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第4話 中の人と話してみた

 その日は現代文と日本史のテストだった。テスト用紙が配られるまでドキドキしていた。ぼくはこのテストをすでに一度受けている。はたして同じ問題が配られるのか。それともやはりそんなにうまい話はないのか。


 結果からいうと答案用紙は、まさに見覚えのあるそれだった。正確に言うと、実は細かい点で少し違っていた。漢字書き取り問題が省略されていたり、歴史の年号問題は別の事件のところに下線が引かれていたりした。でもそんなのはどうでもよかった。問題の大意がそのままだったということが、ぼくを興奮させた。


 ただし、一度見た試験問題とはいえ、楽勝というわけにはいかない。というよりはむしろ、手応えとしてはほとんど大差なかったくらいかもしれない。前回の轍を踏まえた対策などまったくしてないのだから当たり前である。けれども最大の違いは、今回はテストが終わっても、ぼく自身がまったく落ち込まなかったことだ。落ち込むどころか興奮はどんどん昂っていった。

 

 これはひょっとしたら、ひょっとするんじゃないのか。


 下校時間になるなり、猛ダッシュでバスに飛び乗り、自宅に戻った。登校時と同じくこの間の記憶もほとんどなかったが、それは呆然としていたからではなく、興奮が最高潮に達していたからだった。



 

 パソコンをスリープから復帰させると、ブラウザにはまだ例のサイトが残っていた。念のためスクリーンショットを撮っておいたり、URLをメモ書きしたり、何重にも保険をかけておいて、おそるおそるリロードしてみる。


 F5ボタンを押した後も、サイトはまだそこにあった。サーバーがどこにあるか知らないが、とにかく落ちてしまっていたり、突然の閉鎖などはしていない。どうやら一回限りの魔法というわけではないようだった。おそれていた事態をひとまず回避できて、安堵のため息が自然ともれた。


 ぼくはサイトを隅から隅まで色々探索してみることにした。サイトマップは存在しなかったが、そんなものを必要としないくらい構成はシンプルな作りだった。運営者情報も各種ポリシーもなし。よく見ると唯一、トップページの右上あたり、アカウント画面に移動できる小さなログインリンクがある。移動できるのはほとんどその2ページ間だけのようだった。


 だけどぼくは確信していた。なにせ一度、登録用に承認メールを送り送られしているのだ。運営者と連絡を取る手段は、必ずどこかにあるはずだった。


 試しにアカウント画面を一番下までスクロールさせてみる。あっさりとそれはみつかった。意外にも堂々と、「ご不明点・ご質問などはこちら」と表記してあるハイパーリンクがフッター部分にちょこんと載せてある。だけどもっと意外だったのは、そのリンクをクリックした瞬間、いきなりチャットウインドウが立ち上がったことだ。


 現在でこそAmazonなどで、カスタマーサポート用にチャットサービスが使えるのはそう珍しくはないが、この当時はまだまだ画期的といってよかった。でも驚いた理由はそんなことよりもむしろ、この仕掛けの当事者がどうやらリアルタイムで画面の向こう側にいるらしいと認識してしまったことだった。それはある種の怖れに近い感情ともいえた。


 しばらく空白のままの画面を見つめていたが、やがて思い切ってメッセージを打ち込んだ。


<こんにちは。どなたかいますか?>


 なんとすぐに反応があった。入力中…の画面が一瞬表示され、直後、しっかりした日本語でレスポンスが返ってくる。僕は息を呑んでそのメッセージを見つめた。


<お問い合わせありがとうございます。どのようなご用件でしょうか?>

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