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境界のすず  作者: 夕菜
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第1話「わたしの寿命」

 わたしには怖いものがある。

 学校の先生・・?

 いや、違う。

 体重計に乗ること?

 いや、違う。

 分かった。死ぬこと、でしょ?

 ・・・いや、違う。

 ・・・。

 わたしは、描きためたスケッチブックをパラパラと捲る。

 最後のページでは、光あふれる部屋の中で、天使のような綺麗な少年が微笑みを浮かべている絵があった。

 わたしが今、一番怖いことは・・・──この二つの瞳に、何も映らなくなることだ。

 そう・・・視力を完全に失うこと。

 わたしの眼帯で覆われた左目は、もう使い物にならないただのガラクタ。

 かろうじて右目は残っているけど、時々そこに走る鈍い痛みが、わたしに不吉な未来を暗示させていた。

 何も映らない世界で生きていくなんて、考えられない。考えたくもない。

 だったらその前に・・・──。



 ここは人間界から遠く離れた場所にある、どこだか分からない世界。

 そこにいる一人の女性は、手に持った小さなビンの中身を覗き込んだ。

 その中には、薬のような小さなカプセルが半分ぐらいまで入っている。

 それを振ると、それらはカラカラと音を立てた。

「あと少し・・・」

 女性は呟く。

 そう、あと少しで、私の望むものが手に入る。

 そして・・もう一度、“人間になれる”。


**


柚季ゆずきがそんな絵、描くなんて珍しいねぇ」

 柚季がいつものようにスケッチブックの上に筆を走らせていると、隣で絵を描いている友人─琴音ことねがそう言ってきた。

「え?そう?うちの絵って割とこんな感じだよ?」

 柚季はそう言いつつ、筆をすすめる。

 今、柚季の描いている絵は、真っ白の絵の中に一人の少年のいる絵。

「えー?違うよっ柚季っていつも、風景とか花とかだよね?」

 琴音は柚季の言葉に、不服そうな声でそう言った。

 柚季はそれに微笑みを浮かべると、

「じゃぁ、いつもと同じだよ。これもわたしの見た風景だし」

(夢の中でだけど・・)

 夢の中で見た光景のはずなのに、何故だか柚季の脳裏に焼き付いて離れなかった。

 そして気が付くと、それを絵で描いていた。

 まるで、その風景を忘れないようにしているみたいに。

(いや、忘れても全然構わないんだけど)

 そう思っているのに、その光景を絵で描きとめておかずにはいられなかった。

 柚季は何気なく、時計を確認する。

 約午後五時。

「・・・あ、わたしそろそろ帰らないと」

 そう言って柚季は、絵の具セットを片付け始めた。

「えー?まだ部活終わるには、時間あるよー?」

「違うって!今日は病院行かなくちゃいけないからだよ」

 柚季は困ったような笑みを浮かべる。

 琴音はそれに、

「あー・・そうだった。柚季は月一で病院行ってるんだよねー」

 そして、心配そうに柚季の顔を覗き込む。

「・・目、大丈夫??」

「・・大丈夫だって!こうして真面目に病院行ってるわけだし。ほんとはまだ部活やってたいとこだけど」

 柚季はスケッチブックを閉じると、それをカバンの中にしまいこんだ。

「じゃぁ、あたしも柚季と一緒に帰っちゃおうかな~お腹すいたし」

 琴音はニヤリとして柚季を見る。

「じゃ、一緒に帰ろー・・って琴音、まだコンクールの絵終わってないよね?締切来週なのに、やばいと思うんだけどっ」

「あっそうだった、そうだった。早く終わさないと」

 琴音は苦笑しながら、筆を取る。

 柚季も笑いながら、

「じゃ、また明日ね」

「うん、ばいばい~」

 そして柚季は、手を振っている琴音に背を向けると美術室を後にした。


「・・・っていうか、お金ないと病院行ってもだめじゃん」

 いつもなら、そのまま病院に行ってしまうのだが、今日は財布を忘れていたため、一端、自宅に帰ってきていた。

 自室の机の引き出しから、いつも使っている財布を引っ張り出す。

(本当は全然大丈夫じゃないけど・・)

