表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
元勇者のご主人様  作者: 山科碧葵
第二章
23/45

第五話 はいてないとうぞく

 一閃。鋭利なダガーナイフが投げられ、虚空を切り裂く。

 空を舞うナイフは前方に置かれた布袋を断裁し、糸を引き抜いたかのように袋が弾け飛ぶ。

 中身が零れ、金貨や宝石、食物などが無残にも地上へとぶちまけられる。

 袋の脇には豪奢な衣装に身を包んだ女性が倒れており、脇腹から葡萄酒のようなドロリとした血液が湧き出ている。

 既に数本のナイフが地面に突き刺さっており、その内の数本に赤黒い血糊が付着していた。

 大方、投げられたナイフが脇腹を捉えたのだろう。



 俺の視界に広がっている情景とは、このようなものだ。

 日焼け跡が眩しい女性と、筋骨隆々な男性。

 男女数人全てがダガーナイフやククリナイフ、そして金槌やレイピアを持っている。


 そして彼らの前方では、一人の女性が血を流しながら倒れている。

 おおよそ察するに、こいつらは盗賊だろう。

 毛皮の袖無しコートを羽織り、男性は上半身裸、女性はヒョウ柄のチューブトップを身に着けている。

 健康的なへそが惜しげも無く晒されているが、あまり扇情的な風味を漂わせない。

 先ほど官能的なロリっ娘を堪能したからだろうか。

 身体はまだ元気よく疼いているのだが。


 豪奢な服飾で身を飾った女性は、口端にも血を滲ませ、恐怖に怯えた双眸をじっと見開く。

 ここからだと盗賊たちの表情を見ることは出来ないが、きっと汚らしく口元を歪めているのだろう。


 背中を数えたところ、盗賊は五人いるようだ。

 男性が三人に女性が二人。

 夜中にでも求め合ったら、一人余ってしまうな。可哀想に。


 俺は背後へと身を隠し、茂みから顔を出して辺りを伺う。

 盗賊たちは全員裸足だ。

 鍛えられた脚が伸びて、深紅のスカートやあずき色をした七分丈のズボンに飲み込まれる。

 腕も太く、実戦経験は豊富そうだ。


 さて、どうしようか。

 ここで格好よく飛び出し、愛剣を振り抜いて魔術で応戦すれば、生命だけは助けることができるかもしれない。

 だが、かもしれない、の域を出ることは無い。

 二手に別れられたり、あの女性が逃げるだけの体力を残していなければ、無駄な行為となってしまう。


 しかも、実戦経験の高い五人を相手に、俺一人で時間稼ぎをできるとも思えない。

 く、フェリアかザフィラスさんでもいれば、何とかなったかもしれないのに。


 見捨てるか。否。

 ここまで来てしまったのだ。一人のか弱きものが数人に襲われている、という状況に対面し、見なかった振りをして逃げるような腰抜けでは無い。

 背後から五発、雷撃弾を撃ち込めば気絶させられるだろうか。

 だがもし、失敗すれば。

 逆上した盗賊たちは、俺と彼女を襲うだろう。

 俺も今大金を背負っているからな。


 俺は木の陰に身体を隠し、水魔術で作った鏡を斜め前に設置する。

 精製した即席の鏡を樹木に溶け込ませ、反対側からは見えないように細工する。

 稽古中にザフィラスさんから教わった、水魔術と土魔術の応用混合だ。


 決して覗きなどに使用はするな、と言われた。

 当時は、もちろんそんなことしませんよ、などと言いながらも、フェリアの幼気な仕草を思い描いていたが。

 この魔術はこういうときに使用するべきものなのか、と身に染みて実感する。

 実を言うと今日この日まで、この魔術は覗き用なのだと信じて疑わなかったのだ。



 即席の鏡に映る光景は、さほど変わっていない。

 強いて言えば、女性が流す血液量が増加している程度か。

 盗賊たちがナイフを投げる様子も無く、手出しはしていないようだ。

 五人一斉に油断するような事象でも起こってくれれば、俺は颯爽と飛び出して彼女を救ってみせるんだが――。


「――おい」


 口から心臓が飛び出しそうな衝撃。

 その言葉ははっきりと俺の耳朶を打った。

 男性らしい低い声音に次いで、鏡に映った盗賊の男性が一人、ゆっくりと身体ごと振り返る。

 視線は定まっていないが、誰かがここにいることはバレているのだろうか。


