ケミネ、戦死
警報が耳障りで仕方がない、緊急時だからか、それ以外のノイズも頻繁に入るようになったが、些細な事。
「全部隊起動、カタパルトで地上へ……よし、次は防衛プログラムを起動……」
端末を操作し、全てのシステムを立ち上げる。自室をラボ兼司令室にしたのは失敗だったかもしれない、整理整頓が出来ていないため、必要なディスクなど数点が見つからず手動で起動する羽目になってしまった。
「これじゃ兄貴に大目玉やな……いや母ちゃん譲りって馬鹿にされるかも」
全システム起動を確認し、自身の武装を確認する――とは言え、工具類さえあれば全て事足りるが。
部屋の中央に据えられたメインコンピューター。全システムを起動させた今、こいつに望むのは自分が壊れたときに、兄貴かレイが自分を復旧させてくれることだけ。
「死んでも兄貴たちとお別れやない、それだけで十分心強いもんやな」
「いえ、そうでもありませんわよ」
突然の声に驚き振り向く――同時に警告。
『両足の強化骨格切断、続いて左腕欠損』
デバイスの警告に戸惑う。何が起こったのか理解できないのだ。気づけば地面に倒れていた。
「もう会うことはありませんよ、永遠に」
視界を上に向けようとした瞬間、視界が暗転し、声の主を確認することは出来なかった。
「ふふっ、まず一人……」
両手にガンブレードを小型化したガンナイフ、それを倒れたケミネの背中に突き立てる。
本来ならばこの場で粉々にしてやりたいが時間がない。腰のホルダーに予備としてガンナイフがあと五本、いずれも出力兵器として使えるので、この上なく頼れる武器だ。
「次はレイちゃん……妹たちの残骸を見て、お兄様は何を思うのかしら、楽しみだわ」
暗鬱とした笑みを浮かべ研究室を後にする、背中のベルトに差し込まれたガンブレードと、腰まで伸びた黒髪を揺らしながら。