蛇足
主をすっぽりとその腕に囲ってふてくされている年若い悪魔をみやり、魔女は密かに笑った。
同じリトグラフに住み着いているとはいえ、一番年下の弟分の悪魔はまだまだ甘い。見せ付けるように主の作ったカボチャのケーキをほおばる。
同胞達もそれぞれ菓子を食べるさまはどう好意的に見たってお預けを食らっている悪魔に見せ付けてからかっているとしか思えない。
「お菓子か私か?」
奴にとって究極の選択を突きつけられた悪魔はずいぶんと長い逡巡の末、主を選んだ。
その選択に非常に満足そうに頷いた主は暗黙の了解であった約束を果たすと、我々に菓子を配り始めた。もちろん、悪魔には渡したりはしない。目の前で上手そうに菓子を貪る我々を悪魔は恨めしそうな顔で睨みつけていたが、それを意に介する輩はいない。
しばらく未練たらしく菓子を眺めていた悪魔だったが、物悲しい溜息を一つつくと側にいた主をまるで所有権を示すかのように腕に抱え込んで今に至る。
主はニコニコと悪魔の腕の中で菓子を食べているが決して悪魔に渡そうとはしない。
主を選んだからこその結末だが、もし菓子を選んでいたら、奴はきっと今頃、ケーキを前に一人、途方にくれていたのだろうと想像するとそれはそれで面白かったかもしれないと嬉しくなってしまう。私は所詮、ハロウィンの夜に住まう魔女。けして善良な性質ではないのだと今更に自覚を新たにする。
けれど、にまにまと悪魔に見せ付けるようにケーキを食べながらも、こっそりと一切れ、後で渡してやろうと取り置いてしまう私はこの可愛い弟分に甘いのだ。