 柚季は、左目を隠している眼帯を外した。そして、学校のカバンに入っている小さな手鏡で、その左目を確認する。

 そこにあるのは人間味のない、赤色の瞳。

 こんな気味の悪い色、他人に見られたくない。だから、邪魔だと思いながらも眼帯を外せないでいる。

 始めは、少し充血しているだけかと思った。

 けれど、その色は日を重ねていくうちに広がって・・・いつの間にか、こんな状態になってしまった。

 そして、それと同時に視力も失った。

 何かの病気だと思い、前々から眼科に通ってはいるものの、その赤目への進行と視力の低下は止められなかった。

(って言うか、薬飲めばすぐによくなるって言っておいて、全然そうじゃないんだけど)

 そう思いつつも病院に通うことがやめられない。

 ・・・薬を飲むことをやめてしまったら、もっと恐ろしいことが起こるかもしれない・・柚季の心の隅ではその恐怖が確かに存在していた。

 柚季は、手鏡をしまって眼帯をつけると立ちあがった。

(っていうか、早く行かないとっ)

 のろのろしているともうすぐで、予約の時刻になってしまう。

 柚季がカバンを持ち、立ち上がったその時、左目で何か、が見えた。

「!・・何?」

 何も見えないはずの左目で、確かに何かが。

 柚季の全く知らない景色、だ。

 けれど、その景色は暗闇に近くはっきりと何がそこにあるのか確認できない。

 ただ感じたのは、夜の図書館のようなイメージ。

 薄暗い部屋で、たくさんの本棚が並んでいるような・・・。

 そうしているうちに、その景色は消えてしまった。

 いつもの何も映らない、左目にもどる。

(一体・・何?)

 今まで経験していないような事態に、柚季は焦った。

 こんなこと、ありえない。もう、この左目は、何も映らないはすなのに。

(気のせいだよねっ・・)

 そう決めてしまうことが、自然、だ。というか、そうとしか考えられない。

「・・・・さて、行くか」

 柚季はカバンを持つと、急いで部屋を後にした。


 そして。

 柚季は、病院(と言っても、小さなクリニック)の待合室のイスに腰掛け、受付に名前を呼ばれるのを待っていた。

 この待合室には、柚季以外に人はいなく、しんとしている。

 というか、柚季以外の患者をここで見かけた記憶があまりない。

 予約の時刻が最後だからなのかもしれないが、それがいつも不思議で少し不気味だった。

 まるで、自分だけが外の世界から切り離されたみたいだ。

(なんて・・ね)

 それに、最近、あの診察室に入っていない。

 柚季は、視界にある診察室へ入る扉を眺めた。

 それは、いつもと同じように内側から開かれることもなければ、こちら側から開かれることもなく、ただそこに立ち尽くしている。

 医者が言うには、薬だけ飲んでいれば問題ない、診察は年に一度ぐらいでよい・・・のだそうだ。

 だから今日は、薬をもらいに来ただけ。

(・・・ただ、楽したいだけなんじゃないの?)

 柚季はそれが不満だった。

 自分はこんなにも不安で怖いのに。

 ・・・もし、この右目まで視力がなくなったら。

 柚季は、カバンの中に入ったままのスケッチブックをとりだし、それをパラパラと捲る。

 もし、完全に視力を失ってしまったら・・・・絵、が描けなくなる。

 色も感じることができなくなる。

(そうなったら・・・生きてる意味なんてないと思うんだけど・・)

