夏秋冬春
夏
ささやかな雨の後
揺らぐ景色と木洩れ日
あふれるのは
光だけではなくて
静けさを破り
高らかにうたう
殴りつけた空
力強く儚い火花
胸の音
弾けた声
焦がれて
嗄れて
焼きついた熱のあと
残るは
ただ穏やかな
藍色の夜
雨の眠る海
秋
あやすような風
閑散としたベンチ
水飲み場の蛇口
乾いた銀色
為すがままに落ちた葉を
挟み綴じる思い出
子守唄は
薄雲から覗くように響き
繋ぎめのない歌詞
滑らかな夕暮れ
ひとりひとつ
影を並べれば
際立つことのない孤独
淡い瘡蓋
滲まぬように
吹きつける風
冬
冷えた指紋でなぞる輪郭
冴えた月のかたち
唸る波
佇む貝殻のような
ふとした静寂
絶やすことのない吐息
澄んだ夜空に掲げる
かすかな灯火
枯れ枝に宿る星
彼方より繰り返す
夜明け
満ちて
欠けて
消えて尚
いのち渦巻く
この指先
春
潤む声
気難しい風と
押し出されていく空
流れるようなさよなら
ささめくプリズム
遠浅の海と
信じるように
引いた水平線
解いた抱擁で
越えていく
言えなかった言葉は
誰も知らぬ種
この胸に埋めて
いつか芽吹く頃
みずみずしく立っていたい
泣き声とともに
生まれてきた私だから