「尾行するなら気配を消さねえと、はっきりと分かるぞ。何覗いてるんだよ」


 思わず飛び出そうとしたが、竦む足を押さえて必死に堪える。

 これは罠だ。

 盗賊の視線はチラチラと虚空をさまよっている。

 大方もし本当に誰かがいたことを警戒し、時折そうやって脅しをかけているのだろう。

 俺は惑わされないぞ。

 その言葉に怯えて飛び出せば、身を滅ぼす結果になってしまう。

 視線が俺を捉えるまで慎重に、慎重に気配を消さなければ。


 盗賊は暫しの間キョロキョロとしていたが、不意に振り向くと、元の体勢へと戻った。

 やはりハッタリだったようだ。


 俺は右腕に魔力を溜め、鏡を見る。

 盗賊たちは何やらブツブツと呟き、血を流している女性を静かに見守っている。

 何をしているのだろうか。

 傍には持ち金や私物が転がっているし、盗賊は五人で相手は一人だ。

 生かすも殺すも自由であり、むしろ生かしておくことにメリットは無さそうに見えるのだが、何かあるのだろうか。

 もしや、彼女は何かしらの情報を知っていて、それを吐けとでも脅されているのか。

 まさかそんな、ドラマとかじゃあるまいし。


 しかし、このまま膠着状態が続いていても、メリットは何も無い。

 せっかくの興奮も冷めてしまい、褐色ロリの繊細な触り心地は、張り詰めた空気にかき消されてもう残っていない。

 下腹部がもっていた熱も薄まり、高ぶっていた感情も沈静化されている。

 実にもったいない。

 あのままの状態でフェリアを抱きしめて、そのまま寝室にて甘い時間を過ごそうかと思っていたのに。

 予定が崩れた。


 とにかく、

 このままでは埒があかない。

 むしろ、出血のため、この状況が長引けば長引くほど彼女の方が不利だろう。

 どうにかしてこの状態を打開したのだが、どうしたらいいか……。


 そんなこんな考えている内に、ふと頭にフェリアの愛らしい笑顔が浮かんだ。

 早く帰ってあの闇色の天使に癒されたい。

 迷ってても始まらない、とか言って飛び込むか。

 などと若干自棄的な考えが浮かぶようになり、俺は一歩足を踏み出し、臨戦体勢を調えた刹那。


「――誰だ!」


 怒号のような声音が空間を揺動させ、筋骨隆々な男性盗賊が三人一斉に振り向いた。

 一瞬足が竦んだが、その視線が俺の方を向いていないことに気がつき、喉から出かけた挑発的な言葉を飲み込んだ。


 女性盗賊も身を飜えし、手に持った武器を構えて臨戦体勢をとる。

 ここからは見えないが、何者かが現れたのだろうか。

 もしかすると、ギルドナイトか何かが通りかかった――。


「邪魔するってんなら、容赦せん!」


 そう言って男性盗賊が飛び出した刹那、鏡に映った三人は、あっけなく地面に倒れこみ、冷たい大地に顔面を打ち付けた。

 何が起こったんだ。

 俺は思わず飛び出し、眼前で起こっている事実を肉眼で捉えた。


「――あぐぅ」


 凛然とした鋭利な剣先が虚空を閃き、三発放たれた斬撃が迷いなく盗賊たちの腹部に襲いかかる。

 糸を引き抜いたかのように腹部がパックリと裂け、空を汚すような鮮血が噴出する――かと思ったのだが、血は出ていない。

 目を凝らして傷跡を見ると、鍛え上げられた盗賊の腹部には、薄く裂け目のような傷が入っている。

 その痛々しい裂傷からは、薄桃色に滲む薄皮が顔を覗かせていた。

 少しでも動けば身体は真っ二つであろう。


「――はっ!」


 聞き覚えのある声音が奏でられ、俺の眼前には二人の女性盗賊が姿を現した。

 同じように腹部には裂傷が刻み込まれ、大股を開いて気を失っている。

 股座からちょろちょろと湯気が立つ聖水が溢れ出ており、乾いた大地へと染み込んでいく。


 その様子を見て思わずギョッとする。

 捲れ上がった深紅のスカートからは、色彩鮮やかな布切れは顔を覗かせていない。

 気を失っているため動けない盗賊は、下腹部を小刻みに痙攣させながら地面を湿らせているのだが。

 その発出地点を覆うものは存在しない。


 健康的に日焼けした女の子の部分。

 それが惜しげも無く外気に晒されているのだ。

 健全な男の子からすれば、大問題である。


「え、な、何、何で?」

「おや、誰かと思えば、フェリアの主人ではないか」


