君を思うと
鳴り出した携帯の音に目を覚ます。
もう朝が来たのかと手探りで、音を鳴らし続けている携帯を取り、開く。
深夜2時を記しているデジタル時計、鳴り響く音楽。
一瞬、無視しようか、という考えが頭を過る。
しかし、電話の相手を見るとそうもいかないのが、ありありとわかってしまった。
「はい。」
『あ、起きてたか。』
あなたに起こされました、と言いたいのをこらえ、用件を聞き出す。
『…、てな訳で、明日は早出だから、宜しく。』
何が、宜しくだ!!
と、叫びそうになるのを無理矢理呑み込み、短く返事をし、電話を切った。
唐突だが、私は秘書の仕事をしている。
この仕事を初めて、かれこれ5年、仕事一筋、今や立派なお局様。
出逢いも、無かった訳ではないが長く続かず、とうとう35回目の誕生日を迎える。
最近は、母親もお見合い写真や話を持ってくることもなくなった。