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26話 その頃学校では3

ダニエル視点最後です


ジュリア嬢がいない隙を狙って知らせてきたカイルを伴い、慌てて医務室を訪れるとそこには医師に手当てをして貰っていたフィオナの姿があった。

足首は捻ったのか包帯が巻かれているし、あろうことか顔にも少し傷がついている。


「フィオナ…っ、すまない…私の婚約者がとんでもないことを…」


「いいえ、きっと私に悪いところがあったんです。それに大したことありませんから」

私の顔を見てフィオナが慌てて大丈夫だといってくれるが、もし彼女に何かあったらと思うとそうは思えなかった。


「大丈夫なわけないだろ、どう考えたってやり過ぎだ」

カイルも珍しく顔をしかめている。

「カイル、目撃していた人はいるのかい?」

「あぁ、生徒が数人な。俺も見た」

「なら断罪する時は証人として発言してくれ」

「………するのか、とうとう」

カイルの言葉に無言で頷く。


「あ、あのっ…私なら平気ですから!それに…ジュリア様だっていつかきっと分かってくださいます。あの方は嫉妬してるだけなんです!つい私がダニエル様に馴れ馴れしくしてしまったから…好きな人を取られると思って…それで!」


ジュリア嬢を庇おうとするフィオナに胸が痛む。

階段から突き落とした相手を庇えるなんて、心が広いにもほどがある。自分に危害を加えてた人間を許すというのか…ジュリア嬢とは大違いだ。


「フィオナ…仮にそうだとしてもしていいことと悪いことがある。もしフィオナが落ちて亡くなっていたら…ジュリア嬢は人殺しの罪人になってしまう。それを止めるためにも彼女は断罪されなくてはならない」


婚約した当初の幼いジュリア嬢を思い返す。

昔の彼女は今のフィオナに近い思いやりが溢れ優しい令嬢だった…けれど王妃になるための教育が彼女を変えてしまった。厳しかったのかもしれない、誰にも相談できなかったのかもしれない…その結果、彼女は歪んでしまった。

相談に乗れなかった私のせいでもある、だからせめて…彼女がこれ以上罪を重ねる前に、私の手で幕を下ろす必要がある。


私は二人に背を向けると医務室の扉に向かう。

「カイル…暫くの間、フィオナについてやっていてくれ」

「ダニエル?」


「…ジュリア嬢との婚約は破棄する」


振り返らずにそう告げると息を飲む気配がした。

「私の一存では出来ないから父上に直談判しに行く」


「そ、そんな…」

「フィオナ、ジュリア嬢のしたことはそれだけのことだ……カイル、あとは頼む」


「あぁ、気を付けて行けよ」

背中にかけられた言葉に軽くてをあげて答えると医務室を出て、馬車を呼ぶ為の手配をする。


まさかこんなに早く戻ることになるとは…。

アリスは、どんな顔をするだろうか…ジュリア嬢とあまり仲が良くなかったから喜ぶかもしれない


そんな事を思い苦笑する。

ジュリア嬢の為と言いながら自分の為な気がする。

婚約破棄が嬉しいだなんて、私も大分性格がねじまがっているようだ。


「……これではアリスに嫌われてしまうな……」


誰にともなく呟いた言葉に返答するものはいなかった。


アリス「お兄様を嫌うなんてありえない!」

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