 背後から奏でられた声音に、飛びかけていた俺の理性が引き戻される。

 振り返ると、剣を鞘に差し込む音とともに、穏やかに微笑む褐色獣人の姿があった。


「リリウス、さん」

「リリウスで結構だ。それよりも、こんなところで何をしているんだ?」


 リリウスは流し目で、豪奢な衣装に身を包んだ女性を見やる。

 そして、腹部に裂傷を刻み込みながら気を失う盗賊たちへと視線を送り、小さく吐息をこぼした。


「見たところ、どちらかの知り合い、というわけでも無さそうだな。それと、すまないが、あの女性に治癒魔法をかけてくれないか? 私は魔法を使用できないのだ」


 リリウスはそう言うと、散らばった金貨や食物を丁寧に擦り、布袋に詰め直し始めた。

 その脇で怪我をした女性が「うぅ」などと呻いている。


 だが、如何せん俺は治癒系統の魔術を使用できない。

 魔法剣士などと大層な職業名だが、俺が使用できるのは炎、水、土、雷系統の魔術だけだ。

 攻撃手段を伴う属性魔法には、他に“風”などがあるようだが、俺はそれさえも使えない。

 だがこのまま放置しておくのも気が引ける。


「リリウスさ――えっと、俺も治癒魔術は使えないんだけど」

「――何だと」


 冷たい声音だったが、発したリリウスの面持ちは怒りや驚きを見せぬ正常運転だった。

 切れ長な双眸を流し、俺の身体を上から下までねっとりと見据える。

 褐色肌が汗を弾き、若干扇情的な気分に陥る。

 ヤバい、これは良くないぞ。


 リリウスはその妖艶な瞳をうっとりと細め、口元に指を当てて困ったようにコテンと首を傾げる。

 凛とした表情を見せる堅苦しい剣士かと思っていたが、いちいちの動作が妙に可愛らしい。

 ただ今日も、露出過度とも言えるレザー系の衣装に身を包んでいるため、肉感的な魅力はたっぷりだ。


「仕方ないな。それでは傍のギルドにでも運ぼう。確か受付嬢やギルドナイトは、大抵治癒魔法とか解毒魔法を使用することができるはずだ」


 そう言って怪我をした女性を背負うと、傍に置いてある布袋までも抱えて俺が来た道を戻っていく。


「俺も付いていきます」


 何となくそうした方が良いような気がしたため、俺はリリウスの横に並んで、先ほど退出したばかりのギルドへと戻ることにした。



 ---



 ギルドに戻ると、先ほどと変わらず閑散としていた。

 俺とリリウスは怪我をした女性と荷物をギルドナイトに預けると、踵を返して屋内から退出する。


 リリウスは暫しの間黙っていたが、不意に俺の肩に手を乗せると、微笑ましげな視線を向けて喉を鳴らした。


「確か、キンジと言ったか。ところで君は、どこへ向かっているんだ?」


 言葉遣いは多少素っ気ないが、中耳腔を震わせるその声音は、何とも言えぬ心地よさを覚えさせる。

 艶めかしい褐色肌が視界にチラつき、何とも扇情的な気分を掻き立てられる。


 俺はリリウスの顔を見る振りをして、外気と接している肉感的な肩を見やった。

 汗が水滴のように弾かれており、引き締まった筋肉が魅力的だ。

 劣情とかそういう感情を除いても、少し触ってみたい。


「俺は自宅に帰宅するだけです。可愛らしいメイドさんが、俺の帰りを待っていてくれてるので」

「……そうか、フェリアか」


 肩越しに映るリリウスの表情は、若干感慨深い感情の色で染められていた。

 切れ長な双眸を妖艶に流すと、情欲の篭った誘うような目線を向け、俺の瞳をしっかりと捉えて口元を緩める。

 一つ一つの行動がいちいちエロい。


 しかも格好は、この間と同じくジーンズ系袖無しコートとレザー系の衣服だ。

 汗の混じった香りがムンムンと漂い、嗅覚的に興奮してしまう。


「実を言うとな、私はあなたと肩を並べて話したかったのだ」


 そう言うと、俺の肩を撫でる手つきがさらにエロくなった。

 くすぐられているような感覚に、思わず口元が緩む。


「俺に、ですか?」

「ああ、あのフェリアを骨抜きにした殿方とは、いったいどのようなお方なのだろう、と思ってな」


 リリウスは長く堅い指先で俺の首筋をなぞりながら、愛らしく唇を舐めとる。

 誘惑行動だろうか。

 とくに意味も無いのに、妙にドキドキしてくる。

 もしかして、これがいわゆる小悪魔系女子、というやつか?

