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26/28

26:葉月梓乃が見た、ここまでの出来事~学校にて


 ーー少し、時間は遡る。


 相も変わらず、瑠璃は追い掛けられていた。

 さすがに見掛けたときは助けたわけだけど、


「っ、何だ、梓乃か」


 とっさに瑠璃の腕を掴んだために、どうやら驚かせたらしい。

 掴んできた相手が俺だと分かったときは安心したのか、瑠璃がそっと息を吐いていた。


「悪い。驚かせたか」

「いや……けど、ヤバかった。役員に捕まりそうになった」


 顔を顰めれば、「梓乃がそんな顔しないの」と言われてしまう。


「大丈夫だったのか?」

「大丈夫。こうして、この場に居るじゃん」


 瑠璃がその場で一回転する。


「ダンクロ、行けそうか?」

「行くよ。由依のレベル上げしないと」


 「約束したしねー」と言う瑠璃と話しつつ、そのままこそこそしながら教室まで戻り、帰り支度をするのだが。


「やっぱり、教室(ここ)に居たぁっ!」


 神原よ。何故分かった。


「犯人や逃亡犯は、現場に戻ってくるって言うし、やっぱり私って優秀!」


 いや、それ自分で言っちゃあ、駄目だろ。

 何で神原って、見た目は良い(方な)のに、時折残念な発言するんだろうな。


「さあっ、綾瀬さん。私の話を聞いてもらうわよ!」

「えー……」


 うわぁ、何かもの凄く面倒くさそうだな。瑠璃の奴。


「私には神原さんの話を聞くつもりも無いし、話すことなんて何も無いんだけど」

「嘘。私にあんなこと(・・・・・)言っておきながら、知らん振りなんて許さないんだから!」


 あ、やっぱり何か言ったのか。


「……そのことについて、確認するためだけに追いかけ続けるとか凄いね。神原さん」

「はぐらかさないで! 綾瀬さんも『転生者』なんでしょ!?」


 そう叫ぶようにして言う神原に、「転生者?」とも思ったが、「残念でした。こいつは『傍観者』であり『観測者』なんだよ」と突っ込んでやりたくなった。


「それ、梓乃も居る前で言って良かったの?」

「っ、問題ないよ。梓乃くんも転生者なら、私に靡かないことにも理由が付くし」


 瑠璃に目を向けられるが、首を横に振っておく。

 (あと)な、神原。お前今、遠回しだが、「前世の記憶さえ無ければ、自分に靡く」って言ったよな?

 瑠璃も同じことを思ったのか、遠い目をしている。


「梓乃は理解はしてくれてるけど、『転生者』じゃないんだけどね」


 『変革者(イレギュラー)』だもんな。瑠璃曰く、だけど。


「それと、私も『転生者』じゃないよ」

「じゃあ、何で……!」

「何で知ってたのか、でしょ? それはさ、(かなえ)……貴女が女神と思ってる彼女の知り合いだから」


 神原の目が見開かれる。


「じゃあ、綾瀬さんも……」

「勘違いしそうだから言っておくけど、私は神様じゃないよ?」


 にこにこと笑みを浮かべている瑠璃だけど、よく見ると顔が引きつっている。


「まあ、私にはそれぐらいしか言えないけどさ。梓乃は攻略対象に似ているだけで、そういうキャラじゃないし、ゲームエンドが迎えられる三月まで、ちゃんと正しい攻略対象者を見つけて頑張りなよ。主人公(ヒロイン)さん」


 そう言った後、荷物を持って、教室を出ていく瑠璃を追い掛ける形で、俺も教室を出て行ってみれば。


「あーもう、やっちゃった~」


 叶に怒られるー、と瑠璃が頭を抱えていた。

 頭を抱えるぐらいなら、言わなきゃ良かったのに。


「言ったことは取り消せないぞ」

「分かってるよ」


 何を当たり前のことを、と言いたそうな目を向けられる。


「ほら唸ってないで、さっさと帰るぞ」

「はーい」


 そのまま瑠璃を促した後、靴を履き替え、昇降口を出て、校門に向かおうとすれば、見覚えのある人影がこちらに向かってくる。


「あれ、もう帰るの?」

「……」

「……」


 昇降口を出た矢先に、これである。

 まさかというべきか、何と言うべきか。生徒会役員と遭遇するとは……


「私なら、もう捜さなくて良いと思うよ。神原さんからも、そう言われるだろうし」

「……へぇ、何を話したのかは知らないけど、ちゃんと話はしたんだ」

「クラスメイトですからね」


 淡々と、生徒会役員ーー書記の来栖輝(くるす あきら)と瑠璃がそう話す。


「それにしても……」


 こちらに来栖の目が向けられる。


「彼氏さん?」

「違う」

「違う!」


 来栖の問いに即答した形だが、思わず二人してほぼ同時に返してしまう。

 ちなみに、強く言い返したのは瑠璃である。俺としては、強く否定されたことよりも、後でこのことが牧瀬にバレたときの方が怖いんだが……まあ、それはともかく。


「あっはは。残念だったね、君」


 何で、俺が瑠璃に振られたみたいになってるんだ。


「そもそも俺は、瑠璃(こいつ)に恋愛感情など持ち合わせてはいない。何で彼氏持ちのこいつを好きにならなきゃなんない」

「おい」


 我ながら酷い言い草で、瑠璃に横から睨まれる。

 来栖に関しては、「ふぅん」と言いながら、興味ありげな雰囲気を匂わせながら、俺たちをじっと見ていた。


「恋人が居るのに、別の男と一緒に帰って大丈夫?」

「ご心配なく。互いに知り合いだし、他校生故に一緒にいられないから、梓乃(こいつ)を虫除けとして扱ってますし」


 来栖の言葉に、にんまり(・・・・)と笑みを浮かべて、そう言う瑠璃だが、今の言い方からして、さっきの仕返しなんだろうなぁ。

 それにしても、「あはは」「うふふ」と若干の黒さを帯びた笑みを浮かべて話す二人が怖い。


「ま、これ以上、特に話すこともないのなら、俺たちとしては帰らせてほしいんだが?」


 少し遅れるかもしれない、とメールしたとはいえ、夕食を食べるなどの時間配分を考えれば、そんなに時間は無い。


「ああ、引き止めて悪かった」


 来栖に見送られる形で、俺たちは校門に向かう。


「……はぁ」

「……何とか、逃げれたな」


 二人して、息を吐く。


「まあ、ちゃんと話はしたんだし、納得した・してないに関わらず、これから追い掛けられることは無くなると思いたいけど……」


 どうなることか、と瑠璃が頭を掻く。


「何、また追い掛けられたら、出来る範囲で匿ってやるよ」


 学校限定だがな。


「ん、ありがと。頼りにしてるよ、幼馴染み」

「ああ。でも、あんまり期待するなよ」


 瑠璃から差し出された拳に、拳をこつんと当て返す。

 これで壊れるような間柄なら、もうとっくの昔に壊れてる。


「さて、この件は……」

「うん。ちゃんと片付くまで」


 歩きながら、視線を交わす。


「……由依には」

「……牧瀬には」


 ーー内緒にしておこう。


 二人で、そう決めておく。

 それなのにーー





「何かあったのか?」


 それなのに、何故バレた。




前話の後書きで、梓乃視点で何話かに分ける的なことを書きましたが、結果一話に纏まったので、梓乃視点はこれにて終わり、時系列は戻します。


次は瑠璃さん視点の予定です。



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