偶像
街を一望できる高いビル。
ここから夜景を観る事ですら
ほんの一握りの存在。
私はそこから、さらにひとつまみされた人間だ。
私はアイドル。
暗い闇の中に際立つ窓から洩れた光。
街灯、車のヘッドライト。イルミネーション。
全てが私の目に映る。
ここに来ると思い出すのは
何年か前のステージ。ファンがペンライトを手に持ち私たちに向けてくれた。幸せな時間。
その時の光は気持ちのこもった光だった。
私たちにはそれぞれイメージカラーがあり、自分の好きな娘のイメージカラーでペンライトを光らせてくれる。私のカラーを見つけた時は嬉しかったなぁ。
思い出に浸っているとそのただの無機質な光が徐々に減っていく。
風の冷たさが光が減っていく寂しさからなのか余計冷たく感じた。
皆が見ていた私は私だったのだろうか。
普段は露出の高い服すら規制されてる反動からなのか、身に纏っているものを全て払いのけてみたくなった。
全身で冷気を感じた。
街の街灯を背に裸の私。
そんな写真が出回っても大して価値もつかないのだろうな。
雪まで降り始め、私の身体を虐める。
屋上のヘリの上をぐるぐると何周かしながら少しの時間を遊んだ。
目を開けた時に幸せな明日がまっていますように。
私はなんの意思も持たない冷たい風に身を任せる。
ほのかに積もり始めた雪が赤く染まっていた。