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境界のすず  作者: 夕菜
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第2話(3)

「早く受け取って。柚季」

「!・・」

 柚季はソプラノに言われるがまま、それを受け取る。

「これは、すず様があなたたちに出したヒントそのもの」

「?これがヒント・・!?」

 柚季は思わず眉を寄せた。

 本を開いてパラパラとページを捲ってみたが、中身も全部真っ白で・・・。

 このような本に、一体なんの役目があるというのだろうか。

「柚季さん、本当に受け取ってしまってもいいんですか?もしかしたら、何かの罠かもしれませんしっ・・」

 アルトが不安げな声でそう言った。

「でも、分からないじゃん。もしかしたら、大切なアイテムかもしれないし」

 ・・・仮に何か罠だったとしても、柚季はこれを捨てることはできないだろう。

 だってそんなことしたら、可能性も一緒に捨てることになってしまう。

「・・・これから起きること全てが、一つのヒントに繋がっていく。もし、ヒントを得たいならその白い本は肌身離さず持ち歩いていた方がいい。けれど、信じなければ、今すぐその本は破り捨てて構わない・・・とすず様は言っていたから」

 ソプラノはその言葉を並べると、柚季とアルトに背を向けた。そして、家の扉を開けると彼女の姿はその中へ消えてしまった。

「・・・」

(全てが一つのヒントに・・・)

 ソプラノの言葉は、嘘ではない、柚季は何となくそう思った。

 ちゃんとした意味は分からないが、この白い本はすずがくれた、唯一のヒント、だからだ。

「って言うか・・ヒントくれるぐらいだったら、私の体も諦めてくれればいいのに」

 柚季がその言葉をこぼすと、アルトは

「ということは・・魔女さんのことを信じるんですね?」

「・・うん、取りあえずは」

「そうですか・・それでは、少し様子をみましょう」

 アルトはそう言ってくれたが、その顏は少し不服そうだ。

「うん」

 柚季はそのことは気にしないようにして頷く。

「・・・では、僕は今回のこともありますし、一度天界に戻ります。柚季さんは・・地上ですよね・・あっ、その白い本無くさないで下さいね?」

「大丈夫だって!」

「またすぐに柚季さんのところに伺うと思いますから、なるべく安静にしててください・・一応、魔女の呪い、にかかっているわけですし・・ね?」

 不安げな声でそう言うアルトの視線は柚季の、いつもは眼帯で隠してある左目、へ注がれている。

「うん、分かった」

 その視線が嫌で、柚季は思わず目を伏せた。

「ではっ僕はこれでっ」

 アルトはにっこりと笑い、柚季に背を向けるが・・

「ちょっと!わたし・・地上への帰り方、分からないんだけど」

「あっ!でしたよねっ・・」

 アルトはまた柚季の方へ向き直ると、苦笑いを浮かべ指をパチンと鳴らす。

 と同時に、目の前にトビラが現れた。

 ・・・境界へ行くときに通ったあの半透明のトビラと同じものらしい。

「ここから帰れますから・・」

「分かった。ありがと」

 柚季がほっとしてそう言うと、アルトは少し微笑んでこの場から立ち去ってしまった。

 柚季はさっそくトビラの取っ手に手をかける。

(あ、ちゃんと触れた)

 半透明で、頼りないトビラなのに、この手でしっかり触れることが、とても不思議な感じだった。そして柚季は、取っ手をひねりトビラを開け放つ。

「!・・」

 そこにあったのは、柔らかな白の光で満ちている空間だった。

(ここに・・入るの?)

