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真珠星  作者: 夢乃マ男
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発表と約束

そんな小説の存在を日々の生活と流星風流のオタク活動で忘れていた頃。

強烈に思い出させる出来事が起こる。


新メンバーの募集のお知らせがライブ会場にて発表された。

既視感のあるこの状況。他のアイドルでも、ありがちな演出なのだが、既視感の正体がすぐにわかる。

あの悪趣味な小説だ。


ライブ中、アイドルに夢中になり周りに合わせてなのか身体に染み付いたものなのかわからないがペンライトを振り、曲それぞれで大声を出し疲労困憊な自分の心はなんだかいきなり心臓を掴まれたように身体がこわばり身体をなぞるように流れる汗が急に冷たく気持ち悪く感じた。


さっきまでのまさに無我夢中で楽しんでいたあの気持ちを返して欲しい。

新メンバー加入を認めていないわけではない。

ただただあの小説をなぞるような出来事が目の前で展開されていく様が気持ち悪いのだ。


展開を知っている演技仕事って改めてすごいなと思う。待っているのがバッドエンドと知っていながらも、その場その場を楽しそうに演じているのだから。


そして、目の前のステージではメンバー達も発表に驚き戸惑っている。満身創痍なのはお互い様で、そこでのサプライズはなかなか状況が把握できないのもわかる。


秋田憂ちゃんも驚いてしゃがみこんだままモニターの新メンバー募集の文字をただただ見つめている。

その中でも冷静にならなきゃ!って気持ちが人より強いのか、グループリーダーが纏まっているのかいないのかふんわりとしたMCでライブは終わりを迎えた。


客席は退場者で溢れかえりパニックを避けるために席順ごとに規制退場になる。

どうやら自分がいる席付近はまだまだ退場までに時間がかかりそうなのでSNSを開くとオタク共は新メンバーの加入に思ったよりも否定的な意見が多かった。


そんな意見を一通り流し見すると、例の小説を開き作者ページを開く。


そこに直接やりとりできる機能があるからだ。


「編集部の四ツ谷です。直接会ってお話ししたいことがあります」


そうメッセージを送る。

会場を出て最寄り駅に向かう最中返信がきた。


「お待ちしていました。ぜひよろしくお願いします」


その前向きな返答に、書籍化などの不要な期待感を与えてしまったかもしれない自分のメッセージにダメ出ししたくなる。


話してみたい気持ちがあるのは確かだが会ったところでなにを話そうか。


ライブ後の昂ぶった感情でらしくない不用意な約束を取り付けてしまった事を深く後悔する。

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