内陸の人魚姫
「マルノミーヌ! 私は貴様との婚約を破棄する! 」
シジラ王国の魔法学園。貴族が通うことを義務付けられているソコで本日行われているのは卒業パーティー。
煌びやかなシャンデリアの下、王太子シーデジルは婚約者である公爵令嬢マルノミーヌとの婚約を破棄する暴挙に出た。
「理由をお聞かせ頂いても? この婚約は王命ですわ。貴方の意思など介在しません」
マルノミーヌは毅然と言い返す。この婚姻は二人が生まれる前から既に決定されていた婚約だ、破棄など出来よう筈が無いのだ。
「私は真実の愛を知った······ラクトーラ! こちらへ! 」
シーデジルに呼ばれて出てきたのは、ラクトーラと呼ばれるメイドの少女だ。とても困惑した表情をしている。
「私はラクトーラと結婚するものとする! よって妃はラクトーラである! 」
「馬鹿な!? 」 「気でも狂ったか!? 」 「そのメイドは平民だぞ!? 」 っと会場の貴族達は驚きの声を上げてどよめく。
ラクトーラは平民の村娘上がりのメイドだ、妃になど出来よう筈が無い。
「平民を妃にすると言う行為が何を意味するかはご存知かしら? 」
「私がラクトーラを愛していると言う何よりの証拠だ! 」
会場の貴族達は愚か者を見る目で、シーデジルを見る。マルノミーヌは終止、余裕の笑みを崩さないが、目は氷のように笑ってない。
「まぁ······よろしいでしょう。では平民になってくださいませ殿下」
「何故だ!? 」
「貴族にとって婚約とは義務。その義務を放棄する者に貴族の資格はありません。その娘とどうぞ市井で暮らしてくださいませ」
「ふざけるな! 私は王太子だ! 次の王だぞ! 」
「愚かな事をしてくれたね、兄上」
「エッサー! 」 っと憎らしげに声を上げるシーデジル。エッサーは第二王子で側室の子だ。しかし、シーデジルより遥かに優秀で魔法学園ではマルノミーヌと並んで首席だ。ちなみにシーデジルは中の下だ。
「公爵家の後ろ盾があったからこその王太子だと言うのに。平民の妃など誰も受け入れる筈が無いだろう」
「愚か者め! 」
「ち·······っ父上! 」
国王夫妻の登場だ。呆れた顔でシーデジルを睨む国王と涙を浮かべる母親の正妃。
「貴様に期待した私が馬鹿だった。王家に平民の血を入れるだと? 言語道断だ! よって、シーデジルの継承権を廃し、エッサーを王太子とする! 」
事実上の廃嫡だ。会場は騒然とする、純粋に祝福の拍手を贈る者も居れば実家への報告に使いを走らせる者も居る。
「おめでとうございますわ! エッサー殿下······! 」
「君のお陰だよ、マルノミーヌ。皆、聞いて欲しい、俺はマルノミーヌと婚約を結ぶものとする! 新たなる妃はマルノミーヌだ! 平民なんかじゃない! 」
パチパチパチパチ!
会場は祝福の嵐に包まれる。優秀な王子と公爵令嬢が婚約破棄を乗り越えて逆転劇を起こしたのだ。祝福しなければ貴族ではない······人では無いのだ。
「認めん······! 認めんぞ! 妾のガキ風情がぁ! 」
執念深いシーデジルは引かない、地面にくさびを打ち込んだが如く。他国の姫である自らの母と国内貴族の令嬢を母に持つエッサーとでは血の正統性と言う変えられぬ宿命の差があると、この男は信じて疑わなかった。
「見苦しい······この馬鹿を平民のメイド諸とも連れていけ! 」
国王は自らの息子にまるで汚物を見るかのような冷たい目で言い放つ。
「父上! ご采配をお誤りなさるな! これは紛れもない王位の簒奪! 血の正統性の否定! 大神殿が黙っておりませんぞ! 」
「くどい! 大神殿などに何時までも頭を下げてられるか! 」
醜い言い争いをする王と元王太子の横で、平民のメイドであるラクトーラは時計をチラチラと見ているマルノミーヌに気付いた。そして、ふとした瞬間に目が合う二人······
ニタリ。と嗤うマルノミーヌ。全身から冷や汗が流れるほどの寒気を感じたラクトーラは、貴族達を押し退けて会場の外に飛び出す。
殺される。あのままアソコに居れば確実に殺される。
気付いたエッサーはすぐに合図を出し、会場内の騎士達をラクトーラの追跡に向かわせた。
「グ······グググ······グボァ! 」
しかし会場の者達は、平民のメイドの事等は気にしていない。
此度のヒール役であるシーデジルは急に白目を剥き、喉を抑えて苦しみ出し倒れた。
死んでいる。泡を吹いて呼吸の出来ない苦しみを顔に描いたかのような悶絶の死に顔だ。
「イヤアアアアア! 」
令嬢達は悲鳴を上げる。令息達も何人かは腰を抜かし、床に晩餐を吐いた者もいるくらいだ。
『死にたくない』 シーデジルの苦悶の死に顔は、会場の若者達の脳に恐怖を刻み込んだ。
「兄上! これは······毒か!? 」
「エッサー殿下! 平民メイドが毒を入れたに違いありませんわ! 」
エッサーは直ぐ様、ラクトーラ追跡を後発隊に命ずる。「先行部隊と挟み撃ちにしろ」と。
ラクトーラはシーデジルが死ぬ直前に予測していたのだろうが、パーティーに参加した時点で逃げ切るのは不可能だった。
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公爵令嬢マルノミーヌは、こことは別の世界。地球の日本と言う島国のOLだった。
ここより文明は遥かに発達していたが、人の心は荒んでいた。ブラック企業で酷使されていた前世のマルノミーヌは過労死した。