 トビラの先に広がっているのは、ただの白い空間で他のものは何もないように思える。

(って言うか・・怖いんだけど)

 柚季はそう思ったが、いつまでもここにいるわけにはいかないので、そっと足を踏み入れた。

 少しずつ中へ入っていく。

「!!」

 柚季の目の前が、白く包まれると同時に、足元の感覚がなくなり、落下した。・・が、その感覚はすぐにおさまり、柚季の目の前にはまたトビラがあった。

 いや・・正確にいうと、柚季の足元の近くに、人が入れるか入れないかぐらいの小さいトビラがあった。

 そのトビラは下の空間に張り付くようについていて、イメージ的にはマンホールに近い。

「・・ここに入ればいいのかなー?」

 周りを見渡してみるが、このトビラ以外はただ真っ白の空間があるだけで、他には何もなかった。

「よし、入るか」

 柚季は白い本をしっかりと胸にかかえたまま、そのトビラをそっと開く。

「?・・」

 その中はまるで、ピントがあっていない写真のような、何かはあるが何があるかよく分からない景色が広がっていた。

(でも、何か帰れそうかも)

 柚季はその場に座り込むと、片足ずつ慎重にその中へ入れていく。

「・・・よしっ」

 そして、飛び込んだ。

 真っ白の空間が、目の前から消えたと思った瞬間、何かが倒れるような大きな音が耳に入った。

「!!」

 とほぼ同時に、足元が無事どこかへ着く感覚が足の裏に広がる。

「よかった、帰ってこれた・・」

 柚季が今いる場所は、自分の教室だった。そして、足元にある、開かれたままのスケッチブックと、倒された机に・・床に落ちている中身が散乱してしまっている自分のカバン。

「──・・・」

(もしかして・・わたし、スケッチブックからでてきた?)

 今の状況からそう判断した柚季は、辺りをぐるりと見渡した。

(・・誰にも見られてないよね!?)

 どう思ってドキリとしたが、今はどうやら放課後。それに、辺りもだいぶ暗いので、生徒たちは帰ってしまった時刻のようだ。

「・・ふぅ」

 柚季は安堵の溜息をつくと、足元のスケッチブックを拾い上げた。そして、机やイスを元の位置に戻すと、カバンの中にすずから預かった真っ白の本をしまいこむ。

(取りあえず、この本だけは大切に持っておこう)

 柚季はそう心に決めた。



「パパ、ママ・・もうすぐ帰るわ」

 すずは本棚が立ち並ぶ薄暗い部屋で、そう呟く。

 死、というものが私たちを離れ離れにしてしまったけれど。・・・ただ、少しの間離れてしまっているだけ。

 私は必ず地上へ帰る。

 ママ。あのね、ゆずはすずの生まれ変わりじゃないの。だって、私、すずははまだここにいる。

 でもね・・・もうすぐゆずは、すずの生まれ変わりになるの。私の薬が上手く効いてくれれば、ゆずの体は私のものになるから。

そうなったら、私はもう一度パパとママの娘として生きることができる。

「・・・もう少し、待っててね」

 今は私のただ一人の妹・・柚季、と一緒の時間を楽しむわ。

 二度と会えなくなってしまう前に、ね。



 そして、次の日。

 柚季はいつものように学校へ行く準備をしていると、あることに気付いた。

(そうだ・・眼帯っ・・どこにあったっけ)

 昨日、境界ですずに眼帯を外されてから、柚季の眼帯は見当たらない。

 柚季はこの赤の瞳を隠しておくことに対して、最近、真面目になっていた。

 見た目の問題もそうだが、この瞳を通してすずがこちら側を覗いているような気がするからだ。

(よかった、あった)

 柚季は引き出しの奥にある昔に買った眼帯を見つけて、ほっとする。そして、いつものようにそれで左目を隠すと学校へ向かった。


(これがヒントって言われてもねー・・一体何がどうヒントになるのか・・)

