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15話 責務を与えられたようです

「………なるほど、賊の一味か」

父はそう呟いて口許を片手で抑えた。


話を聞いた私はさっそく父に取り次いでもらい、エリックの体調を考慮して城の中の談話室で話を聞いてもらうことにした。

両親の座るソファーの正面に私とエリックが腰掛けて両親の後ろにはそれぞれの護衛が、私達の後ろにはマリーとメアリーが控えている。

兄はまだジュリアの相手をしているらしくこの場にはいない。


「話はわかった、騎士団を派遣できるか検討してみよう」


「ありがとうございます」


父の言葉にエリックはソファーから降りると膝をついて頭を下げた。

「エリックは体が辛いだろう、後は私達に任せてゆっくり休むといい。アリスは少し残っておくれ、次の誕生日会の相談をしたいからね」


メアリーに連れられて部屋に戻るエリックに付き添おうとすると、父から声をかけられた。


「わかりましたわ、お父様。じゃあエリック、また後でね」

「はい、アリス様。では御前を失礼致します」


エリックが完全に部屋を出ていってから私はソファーに座り直して、両親に視線を向けた。


「……私の誕生日は三ヶ月前に終わっています、お父様。お話とはなんでしょう?」


「…アリスはこういった所においては聡明だが、簡単に人を信用しすぎる所があるな」

父は眉を下げて苦笑を浮かべる。

「エリックの事、でしょうか」

そう告げると頷かれる、予想していた事だ。


「アリス、お前はどう思う?全部本当の話だと思うか?」


「半分本当、半分嘘だと思います」

その答えに父は目を細める。

「ほう、どの辺りが嘘だと思う?」


「…エリックは、わざと…私の馬車の前に放り出されたのだと思います、逃げてきたのではなく。城内に賊を手引きする間者として」


フィオナの所に行く際に目をつけられていたのかもしれない、怪我をした子供なら簡単に中にはいれると思い盗賊はエリックを馬車の前に放り出した。


生い立ちや人質がいるのは事実だろう、エリックはすがり付くような助けを求めるかのような目をしていたから。

その人質を使って盗賊はエリックを脅している。

人質を救う際に騎士団を派遣させ城が手薄になった時を狙ってエリックを使い、賊は城に忍び込もうとしている。

私はそう予想していた。


確信を得たのはエリックと城の中を散歩していた時。

あの時、エリックは歩きながら城の隅々に視線を向けていた。最初は城の中が物珍しいのだと思っていたけれど、どうも雰囲気が違う。

何処からなら賊を手引きできるか探っている、そのくらい真剣に城の中を眺めていたのだ。

それゆえに気がついた。



「それを知って、アリスはどうするつもりかしら。…城を犠牲にして人質を助ける?それとも人質を犠牲にして、城を守る?」


いつも優しげな微笑みを浮かべている母が鋭い瞳で此方を見ている。

私の出方を伺っているのか…親バカだとばかり思っていたが案外、この両親はくえない狸なのかもしれない。


「どちらもです、お母様。人質を救い、城も守ります。そして…エリックを自由にしてあげたい」


「それでこそ私の可愛いアリスだ!」

私が答えたそのすぐ後に後ろから声がして振り替えると、いつの間にか目をキラキラさせた兄とジェード様が後ろにいた。


いつの間に!?

ドアが開く音、全然しなかったけどあんたら忍者ですか!


「父上、人質救出へは私が向かいます。第一騎士団をお貸しください。そして城の護りに第二、第三騎士団をあたらせてください」

兄のその言葉に父は少し不満げに頷く。


「私が指示を出そうと思っていたというのに…」


「まぁまぁ、あなた。ダニエル、許可します、けれどけして無理してはいけませんよ?貴方は王位継承者なのだから。絶対にジェードの傍を離れないこと。ジェード、ダニエルを宜しくお願いしますね」


「はっ、畏まりました」

母が視線を向ければジェード様は深く頭を下げる。兄とジェード様が揃えばほぼ無敵だ。人質救出は成功したも同然だろう。


「アリス、貴女にも責務を与えます。今回、エリックを連れてくるという判断をしたのはアリスですから……いいわね?」

真剣な母の言葉に無意識に背筋が伸びる。


「はい、お母様。もとより覚悟の上です」


エリックを助けたいと願ったのは私だ、もちろん異論はない。

危険だから関与させるつもりはない、そう言われると思っていた私からすれば予想外だ。


「エリックに人質の場所を聞き出すこと。そして、特定の場所に盗賊が侵入するように誘導すること。出来ますね?」


そうか、特定の場所に盗賊が侵入するように情報を流せば盗賊を一網打尽にできる……さすがお母様。頭の回転が速い。


「はい、お任せください」


「では下がってよろしいです。早速、エリックに…そうね、まずは人質の場所を聞き出してくれる?もちろん此方の思惑を悟られないように」


「はいっ!」


与えられた責務を遂行すべく私はふんすと鼻息を少し荒くしながらエリックの待つ部屋へと向かった。


私にも、出来ることがある。

エリックに黙っていなきゃいけないのは…とても心苦しいけど…。



そんな事を思いながら。

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