。メンバーのイメージカラーを決める時私は絶対にこの色がいい!とだだをこねた。

真珠星は2つの星の総称。

ファンがいるから私がある。

私がいるからファンがいる。

どちらかが欠けてしまってもダメなんだ。この色は私たちの絆の色。


だから青と白がいい!


そう言ってわがままを通した色。

そねたくさんの青と白の光は意思を持って振られている。今まで散々見てきた統一性のある動き。


そこに再びあの曲が流れる。


「もしもし、すごいよ。憂さんのファン!!」


電話の向こうからは二葉ちゃんの声とともにライブ会場のようなたくさんの人達の声が聞こえる。


「二葉ちゃん、なにしてるの?」


「お忍びで憂ちゃんのノンオフィシャルのファンイベント来てまーす!!」


私は電話を切り走った。

地上に煌る季節外れの真珠星にむかって。


私はアイドルだ!


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