 柚季は休み時間の間も、そんなことを考えていた。

 バッグから白い本を取り出し、改めてよく見てみるが結局何も分からない。

「ねー柚季!重大発表!!」

 いつの間にか柚季の間に立っていた琴音にビクリとして、白い本を机の中にしまいこむ。

「え、何?」

「あのね、あたし、美大受けることにしたんだ~って言っても、地元のだけどね」

「へー・・!」

 すると琴音は、教科書類と一緒に抱えている大学のパンフレットを柚季に手渡した。

「ここの大学!」

「ふーん・・・いいねぇ~」

 パラパラとパンフレットを捲ってみると、綺麗な校舎に笑顔の学生、それにいろいろなコースがあって施設も充実していることぐらいは分かった。

「・・・っていうか突然だね?美大受けるなんて」

 柚季は琴音にパンフレットを返しながら、そう訊くと

「うん、実はね・・少し前からどうしよーかなって思ってたんだけど、なかなか勇気がでなかったんだー。

 でもね、そのこと中学からの友だちに話したら、一緒に美大目指すって言ってくれたの!」

 琴音は幸せそうに微笑む。

「よかったじゃん!じゃ、その子と一緒に頑張れるね?」

「うん。でもね、その子すごく絵上手だから、置いて行かれないようにしないと」

 ・・・琴音が美大を目指しているなんて正直驚いたが、柚季はそのことが少し羨ましかった。

 一緒に頑張れる友人がいれば、不安で道に迷うことはきっとないだろう。

(わたしも琴音みたく何か、目標見つけないとなー・・)

 取りあえず今は、自分の体を取り返すことだが。

「きっと大丈夫だよ。琴音、いつも頑張っているし・・・それにわたし何かより絵がすごく好きだしっ・・」

 柚季がとっさにそう言うと、琴音ははにかむ。

「えへへ~ありがと。あたし、頑張るね」

「うん、ガンバ!」

「あっ・・次、移動教室だよー行こう?」

「そうだった!」

 琴音の言葉に、柚季はそのことを思い出して、慌てて机の中から教科書を引っ張り出すと立ち上がる。そして、柚季と琴音は教室を後にした。



 その頃、天界では・・・。

 キラキラと星が浮かぶ空の下、人気は大きくと白い建物があった。

 ここはヒトの魂が集まる場所。また、魂のあらゆる管理をおこなう場所でもある。

 そんな建物の一室にある、広い図書室にアルトはいた。

 天界で働く者たちで賑わう図書室で、アルトは空いている席をみつけそこに腰を下ろす。

「はぁ・・・」

 溜息をつくと、カバンの中から一冊の白いノートを取り出した。

(仕事の報告書を書くにしても・・一体どう書けばいいんですかねー・・)

 何しろ自分の任された仕事は、異例中の異例だ。

 昔の資料を参考にするとしても、参考になるようなものは全くないと言って間違いなかった。

 ・・・境界のヒトが魂のメモリーをリセットすることなく、地上に帰ることは絶対にあってはならないことだそうだ。

 しかし、それを境界の魔女と呼ばれているすずは、実行しようとしている。

 すずの行為を止めることがアルトの仕事になるわけだが・・・

(魔女さんが一番望むものって言っても・・一体何なのかさっぱりですよ・・)

 アルトはペンを握ってみるものの、それは思うようにすすんでくれない。

「う~ん・・」

(取りあえず、白い本のことは書いておいた方がよさそうですね・・)

 そして、アルトは少しずつペンを動かす。

 ・・・30分後。

「・・・ふぅ」

 アルトは安堵の溜息を漏らした。

(よかった・・何とか書けましたっ)

 少し前までは真っ白だった報告書が、半分以上文字で埋まったことを確認し、アルトはほっとする。

(というか・・・締切いつでしたっけ・・間に合っているといいですがっ)