 その時、

「星宮 柚季さん」

 と受付の女性に名前を呼ばれた。

 柚季は、スケッチブックをカバンの中にしまいこむと、立ち上がり、カウンターの前まで歩みを進めた。

「今日もお薬だしておきますね」

「・・・はい」

 受付の女性は、カウンターに柚季がいつも貰っているものと同じ薬の袋を置く。

「お会計は、○○円になります」

 柚季は、カバンから財布を引っ張り出すと、いつもそうしているように薬の料金を支払って、薬の袋をカバンにしまいこむ。

 受付の女性は、カウンターのはじに置いてある立てかけのカレンダーを見ながら、

「次回のご予約はいつにしますか?」

 柚季もカレンダーを見ると、

「来月の第二金曜日の五時半で大丈夫ですか?」

 とお決まりになっている言葉を並べた。

「はい、大丈夫ですよ」

「・・・あの」

 柚季は思い切って、心の隅に溜まりに溜まった言葉を言ってしまおうと思った。

「・・次回は先生に診てもらいたいんですけど、大丈夫ですか?」

「では、お大事に」

 受付の女性は、いつもの言葉を事務的な笑顔で並べる。

「・・・は?」

(もしかして、無視された??)

 さすがに、苛立ちがこみ上げる。

「あのっ次回は先生に・・・」

「では、お大事に」

「・・・ねぇ、ちょっと!きいてよ!」

 受付の女性は、まるで柚季の言葉をきいていないらしい。

 柚季がそう叫ぶようにして言っても、彼女は事務的な笑顔を浮かべているだけだ。

「では、お大事に」

「っ・・・!」

 柚季は我慢できなくなり、踵を返し歩き出した。

 これ以上、何を言っても無駄だ、そう感じだからだ。

 それに・・なんだか、あの女性を気味悪く感じだ。固まったあの笑顔は、まるで心がない人形のようだ。

 病院内からでようとしたその時、カバンの中の何が、ブルブルと震えた。

(あっメール・・)

 柚季はそう思い立ち止まると、カバンを開ける。

「・・・え!?」

 柚季は自分の目を疑った。

 小刻みに震えているのは、ケータイではなくスケッチブックだった。

「何なの・・??これっ・・」

 柚季は恐る恐るスケッチブックを手に取る。

 するとその震えは突然大きくなり、スケッチブックは柚季の手から床へ落ちる。

 その衝撃でページが開かれた。

 ・・・開かれたページは、真っ白の部屋に一人の少年がいる、あの絵。

 と同時に、震えは止まり、その代りその絵が青白い光を放ちだした。

「!!?・・・──」

 柚季がこれは何事だ、と固まっていると、その絵から何かがするすると現れた。

 絵の中からでてきたそれは、人の手だった。

 人の手は何かを探すような仕草をした後、床に掌をつけ、そしてもう一本でてきた人の手も同じように床に手をつける。

「!?」

(一体・・・何っ?)

「よいしょっと」の声と同時に、絵の中からでてきたのは・・・一人の少年だった。見た目は柚季と同じぐらいの年齢に見える。

 綺麗な金髪と、真っ白の服に身を包んだ彼は、窮屈そうに絵の中からはい出すと「よかった、出れましたっ」と呟いて、柚季の前に立つ。

 柚季は今目の前で起きた信じがたい事実に、開いた口がふさがらなかった。

「あっ・・あなたが星宮柚季さんですね」

 少年はにっこりと笑って柚季を見る。

 柚季は目を白黒させながら、

「一体何??って言うか・・スケッチブックの中からでてきた?」

「スケッチブック・・?あっそうなんです。天界から地上界に行くには、物質を通す必要があるので・・」

 少年はそう言いつつ、スケッチブックを拾い上げて、柚季に手渡す。

 ・・・柚季はそれにかかれてある絵を見て、ぎょっとした。

 柚季が描いたはずの少年が、抜き取られたように消えていた。

(もしかして、目の前にいる人が・・・)

「はじめまして。僕は天界から派遣された、アルトという者です。

ここには仕事できたので、困ったことがあったら遠慮なく言ってくださいねー」

 彼─アルトは、陽気な笑顔でそう言う。

「そうだったんだ・・・ご苦労様ー・・じゃなくて!言ってることがほんと、意味不明なんだけどっ」

「あっ・・すみません・・何というか、こう説明するしか方法が思いつかなかったんです」

「・・・」

 柚季の頭の中は、これまで経験したことのないぐらいパニックを起こしていた。

(落ち着け・・・自分!)

