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SS とある侍女の過去と決意-匿名侍女M-

私には大好きな憧れの先輩がいた。

仕事ができて、格好よくて、時々可愛くて……社会人としても人間としてもその先輩が大好きだった。


先輩の後をついて歩くようになって分かった事がある。

彼女はとんでもなく奥手で鈍感なのだ。


同僚だと思われる男性社員とどうみても両想いなのに全く進展がない。



ここは私がひと肌脱いで差し上げましょう!



お節介は承知の上、大好きな先輩には幸せになって欲しい。

私は先輩を焚き付けるため、先輩の同僚さんが好きだと言ってみた。

これで先輩が同僚さんに告白してくれれば上手くいく!と思ったのだ。

けれどその考えは甘かった。

あろうことか彼女は私の恋を応援すると言い出したのだ。


違う!違う!そうじゃないのに!!


否定したいけれど面倒見の良すぎる先輩は私と彼を取り持ってくれようとし、私も引っ込みがつかなくなってしまった。


そんな状態が続いたある日、私は先輩を今度こそ焚き付けようと同僚さんに告白しにいくフリをした。

これ位すればきっと先輩も告白するかもしれない、これで上手くいってくれればと。





けれどその日、先輩は階段を踏み外して亡くなってしまった。








◇◇◇◇


先輩が居なくなった数年後、私は病気になった。闘病は長く、毎日が苦しかった。

家族に看取られながら思うのは今までの人生のことはもちろん、先輩のこと。


もし、来世があるなら…先輩とまた会えたら…今度は絶対に先輩に幸せになってもらうんだ、その為なら私は何でもする。

だから、どうか。


また先輩に会わせて。



そう強く願った私は気がつけばとある世界に、前世の記憶を持ったまま転生していた。


先輩がよく話してくれた乙女ゲームの世界、だと思う。国の名前や施設、国王の名前が一致しているから恐らく。




もしかしてここに先輩が居るかもしれない!!



そんな事を思った私はある程度行動できるようになった頃から、人と繋がりを作り独自の情報網を作り上げた。

人脈を作るのは簡単だった。

転生した私は、私と同じ世界から転生してきた人間を見分けることが出来る目を持っていた。

見つけた転生者と繋がりを得て、さらにそれをこの世界の人脈に繋げていく。


そうして出来上がった情報網。

それを更に広げるため、私は城に侍女として就職した。

そこでようやく見付けたのだ。


ずっとずっと会いたかった先輩を。

先輩はなんと王女様に生まれ変わっていた。

前世での記憶は無いようだがその言葉の端や無意識に呟く言葉からいつかは戻るのかもしれないと感じた私は、この世界で出会った友人と共に王女付きの侍女に志願した。



城で働くようになって暫くした頃、用事があって騎士団の訓練場に赴いた私はそこでまた衝撃を受ける。



大好きな先輩だけでなく、先輩の想い人であった同僚さんまで転生してるじゃない!

これは前世で結ばれなかった二人が結ばれる為に用意された世界なのだわ!

そして私は今度こそ二人の架け橋になるのよ!



前世では見られなかった二人の幸せな姿をやっとみられる、これはそのチャンスなのだ。


こうして私は先輩に侍女としてお仕えしつつ、二人の恋路を応援することにした。



…この二人も前世同様なかなかくっついてくれないけれど。

それでも前より先輩……姫様はその恋を実らせようと努力されている気がする。



私も後輩として従者として、彼女を妨害するものは全力で阻もう。

その為にきっと私は転生してきたのだから。

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