 確か、そろそろのはずだ。

 そんなことを考えていると・・背をバシッと叩かれた。

「!・・」

「よっアルト!何してんだ?」

 驚いて振り返ると、そこにはご機嫌な様子のシイカがいる。

「・・・報告書書いてたんですよ。今、丁度書き終わったところです」

「おっそうなのかーよかったな!」

 シイカは口をもぐもぐさせながら、そう言った。

「ほれ、アルトにもやる」

 すると彼は、ズボンのポケットから何かを取り出し、それをアルトに握らせた。

「これってもしかして・・」

 アルトが手の中を見ると、そこには赤色のパッケージにはいったものがある。

 シイカは、

「チョコレートだよ、チョコレート!」

「!・・っていうか、これ、地上の食べ物ですよね?勝手に持ってきたらダメなんですよ?」

 シイカはそれにわずかに眉を寄せた。

「バレなければいいことだろー?それに、懐かしい味を感じたいんだよっ俺は」

「・・・」

「あ・・アルトには懐かしいも何もないんだよな。わりぃわりぃっ」

 アルトは小さくため息をつくと、シイカにチョコレートを返す。

「それにしても、シイカが図書室にいるなんて珍しいですね」

「そうなんだよなー。俺、アルトのことを探してここまで来たんだよ」

 シイカはアルトが返したチョコレートを口に入れると、またもぐもぐさせる。

「?え、何で僕のこと探してたんですか?」

「ちょっと伝えたいことがあるんだよな」

 シイカはニコリとする。

「・・・何ですか??」

「お前、課長から呼び出しでてるぞー」

「・・・えっ!」

 シイカの言葉に、心臓がはねた。

 呼び出されることなんて、何もしていないはず・・・なのに。

「つーか・・廊下にある掲示板、確認してないのか?少し前からそのこと、貼ってあったんだけどなー」

「そっそんなこと、知りませんでした・・よ」

 最近、地上に行ったり境界に行ったりしていて慌ただしかったせいだ、と思った。そして、立ち上がる。

「早めに行った方がいいですよねっ」

「おっ早速行くんだなっ。頑張れよ。ついでに言うけど、アルトって真面目な割にはけっこう抜けてるよな!」

 アルトの不安な心情とは逆に、シイカは二カッと笑ってそう言った。

「・・・はははー」

 アルトは乾いた笑みをこぼすと、シイカに背を向けこの場を後にした。


 アルトは一応掲示板を確認してから(やはり課長からの呼び出しは本当だったらしい)、『集計室』とプレートがはってある部屋へ足を進めた。

 広いこの部屋には、コンピューターのような機械が規則正しく並べてある。

 そこの前に座るヒトたちは、忙しそうにカチカチとキーボードを指で叩いていた。

 この部屋は簡単にいうと、地上・境界にある魂の数や、そして天界に来た魂の数をデータとして管理している場所。

 この世界の魂の数は決まっていて、一つでも数が合わないと大変なことになる。

 以前はこの場所で働いていたアルトは、その大変は知っている。しかし、今は今で別の大変さをしみじみと感じていた。

「・・・」

 アルトはいつも課長が座っている席へ目を向ける。が、そこには誰もいなかった。

「課長ってどこに行ったんでしょうか?」

 アルトが近くに座っている女性に訊くと

「ここに居ないんじゃ、多分、自分の部屋ね」

「そうですか・・ありがとうございます」

(課長の部屋って確か・・3階でしたよね)

