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13/28

13:如月由依の気付かない程度に動き出した日常


「ふぁあ……」

「おはよう。眠そうだね」


 牧瀬君が欠伸をしながら歩いているのを見掛けたから、声を掛ける。


「ああ、もう少ししたら寝よう寝ようとしながら、宿題やってたからなぁ」

「はは……」


 私が教えろって言ったせいかなぁ。


「由依だけのせいじゃない。梓乃たちにも化学教えていたからな」

「二人は出来たのかな?」

「こっちよりは少ないから、何とか終わらせられたんじゃね?」


 それより、とこっちに目を向けられる。


「数学、どうした?」

「あ、えっと……」

「由依?」


 何とか誤魔化そうとしても、許して貰えそうにない。


「……教室で答え合わせしませんか? そして、諦めた私を罵倒しろぉっ!」

「やっぱり、諦めたのか! そして、罵倒はしねぇよ。いつものことだからなぁっ!」


 そう言い合って、肩を落とす。


「朝から疲れるから、止めよう」

「そうだね……」


 そのまま昇降口を通って、教室に向かう。


「おっはよー。相変わらず仲良しだねー」


 教室に入れば、紅林さんが寄ってくる。


「おはよう」

「数学、見せる?」

「あはは、大丈夫」


 紅林さんにもバレてるとは。


「ほら、由依」

「あ、うん」


 牧瀬君が渡してきたので、それを受け取って、自分の方と確認する。


「由依、ここから解答ずれてる」

「あ」


 とりあえず、牧瀬君の分は本人に返して、ずれていたのを修正していく。


「こことここ、計算違うよ。こっちから持ってきて……」


 紅林さんにも教えてもらいながら、進めていく。


「これで終わりだな」

「二人ともありがとう」


 まさか、解答欄がずれるとかいうミスを、宿題でするとは思わなかった。


「そういえばさ。中間試験終われば、夏休みに近付くわけだけど、二人はもう何か予定は決めたの?」

「まだだけど……そっか、そろそろ夏休みなんだ」


 教室に貼ってあるカレンダーが、少し早いけど六月になっている。


「羨ましいわよねぇ。リア充は」

「俺はまだ、瑠璃から何の連絡も受けてねぇぞ」

「へぇ、自分から誘うってことはしないんだ」


 紅林さんは……うん。付き合ってる人が居ないから、牧瀬君に八つ当たりしてるんだね。


「夏休みに近付くに連れて、非リア充たちから妬まれるが良いさ。結月」

「恋人持ちが誰でもリア充だったり、楽しんでると思うなよ。紅林」


 うん。とりあえず、こんな所で火花を散らさないでほしい。


「二人とも。こんな所で喧嘩しない。喧嘩するなら、自分の席に行ってからやって」

「……う」

「……悪い」


 ばつが悪そうな二人に、全く、と思う。

 そう話してる間にもチャイムが鳴り、担任の先生が来たことで、SHR(ショートホームルーム)の時間になった。


   ☆★☆   


 ーー時は過ぎて放課後。


「上郷君?」

「……あ、如月さん」


 先生からの頼まれ事を終えて、教室に戻ってきてみれば、珍しく一人で上郷君が居た。


「誰か待ってるの?」

「いや、ただぼんやりとしていただけだよ」

「そっか」


 上郷君って、女性陣の誰かと一緒に居るイメージだからなぁ。


「……」

「如月さん?」


 少し彼をじっと見ていたからか、首を傾げられる。


「……あの、さ。前に告白してくれたの、まだ覚えてる?」

「自分から言ったから覚えてるよ。振られちゃったけど」


 苦笑いして返される。


「うん、私も覚えてるよ。けど、あれから少し考えたことがあってね」

「考えたこと?」

「何で、私だったのかな、って。私のどこが好きになってくれたのかな、って」


 今、瑠璃や牧瀬君に聞くと、惚気(のろけ)として返ってくるから、下手に聞けないし、聞きにくい。


「好きになった、理由?」

「特に無いのなら、別に良いんだけど……」


 少し考えるような素振りをした後、上郷君が口を開く。


「無くは……ない、かな」


 上郷君がこっちを見つめ返す。


「如月さんは覚えていないかもしれないけど、僕たちは前に一度会ってるんだよ」


 彼は、そう告げた。



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