 心の中でそう念じると、

「・・・現実なの?今、起きてること・・」

 アルトは、柚季の言葉に目をパチクリさせる。そして、困ったような笑顔を浮かべた。

「当たり前じゃないですかっ。現実じゃなかったら、何になるんです?

こうしてお互い、触れることもできますし」

 するとアルトは、柚季の手を何のためらいもなく掴む。

「!・・・」

「ほら、これで信じるしかないですよ、柚季さん」

 ・・・アルトの手はひんやりとしていて、まるで血が通ってないかのように色白だった。

 柚季は丁寧にアルトの手から、自分の手を抜き取ると、

「分かった、信じるからっ・・」

 という他なかった。

「さっそくですが、柚季さん。カバンの中にある薬を見せてもらってもいいですか?」

「え?薬ってこれのこと?」

 柚季はカバンの中から、さっき受け取ったばかりの薬の袋を取り出すと、アルトに見せる。

 アルトはそれを受け取ると、中の薬を一束とりだした。そして、難しい顏をする。

「むむ・・確かにそれっぽいですね」

 すると、アルトはもう片方の手の中に、まるで手品のように、ポンッと手帳のようなものを現した。

 パラパラとページを捲ると、あるページで手の動きを止める。

「間違いないですね・・”魔女の呪い”の原因は、この薬にあります」

 アルトは薬と手帳の紙面を交互にみながら、そう言った。

 柚季は嫌な予感を持ちながらも、

「一体何?その魔女の呪いっていうの・・・」

 アルトはその言葉に、「ちょっと失礼します」と言って柚季の方へ手を伸ばす。

「!・・・」

 そして、柚季の左目を隠している眼帯を丁寧に外し言った。

「この赤い瞳のことですよ」

「!!」

 アルトは柚季の左目を、じっと観察するように見る。

「・・・もうこの左目は、柚季さんのものではありません。”境界の魔女”のものです。

 この薬をずっと飲み続けていれば、柚季さんの体は魔女にのっとられてしまう・・・でしょう」

 アルトは手帳を見ながらそう言い終えると、手帳を手の中からかき消した。

 柚季はアルトの言葉に耳を疑った。

「え・・!?わたしの体をのっとるって・・・──?