 こうやって、男性から見て魅力的な肢体を利用して性的に刺激させてくるのだろうか。


 一瞬だけ警戒したが、俺は不意にあることに気がついた。

 いや、この方はフェリアの友人だ。

 しかも彼女の言葉を聞いたところ、俺とフェリアが相思相愛であることには気がついているようである。

 多分、さっきから褐色肌と接することが多かったために、俺が敏感になっているのだろう。

 ただの勘違いだな。


「よい。キンジ殿、酒は飲めるか? せっかく肩を並べて話すのであれば、そこに酒が無ければ始まらない」

「すみません、未成年なもので」


 この世界ではどうだか知らないが、日本での俺は年齢上まだ酒は飲めなかったはずだ。

 元の世界でもドワーフが浴びるほどに飲んでいたが、俺は匂いを嗅いだだけで目眩を起こしてしまった。

 多分、体質的にもあまり合わないのだろう。


 リリウスは若干拗ねたようにジト目を作ると、いたずらっぽく頬を染め、吐息のように甘く呟いた。


「……そうか、それは残念だ。気持ちよく酔態させて、食べてあげようかと思ったのに」

「ははは、そんなことをしたら、俺はフェリアに殺されてしまいますよ」


 何の気無しに冗談で言ったのだが、リリウスはキョトンとした表情で俺の瞳を凝視した。

 あれ、冗談になってなかったのかな。

 だったら訂正したいんだが。


 リリウスはいやに真剣な双眸で俺を見やり、喉から絞り出すように弱々しい声音で呟く。


「あの……。もしかして、フェリアはもう初めての身体では無いのですか?」


 敬語である。

 先程まで、年上のお姉さん的な言葉遣いだったのに、弱々しく丁寧な口調だ。


 しかし、初めての身体、ねえ。

 プライベートな内容だから、あまり俺の口から他言するのは憚られるのだが。


「答えにくいか。では逆に訊こう、キンジの初めての相手は誰だ」


 全然変わってない。

 むしろ答えにくいだろ。何でそんなほぼ初めて話すような相手に、俺自身の初体験の話をしなくてはならないのだ。


「嫌ですよ、そんな恥ずかしいこと言うの。リリウスだって、そんな初めての相手の名前など、他者に言えますか?」

「私は……まだ、初めての身体だ」


 全身が凍りついたような感覚。

 地雷を踏みかけたかのように、全神経を一点に奪われ、肉体が動かなくなる。

 実際に言葉の地雷は踏んだ。


 剣士リリウス。

 褐色肌の犬耳獣人であり、鍛え上げられた筋肉と女性的な美貌を兼ね備えており、はっきり言って魅力的な身体つきをしている。

 服装も露出が高めで扇情的。

 男性的本能を刺激する、妙に色っぽい格好だ。

 顔立ちも端整である。

 フェリアほどはいかないが、凛々しい切れ長の双眸に、キュッと締まった唇。

 ブロンドの混じった銀髪が背中に流れ、同色のイヌミミと合っている。


 俺が少年だからかもしれないが、大人の色気はかなり漂っているように感じる。

 先程の会話から察するに、純粋純情な生娘と言うわけでは無さそうだが――。


「えっと、何で」


 言ってから思わず口を押さえた。

