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アクト・ファミリア  作者: カミハル
妹たちとそうでない者
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襲撃

 作戦前とは思えないほどリラックスできる、先ほどからミーネが急に喋らなくなったが静かで良い、レイは兄貴のパソコンを勝手に開いて何やら操作しているし、自分は布団に包まってコロコロしている。ほんのり香る兄貴の匂いが心地よい。

「しかし兄貴の鈍さもあそこまでいったら国宝級ちゃうか? こんなかわいい妹三人がおるのに」

 誰に言ったわけではないが、口にした言葉に、レイは操作を終えたのかパソコンの電源を切り、ミーネは神妙な面持ちでこちらに視線を移した。

「普通こう……なんかあってもええんちゃうんかなぁ、とは思うよな?」

「ガンマ兄さんにそんなのを期待してもダメです。大昔の恐竜顔負けの鈍さだって、母さんが言っていたもの」

 レイの言葉にケミネは頬を膨らませ、ベッドの上をゴロゴロと転がった。確かに鈍いのは知っているが、もう少し面白い反応をしてもらいたいというのが本音だ。家族とは言っても血は繋がっていないのだし、表面上だけでも色々とあるはずだが、兄貴はそういったことには無頓着に過ぎた。

「まぁ、この作戦が終わったら兄貴にも余裕が出来るやろうし、そんだら誰が一番に兄貴をあの湖に誘うか競争やな」

「別に競争する必要はないと……」

「競争や! 一人の男を巡って女が争う。なかなかのシチュエーションやろ」

 先ほどから喋らないミーネに話を降るが、反応はない、無視されているわけでもないようだ、もしかするとAIを使って自己プログラムのチェックでもしているのかもしれない。

 ミーネが事あるごとに兄貴に引っ付いていたのが多少疎ましかったが、ミーネも何だかんだで家族の一員としてそこにいるのだ、作戦が終わったら少しぐらい仲良くしてもいいかもしれない。

「ほなら、部隊全員をスリープモードにしておこかな、レイはこれからどないするん?」

「あたしは自己プログラムの最終チェックを済ませておきます、いざというときに動作エラーが出ては兄さんの足を引っ張ってしまいますから」

「そら関心や、うちも何があっても対処できるようにしとかんと――」

 途端、ガンマの部屋の窓にシャッターが下ろされ、続いて真っ赤な警告灯と警報、レイも突然の事態に驚き、目を丸くしている。

「樹海内に侵入者! コスモ、状況を!」

 腰に巻きつけた工具入れに搭載されたデバイスに尋ねる、久々の起動のせいか多少のタイムラグが気になったが、返事が返ってきた。

『樹海の東方より人間の部隊が侵入、数は出力兵器を装備した歩兵が二千、軍用車が十台とパワースーツ部隊が五十です』

「それが最低人数てわけやな」

 下手すれば、増援もあり得るが最初の部隊編成だけでも十分な脅威だ。

「レイ、指示を頼む!」

「ケミネ姉さんは部隊を起動させ、基地正面に集合させた後に防衛プログラムを発動させてください、敵の進軍経路を限定化させます。ミーネは基地の最上部から遠距離攻撃、適の進軍を抑えると共にできるだけパワースーツの数を削ってください。ガンマ兄さんにはあたしの方から連絡します、以上解散!」

 珍しく声を張り上げ指示を出す。

 二人にはそう言ったものの、先ほどからガンマの通信チャンネルが接続されない、AIのチェックを行っているのならば最悪のタイミングだが――

『敵の部隊が進軍を開始、距離五十』

 ――敵は待ってくれない。五十キロの距離ならば一時間と待たずこちらの基地に到達するだろう。

「うちは部隊を動かす、後は任したで!」

「ミーネも狙撃ポイントへ向かいます、レイお姉さま、お気をつけて」

 慌ただしく出て行く二人を見送り、レイは思案に暮れた、ガンマがエラーチェックなどの動作を行っているのならば一時間は行動不能になるだろう、最悪の場合三十時間後ぐらいに起動する可能性もある、そうなってからでは遅い。

 歯軋りし、両手の皮手袋を固定する。

「今はやるしかない」

 ガンマがいないだけでここまで判断に惑うようでは笑われてしまう。今出来る最善の行動は兄を待つことではない。

 レイはデバイスを起動し、ガンマの部屋を落ち着いて退室した。




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