 そしてアルトは、この場を後にした。


 アルトが3階まで行くと、そこには同じようなトビラが並ぶ廊下があった。そして、課長室、の前まで歩くと立ち止まった。

「・・・」

 慎重にドアをノックする。

 すると、中から「どうぞー」という声がきこえた。

「失礼します」

 アルトはその言葉と同時に、ドアを押し開ける。

「やっと来たな・・・アルト」

 壁際の背の高い本棚の前に立っているリツボシ課長は、部屋に入ってきたアルトを見るなりそう言葉をこぼした。

 外見が少年のようなリツボシ課長は、イスを使って高い位置の何かの書類を探しているようだった。

「・・・すみません。気付くのが遅くなってしまって」

 課長はイスから飛び降りると、アルトの方へ歩みよる。

「まぁそのことはもういい。それほど急ぐ用事ではなかったしな」

「あの・・・用事というのは・・」

「あぁ、そうだな。取りあえず座ってくれっ」

 課長は、部屋の奥の方にあるテーブルとイスに目線を動かす。

「あ・・・はい」

 アルトは言われた通りに、部屋の奥へ歩みを進めるとイスに腰を下ろす。

 課長もすぐにアルトの向かい側に腰かけた。

「どうだ??今の仕事は」

「え・・」

 課長から発せられた意外な言葉に、アルトは目を見開く。

 課長は少し微笑みを浮かべると、

「大変だろう?」

「・・・はい、やっぱりなかなか難しいです・・」

 何か注意でもうけると思っていたアルトは、そうでないことが分かり、ほっと胸をなでおろした。

 やっぱり課長は、自分たちのことを気にかけてくれる”いい上司”だ。

「だろう、な。それで、今の状況はどうだ?何か困っていることないか?」

「困ってること・・沢山ありすぎますよっ」

 アルトは思わずそう叫ぶ。

 課長はそれに「ははは」と笑った。

「ありすぎる、ねぇ。ずいぶんと正直に言うんだな、アルトは」

「あ、すみません・・」

「いや、いいさ。正直に言ってくれた方が助かることも多いからな。

 それで、早速なんだが・・境界の魔女の方はどうだ?」

 そう訊く課長の表情は、真剣そのものだった。

 アルトはどうのように言ったら、上手く伝えられるか、頭の中で整理しながら口を開いた。

「まず・・魔女さんに薬を飲まされた、地上界の柚季さんのところに行ったんですが・・・──」

 そしてアルトは、今まであったことを一通り話した。と同時に、あることを思い出しカバンの中から、先ほど書き終えたばかりの報告書を取り出す。

「・・・これ、報告書です。内容は、さっき話した通りのままなんですけど・・」

「ありがとう」

 課長はアルトからそれを受け取ると、少し笑う。

「今日、締切―・・ギリギリだったな」

「!そうだったんですかっ。よ・・よかった」

「後でゆっくり確認するからな」

「・・・はい」

 課長は立ち上がると、仕事用の机の方まで歩みより、そこのファイルにアルトの報告書をしまった。

「・・・やっぱり気になるのは、白い本、だな」

 元の場所に座ると、課長はそんなことを口にする。

「・・・ですよね、やっぱり」

 アルトも同感だった。

 あの白い本を柚季に手渡したのには、何か別の理由もあるに違いないとアルトは思う。

 すると課長は、胸ポケットにしまってある銀色のペンを取り出した。そして、目の前のテーブルの表面にそれでゆっくりと大きな円を描いていく。

 ペン先からでてくるのは、キラキラとした粉のようなものだ。

 円を描き終えてペン先を離すと、その円の中のテーブルの表面が静かに波打つ。

「!・・」

 続いてその中に映り込んだのは、見慣れたような景色だった。

 柚季の住んでいる場所の近くなのかもしれない。

「・・・確か、この辺だったよな。えーと・・柚季というのは・・」

 課長がそう呟き眉を寄せたので、

「あ、ちょっといいですか?」

 アルトがその景色に掌をかざすと、それはまたゆっくりと波打ち移り変わっていく。

 そこに映りだされたのは、柚季の姿だった。

 自宅ではない・・おそらく、学校にいるのだろう。彼女は白い本を持ち、難しい顏をしている。

「あ・・彼女が柚季さんです」

 アルトはそう言うと同時に、そこから掌を離した。

「この子か・・。さすがに、呪いの瞳、は隠しているんだな。可哀想に・・」

「ですよね・・あ、この本が例の白い本です」

 アルトの言葉に、課長は驚いたように、

「あぁ・・この本が・・確かに、”白い本”だな。見た目は普通の本と変わらないか・・」

「・・・」

 映像の中の柚季は、本を机の中にしまい込むと、友人らしき人と何かを話しはじめた。

 課長はそこから目を外し、アルトにその瞳を向ける。

「アルト。白い本を天界まで持ってきてくれないか?どういうものか、しっかり確認しておきたいからな」

「!・・・分かりました」

 アルトはとっさにそう返事してしまったことを、少し後悔した。

 少なくとも柚季は、この本が大切なヒント、だと信じている。

 自分が天界に持っていくから、と言って、簡単に手放すことをしてくれるだろうか。

「じゃぁ、よろしくな」

 課長は微笑むと、その銀色の粉の繋がりを指で断ち切る。と同時に、円の中の映像は消え、そこは何の変哲もないテーブルの表面に戻った。

 アルトは不安に思いながらも、頷く。

(・・・やっぱり、危険なものかもしれませんし・・課長にみてもらった方がいですよね)

「では、僕はこれで失礼します」

 アルトは立ち上がり、そう言った。

「あぁ、報告ありがとな」

 アルトは課長の言葉に書くる頭を下げる。そして、部屋を後にした。

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