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9話 ヒロインに会いに行くようです

兄にフィオナに会いたいと話した日から、七日ほど過ぎた。話した翌日には兄が行動を起こしてくれた為、私はジェード様と二人フィオナに会いに行くことになった。


ジェード様はお兄様の護衛なのに……いいのかな?


そう思い尋ねてみると兄から許可は出ているようで、問題ないという返答がジェード様から返ってきた。

少し苦笑いになっていたのはきっと兄が無理を言ったせいだろう…いや、元を辿れば私が兄に話を持ち掛けたせいか。


ジェード様…振り回してすみません…


そう謝ると少し驚かれた後大丈夫ですよと微笑んでくれた。さらに気を遣わせてしまったようだ。


でもこれはお兄様の未来のためでもあるから……!


自分にそう言い聞かせてジェード様と共に馬車に乗り込む、兄が見送りをしてくれる予定だったがタイミングを謀っていたかのように悪役令嬢ジュリアが現れて兄を連れていってしまった。


あの女、いつかシめる!


王女には似つかわしくない決意を掲げながら私はフィオナの住む屋敷へと向かった。








△△

彼女が住むのは城下町より馬車で一時間程行ったところだ。

ここでフィオナの情報を整理してみることにしよう。


フィオナ・ロレンツィ

ロレンツィ公爵家の長女。

幼い頃に母が天国に旅立ってしまい、現在の家族は父と兄。

兄の通っていた学校に通い、優秀な成績から彼女の兄も在籍していた生徒会に誘われる。

物腰は柔らかく、家庭的でお菓子作りが得意。猪突猛進な一面もある。


これが私が乙女ゲームで知っているフィオナの情報だ。


家庭的でお菓子作りが得意とかヒロインにありがちな設定だと思う、でも仕方ない彼女はヒロインなのだから。

母親の居ない家庭で父と兄に愛され、まっすぐに育った公爵令嬢。

その設定はこの世界でも同じなのか確認しなければならない。


もし同じなら、是非兄を攻略してもらいたい


お兄様にあんな寂しい顔をさせないように、あとついでにジュリアを義姉様と呼ばなくても良いように!


ふんすと気合いをいれていると、目の前に座っていたジェード様がくすりと笑うのが見えた。

今の百面相を見られていたことが分かり恥ずかしくなって俯く。


「アリス様は随分気合いが入っているんですね」

「…その、殆ど知らない人に合うのだから…こう、気合いを入れて置かないと、と思いまして…」


柔らかい口調に頬を染めながら答える。


前回一緒に街へ出掛けた時以来、ジェード様は敬語が残りながらも対等に話してくれるようになった。

ため口は流石に慣れないと言うことだが、以前より畏まらずに話してくれるのは嬉しく思う。


「この関係は二人だけの秘密ね、うふふっ」…なんて恋愛脳的な事を言うほど子供でも無いけれどアリスとして育てて居た恋にも満たないこの気持ちを持つ身としては、少しだけ嬉しいと感じてしまう。


「…気合いが必要なほど、緊張しているのなら私がおまじないをかけましょうか?」

「おまじない?」

私が首をかしげるとジェード様は騎士服の胸ポケットをまさぐる。


「手を出して下さい」


言われるままに左手を出すと、その手首に細いリボンが結ばれる。私の髪の色同じプラチナブロンドのリボン。

けれどそのリボンは薄汚れていて、端は少しほつれかけている。


「勇気が欲しい時や、何か頑張りたい時はこうして手首に細い紐を結んでおく。そうすると気持ちが落ち着いて物事が上手くいきやすくなるそうです。昔…私がまだ騎士団に入る前に、ダニエル殿下が私にしてくれたまじないで…これはその時に私に力をくれたリボンです。古いですが、効果はあると思いますよ」


結ばれたリボンをじぃっと眺める。


お兄様からおまじないでもらったリボンを、ジェード様はずっと持ってたんだ。

…少し意外かも。おまじないなんて信じない人だと思ってた。

何だか懐かしいな…昔、前世で流行ったミサンガみたい。


「ありがとうございます、ジェード様!私、頑張ります!」

そう告げるとジェード様は微笑んでくれた。





それから暫くして、フィオナの実家へと到着すると屋敷の前でフィオナとその家族と思われる二人の男性が出迎えてくれた。


馬車を降りるとロレンツィ公爵と思われる中年の男性が深く頭を下げる。

「此度の御来訪、歓迎いたします。アリス王女殿下、ロレンツィ公爵家当主グレイ・ロレンツィと申します。此方は長男のフィリップ、そして長女のフィオナです」

「お初にお目にかかります、王女殿下」

ロレンツィ公爵の紹介にフィリップが微笑んでフィオナが礼をする。


「お出迎え感謝致します」

私もふわりと微笑んで挨拶を返す。するとフィオナが様子を伺うように此方を見ているのに気がついた。

「あの…王女殿下、お加減はもう宜しいのでしょうか?」


あー…そう言えば私、フィオナとの初対面で記憶が戻って倒れたんだっけ…


その事を思い出してフィオナが心配してくれたことに気がつく。


普通に良い子かよ。


「ご心配お掛けして申し訳ありません、この通りもうすっかり良くなりましたわ」

笑って見せるとフィオナは安心してくれたのか良かった、と微笑む。



うん、良い子。もしこの心配が演技だったら主演女優賞ゲット出来るくらいだけどね


「本日はフィオナ様とお話ししてみたくて…個人的に訪問させていただきました。前回は全くお話しできなかったので…申し訳なくて」

目を伏せて見せると、フィオナが慌てる。

「お気になさらないで下さい!王女殿下の体調が優れない時に伺ってしまった私が悪いのです」

しゅんとしてしまったフィオナに私は慌てる。


責めてるつもりはないからね!?


「いえ、そんな事はありません。今回は…その、本当にフィオナ様とお話ししてみたくて…」

先程の「お話ししたい」という言葉を叱責しに来たと、少なからず誤解されているようなので慌ててそう告げフィオナを見上げると驚いたように目を見開いていた。


「フィオナ、王女殿下を中へ案内して差し上げなさい」

驚きのあまり一瞬固まっていた彼女にロレンツィ公爵が声をかけるとフィオナは慌てて頷き、私を応接室のような部屋へと案内してくれた。


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