表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

23/28

23:綾瀬瑠璃が逃亡途中に見たものは


 ーー根比べ。

 確かに、神原さんと生徒会と根比べをするとは言ったが、これはどうしたものか。


「あんたさ。ちょっと自分がちやほやされてるからって、役員の皆さんを(あご)で使ってるんじゃないわよ!」

「そうよ! 自分が頼めば、何でも聞いてもらえると思ったら、大間違いよ!?」

「私はそんな……」

「あんたにそのつもりが無くても、私たちにはそう見えてるのよ!」


 みんなが私を捜している間に、どさくさに紛れて、詰め寄る彼女たちは神原さんをこの場に連れてきたらしい。


 さて、こういう場合、どうすることが正解なのか。

 彼女たちの言い分は間違ってはないが、人があまり来ないようなこの場所に連れてきたのはマズい。

 下手したら、彼女たちが隠れて神原さんを(いじ)めているようにも見えるし、もしこの場に役員たちが来れば、いじめの主犯にもされかねない。

 けれど、下手に助けに行って、神原さんに捕まりたくもない。


「ありゃ、完全に捕まっちゃってるねぇ」


 隣から声がしてそちらを見れば、にっこりと笑顔を向けられた。

 な ん で 居 る ?


「……助けないの?」

「そっちこそ。(むし)ろ、ずっと見ていた君が助けるべきなんじゃないの?」


 どうやら、ヤバいと思える状況になるまでは、見守るつもりらしい。

 つか、私がずっと見ていたことを知っているってことは、こいつもずっと見ていたってことだよな?


「見ていたのなら、そっちも一緒でしょ」

「まあね」


 否定しないのか。


「それに、私が助けるよりも、君が助けた方が彼女の好感度も上がると思うけど?」


 神原さんを振り向かせたいのなら、私よりも隣にいる奴が行くべきである。


「そりゃあ、会長や副会長たちには負けたくないけどさ」


 そこで一度、言葉は切られる。


「ようやく見つけたのに、捜し人である君に逃げられても困るんだよねぇ。綾瀬瑠璃さん」


 やっぱ、そっちが目的か。


「生徒会書記の君に知ってもらえているとは意外だね。来栖輝(くるす あきら)君」

「へぇ、明らかに興味なさそうな雰囲気を出していながら、こっちのこと知ってるんだ」


 意外そうな顔をしているところ悪いが、お前の校内に於ける知名度を()めるなよ?


「完全にではないけど、興味ないのは事実だよ。でも、(いや)でも情報は入ってくるし、神原さんが君たち役員の誰とくっつこうが構わないけどーー」


 奴に目を向ける。


「私の友人を、君たちの騒動に巻き込ませるな。誰でも良いから、あの子の手綱を握っておけ」


 『友人』というのは梓乃の事だ。

 鬼ごっこが終わった後に、また梓乃の元に突っ込まれても困る。

 目を見開いて、驚きを露わにする来栖書記は放っておいて、その場から去った彼女たちを見届ければ、もうこの場所に用は無い。

 呆然状態の神原さんは、こいつがどうにかしてくれるだろうし。


 ある程度、奴らから離れれば、いつものメンバーに『少し遅れる』と連絡(メール)しておく。

 ファンタジーVRMMORPG『名も無きダンジョンと空白のクロニクル』ーーダンクロで会おうって、待ち合わせしてるからね。


「さて、と」


 何を思ったにせよ、彼ら(というか、主に来栖書記(さっきの))が教室に来られても困るので、手を考えなければならない。


「ゲームみたいにセーブもリセットも出来ない以上、覚悟するか」


 牧瀬たちの顔を思い浮かべれば、どんなことでもどうにか出来そうだ。


「前門の虎、後門の狼なんて上等。私は『綾瀬瑠璃』なんだから、何があっても大丈夫。何とかなる」


 だからーー


「何か用?」


 まずは、こそこそと隠れている人たちの相手をしなくては。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