 何でとか、理由なんて無いだろ。

 ヤバい、驚愕のあまり酷く失礼なことを言ってしまった。


「可愛くて格好いいし、色気はたっぷりあるが。……抱くと、筋肉のせいで男性と抱き合っているみたいで気持ちよくない、と言われた」


 リリウスは酷く寂しそうな表情で、水滴が垂れるかのようにポツリポツリと呟いた。


 嫌な静寂。

 ちょっと失礼を言ってしまった、程度に考えていたが、かなり深く心を傷つけてしまったかもしれない。

 だって、凄くエロくて経験豊富そうな匂いがムンムンしてたんだもん!

 初めてだとは思わなかったんだ。


「すみません、余計なことを」

「別に、構わない。……しかし、そうか、そう聞くということは、キンジはフェリアと初めてを捧げあったのだな」


 間違ってはいないのだが、こうして改まって言われると、どうにも身体がくすぐったい。


 確かに、な。

 捧げ合った。その言葉に間違いは無い。

 ご奉仕の一環として仕方なくしたわけでも無く、どちらかが発情して襲いかかったわけでも無い。

 お互いの気持ちが通じ合い、心と体を許したのだ。



 見慣れた景色が視界を彩り始めた。

 話しながら歩いている内に、いつの間にか家の近くまでたどり着いていたらしい。


「えっと、このままだと家に着いてしまいますけど」

「フェリアと久しぶりに、昔のことを語り合いたい。キンジ殿も一緒に聞くと良い。今よりも幼いフェリアの可愛らしい言動とか、女子ばかりの冒険譚を包み隠さず聞くことができるぞ」


 リリウスは口元をペロリと舐め、俺に向かって流し目を向けたが。

 俺はその提案をやんわりと断っておく。


 ただでさえ今日は、身体が元気で嗅覚的にも視覚的にも官能的なものを感じてきたのだ。

 もう欲求の臨界地点はとうに超えている。

 風でも吹けば、それだけで爆発しそうである。

 帰ったら即座にフェリアを抱こうと思ってたのに、来客では仕方ない。

 部屋に一人で篭って悶々とした時間を楽しんでいるさ。

 リリウスとフェリアに挟まれてながら黙って話を聞いてろなんて、今の俺にはできない。

 夜まで我慢してやるぜ、発射ボタンはゲージ全開で押しっぱなしだ。



 ---



「お帰りなさいませ、ごっ主人様ぁ!」


 リリウスを連れて玄関の扉を開けると、普段着用のエプロンドレスに身を包んだフェリアが、真夏の炎天下に咲く花のような笑みを見せて飛びついてきた。

 闇色に煙る髪を純白のホワイトブリムで飾り、半袖なメイド服から顔を覗かせた、繊細かつ肉付きの良い腕を俺の背中へと艶かしく絡める。

 太ももまでをタコのように巻きつけられ、体躯の前面に、精一杯の愛念を感じる。


 艶かしく擦りつけられるフェリアの体躯。

 予想だにしない温もりと刺激によって、臨界地点を遥かに越していた発射ボタンは、俺の意思とは裏腹に完全に解き放たれた。



 刹那、粘っこいようなツンとする匂いが、玄関に漂った。

 仕方ない、不可抗力だったんだよ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