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アクト・ファミリア  作者: カミハル
開戦と魔王
21/50

長男到着



 地上から地下に行くためにはエレベーターを使わなければならないのだが、最短のルートは人間に包囲されていた。

 通常ならば避けて通るが、今回はそうも言っていられない、地下の状態がわからない今、無駄なエネルギーのロスは避けたかったが仕方がない。

「ガンブレード起動!」

 ガンブレードを抜き、包囲する敵の真っ只中に飛び込む。遠距離から砲撃を撃てば、地下にいくエレベーターごと吹き飛ばしてしまうし、そっちの方がロスがでかい。

「プロトタイプのガンマだ! 総員戦闘配備に――」

「遅い、敵の侵入を想定するなら……」

 両手でガンブレードを握り、思いっきり横に薙ぐ。刀身が大きく分厚いので切れ味こそ低いが、分厚い鉄板に殴られるのだ、一撃で死に損えば、それこそ地獄の苦しみを味わうことになる。

「常に警戒は怠らないことだ……つっても、もう遅いがな」

 一振りで四人の人間を薙ぎ払い、他の敵の士気を大幅に下げる。戦闘経験豊富なガンマだからこその単騎特攻。次は自分が死ぬかもしれない可能性を否定してまで、襲い掛かってくる馬鹿はいない。

 もっとも、どの道生かして返すつもりはないので、戦意を無くそうが無くすまいが関係ないのだが。

 包囲していた八人の人間を斬り伏せ、エレベーターに乗り込む。その際、何らかしらの細工が施されていないかのチェックも怠らない。

(さて、このエレベーターの出口は基地から多少遠いルート……地下に敵勢力がいるとすればまずやらなければならないのは状況の把握と基地の防衛……)

 ドアが開くと同時に天井スレスレを高速飛行し基地を目指す、それが最適であると決め、マントの飛行ユニットを起動する。

「ガンブレード、他のデバイスAIと通信はとれたか?」

『いいえ、ですがこちらから通信を飛ばしているのでアリスさんあたりが察知してくれるはずです』

「…………そうか」

 きちんと起動していれば。

 そんなセリフを言いかけて呑み込む。

「とりあえずドアが開くと同時に飛ぶ、準備はいいな?」

『いつでもいけます』

 ガンブレードの返事を聞くと同時、地下に到着。同時に飛行ユニットを起動し、飛翔、天井スレスレを最大速度で飛ぶ。

 地上はそれこそ地獄絵図だった。人間の血か、アクトのエネルギー廃液なのか区別もつかないほどに血で染まった地面に背筋を粟立てる。

「戦況は相当まずいようだが、今はそんな場合じゃないな」

 さらに速度を上げ基地の正門前に辿り着く。

 地上に降りようとして、その時始めて地面を凝視した。

 白衣の女性が真っ赤な甲冑を身に纏った敵に首を捕まれて――敵が振りかぶった。

 まずい。そう思った時にはすでに遅く、白衣の女性は地面に叩きつけられ、砕けた強化骨格と共にバラバラにされてしまった。

 そしてスーツの敵が女性の顔を覗き込んだかと思えば、次の瞬間には女性アクトの頭部を踏み砕き、哄笑を上げた。

 ガンマの視界が真っ赤に染まる。血が目に入ったわけではない、遠い記憶がフラッシュバックしたように、赤い景色が瞳を多い尽くし、気づけばガンブレードを振り上げ、地上の敵目掛け斬りかかった。

 普通の場合ならば叫びながら怒りに任せて斬りつけるのだろうが、ガンマの脳内では受け止められた時の対応や、斬り伏せた後の追撃まで幾通りのパターンが巡っていた。

 そして予想していた一つ、斬撃が受け止められた。

「ほう、プロトタイプアクト、ガンマか。なるほど、このポンコツと違い良い一撃だ」

 片腕で受け止められたガンブレード、いくら切れ味が無いといっても、落下速度とガンマの体重、そしてガンブレードの重量、その全てのエネルギーを片腕で受け止めたのだ。

「ポンコツだと……」

 地面に散った体の一部は白衣を身に纏っていたようだ。そして指にメスが挟まれた腕、信じたくはないが、姉に間違いないようだ。

 頭に血が上る。いくら冷静にパターンを読もうが、全身から漏れ出る怒りを抑え込まなければ目の前の敵は倒せない。

 それほどまでに高性能な武装なのだ。

「プログラム魔王を再起動、今はこの感情が邪魔で仕方がない」

『了解、ぜひファインとそのマスターの仇を討ってください』

 ガンブレードの頼みに返す返事はなかった。返事などしなくても、ガンマの答えは決まっているのだから。


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