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SS 義理の親-エリック視点




マーカス・パール。彼は第一騎士団に属していて新人の教育を任されている私の義父だ。

普段はとても尊敬できる人だが酔うととても面倒くさい。


「エリック―…水…」


「飲み過ぎないでくださいとあれ程言ったのに…」



だらしなく床にうつ伏せになりながらへらへらと笑うその姿にため息がこぼれる。


「仕方ないだろぉ…飲むのも付き合いのうちだ!」

「とか言ってまた二日酔いで頭痛が酷くなっても知りませんよ」


呆れながらも水を取りに行ってやろうとすればいつのまにか起き上がっていた義父に腕を引かれ抱き寄せられた。


「そんな冷たい事いうなよぉ、おとーさん泣いちゃうぞ」


鬱陶しい、酒臭い。


「義父さん、重いです」


「俺の愛情だ、受け取れ」


「いりません」


押し返そうとするとさらに腕の中に閉じ込められる、そろそろいい加減に離してほしい。酒臭すぎて呼吸が出来ない。

そう思い突き飛ばしてやろうかと身構えると義父は少し寂しそうな顔で笑った。


「俺は結婚前に、身内と恋人に一気に先立たれてなぁ…その事を思い出さない様に自分を誤魔化しながら騎士団に尽くしてきた。けど、やっぱどっかで寂しかったんだなぁ…義理でもこんな出来た男が息子になってくれてすげぇ嬉しいんだ…」


初めて聞いた義父の過去だった。驚く私の頭を乱暴に撫でて開放すると彼は床に座り込んで目を細める。


「もう家族は持てないもんだと思ってた…どんな形であれエリック、お前が来てくれて俺は救われたんだ。家族になってくれてありがとう、ここにいてくれてありがとうな」


その言葉に胸が痛む。

家族を失ったのは私も一緒で、経緯はどうあれこの人が義父になってくれて良かったと思っているのだ。

単純に同じ思いでいてくれたことが嬉しかった。


「…私も、貴方と家族になれて幸せですよ……父さん」


少し照れながらそう呟くが返事は無い。


まさか。


少し俯き加減になっていた顔を覗き込んでみれば義父はすやすやと寝息を立てていた。

「まったく…」


呆れながらも寝てしまった義父をベッドに寝かせる為、私は自分より大きいその体を持ち上げようと気合を入れるのだった。

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