 それにわたし、この病気を治すために薬のんでた・・・──」

「ん~・・・そこらへんは詳しく説明しなくちゃですね・・そうですね・・まず・・」

 アルトは考えるような仕草をして、

「この薬、初めて飲んだ時のこと、覚えていますか?」

「!・・もちろん、覚えて・・・──」

 柚季はそこで言葉をとめた。

 確か、一年ぐらい前・・・のはず、だけど・・・。

「ちょっと待って・・・今、思い出すからっ・・」

「・・・」

「──・・・あ・・れ?」

 柚季は頭を抱える。

「うそ・・思い出せないっ」

 何となく、薬を飲み始めて一年ぐらいたつと思っていただけで・・・柚季は、その日のことを全く記憶してなかった。

 どうやって、病院に行ったかも、薬を受け取ったときのことも。

 アルトは、柚季がこう反応することを知っていたかのように、言った。

「・・・つまり柚季さんは、その赤い瞳になるために、薬を飲まされていたわけですね・・・本当にお気の毒さまです」

 アルトは悲しそうな顔をする。

「うそっ・・」

 柚季は改めて知った事実に、言葉を失った。

 まさか、自分で自分に”毒”を与えていたなんて。

 少し前のその光景が頭に浮かんで、ゾッとした。

「っ・・わたし、どうなっちゃうの?」

「・・・このまま何も知らずに薬を飲み続けていたら、柚季さんの体は境界の魔女のものになっていたことは事実ですね・・」

「!!」

「でも、大丈夫ですよ?僕がこうして助けにきたんですから。

 それに、瞳の変化はまだ左目だけです!まだ時間はあります!」

 アルトはにっこりと笑って、柚季を見た。

「・・・ほんとに大丈夫なの?」

 ・・・アルトの笑顔を見ても、どうも安心することはできない。

「はいっ。今から境界きょうかいにいる、”魔女”に会いに行こうと思います。

 あっ境界っていうのは、地上界と天界の間にある世界のことですね。

 それで・・その魔女から、柚季さんの体に定着した薬の効果を解除する薬をもらいます。彼女は、どんな薬でも作れてしまうらしいので」

 アルトは、読み上げるようにその言葉を並べる。

 一瞬黙りこむ柚季。そして、

「・・・っていうか・・フツーに考えて、作ってくれるはずないと思うんだけどっ」

「え・・・」

「だって・・・この薬を飲ませて、わたしの体を乗っ取ろうとしてる?のは魔女なんだよね?」

 柚季が必死にその言葉を並べても、アルトは微笑みを浮かべた。

「・・・大丈夫ですよ!魔女と言っても、もとは地上にいたヒトなわけですし・・・頑張って話をすれば、きっときいてくれるはずですよ」

「いやっ・・・頑張る頑張らないの問題じゃなくて・・・」

 とその時、左目に今までにない深い痛みが走った。

「!・・・──いたっ」

 柚季は思わず、手で左目をおさえる。

 その痛みは、ズキンズキンと柚季の目の奥で響き・・・そして、一瞬、意識が遠のいた。

「・・・柚季さん?どうかしたんですか?」

 アルトが柚季に近付いたその時、

 柚季の手は、アルトの手の中にある薬の入った袋を奪い取っていた。

「!?・・・え??」

 柚季は自分の行動に驚く。

「柚季さん、それは僕が預かっておきますよ?天界に戻った時、上司に提出しなくてはならないこともありますし」

 アルトはにこやかにそう言って、柚季の手の中の薬に手を伸ばすが・・・

「これ以上、私に触れないでくれる?汚らわしい!!」

 いつの間にか、柚季はそう叫んでいた。

(えぇ!?何言っちゃってんの?わたし・・)

 アルトはそれに、とてもショックを受けたような顔をした。

「あっ・・す、すみません・・」

 柚季はすぐに次の言葉を続けようとするが、自分の意志では口を動かすことができなかった。

 その代わり、自分の意志とは関係なしに、柚季は言った。

「・・・もうすぐで、ゆずの体が手に入るのに・・邪魔しないでくれる?」

 柚季の言葉に、アルトの目の色が変わった。

「!・・・もしかして、あなた、魔女なんですか?」

 その言葉と同時に、左目が上下左右に動くのが分かった。

 柚季は口元に、薄い笑みを浮かべる。

「まぁね。あー・・・やっぱり、片目だけだと視界が悪くて困るわぁ」

 柚季は今までにない、恐怖に襲われる。

(これ、が魔女??)

「あ、ゆず、突然こんなことになって、びっくりしたでしょう?

 無理もないわよ。人間は、こっちの世界の存在さえ知らないんだし」

 どうやら魔女は、柚季に話しかけたらしい。

 しかし、柚季はそれにこたえる余裕はなく(どっちにしろしゃべれないが)、ただ混乱していた。

「この”人間になる薬”作り出すの、とっても苦労したんだから。でも、何の違和感もなく飲んでくれたみたいで安心したわ」

(・・・!)

 柚季は満足げに微笑む。

「あと少しよ、ゆず。私はあと少しで人間になれる。この一か月分の薬を飲み終えたらね」

(!!うそっ・・・もうそれだけでっ・・?)

 すると、アルトが不安げな声で叫んだ。

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