気付けば魔法のある世界への転生。前世で読んでいたネット小説やコミカライズのファンタジーに良くある王太子と不仲の悪役令嬢に転生した。そして、兄より優秀なのに王位を継げない第二王子のエッサーに前世の努力が無能なオッサンやオバサン共の······いや馬鹿なガキ社員共······日本社会の全てのせいで報われなかった自分を重ねて恋仲となる。
哀れに思った女神様から貰ったギフト 『毒魔法』でシーデジルの愛飲する酒に気付かれずに遅効性の毒を仕込み殺した。
これでエッサーと自分は報われる。
「身の程知らずのメイド風情が、叶わぬ夢を見たわね。ホント······前世の自分みたい······」
王太子となったエッサーと婚約を結び直し、マルノミーヌは妃になる。
泥棒猫のメイドが、生首となって自分の前に現れるのを待ちながら······
◆◆◆◆
「どこ行った!? 」 「クサれが! 完全に見失っちまった! 」 と言う、近衛騎士達の負け惜しみを背に、ラクトーラは逃げた。
城を出たラクトーラを追って近衛騎士団はジワジワと彼女を追い詰めた。そして、遂に作戦通り挟み撃ちにしたと思ったが······彼女は姿を消していた。
ラクトーラと言う女は平民である。地方の男爵家で働くメイドだったが、地方視察に来たシーデジルに気に入られて王宮で働く事になった唯のメイド。
しかし、彼女の村は内陸の山間部に有る。そこに広がる巨大な湖。仕えていた男爵家が、この地方を古くから治めていた豪族なのだ。ラクトーラは子供の頃から湖で魚を釣ったり泳いだり······そして湖に潜り巨大魚を仕止めたりしていた。
シジラの王都は港街でもある。街中の水路は海へと通じているのだ。姿を消したのでは無い······ラクトーラは水路から泳いで海へと逃げただけなのだ。
▼▼▼▼
「······オッス」
「······? 」
釣りをしていた少年は目を丸める。朝から磯で釣りをしていたが、全く魚はかからず昼になった。自分には釣りの才能が無いと嘆いていた矢先の······メイドの少女が釣れたのだ。
「······いやいや。そんな事は無いだろ? 」
少年は現実を受け入れきれない。魚が釣れないのは自分の腕と運もあるが、メイドが釣れるわけ無いだろうと······常識的に考えて、ね。
「お腹空いた······ご飯」
「この状況下で食事を所望できる神経! 」
突っ込んだ所で何も変わらない。振る舞える筈の『アテ』はボウズなのだから。
「魚······食べたい······」
「私には釣りの才能が無いらしい。悪いが振る舞える物は何もない」
少年は嘆いた。腹を空かせた少女に何も振る舞えない自分の無力さに、全身をうちひしがれた。
「すまぬ······って、んっ? 」
「お魚、お魚」
目の前には信じられない光景。メイドの少女が魚を大量に釣っている。少し目を離した数秒で、自分が半日かけて一切釣れなかった場所で。プライドは傷つけられる。ズタズタなのだ······最早。ね。
「私は······夢を見ているのか? 君は······釣りの女神か? 」
「火······起こす······焼き魚焼き魚」
「待て」 と少年はメイド······ことラクトーラを制止する。
「殺すぞ」 と凄むラクトーラにビビりつつも、少年は自らの名を名乗る。
「私はジョバンナと言う。しがない釣り人さ」
「しがないのは人生だけにしとけ······」
「やかましい」 と悪態は吐きつつも、ジョバンナは魔法で火を起こす。火魔法だ。魔法を使えるのは貴族だけだが、そんな事はラクトーラにとってはどうでも良い。
「ガブガブ! ムシャムシャ! 」
「落ち着いて食べなさい」 とジョバンナは魚を焼きながら、貪り食うラクトーラを落ち着かせる。
「君の名前は? 」
「ラクトーラ······王宮のメイド······」
「ん?」 とジョバンナ。王宮クラスのメイドだと、貴族出身であるはずだが、ラクトーラの食べ方や喋り方はそうは見えないからだ。
「失礼ながら、何処の国の? 」
「分かんない。湖の集落が地元······」
「湖······シジラ王国か······」 とジョバンナは把握する。ここは、シジラの隣国、オルテリエ帝国である事を、ラクトーラに伝える。
オルテリエは水の国と呼ばれるシジラと違い、海に面する所は全て断崖絶壁に遮られている実質的な内陸国だ。釣りを愛するジョバンナはこうして崖の下の磯で釣りをするしか無い。
「所で何故シジラからオルテリエの海まで? 」
「婚約破棄······馬鹿王子······」
「? まぁ良いや。もうじき日も暮れる。私の店に来ないか? 部屋は自由に使って良い」
ラクトーラは食いついた。あったかいご飯にお風呂、軟らかいベットがあるなど、天国でしか無い。
「お前······ガキのクセに······店やってるのか」
「君も大して変わらんだろう。アイスマジックボックスの物は食べても良いが金は頂くからな? 」
ラクトーラは、夜な夜な王宮のアイスマジックボックスから食べ物をつまみ食いしていたが、一文無しの今回ばかりは止めることにした。
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「面の皮が······分厚いっ! 」
自宅から店に出勤したジョバンナを待ち構えていたのは、保護したメイドのラクトーラ。
もう二週間は経つが、動かない。オルテリエとシジラに股がる峠の如く、雄大にドッシリと腰を据える。
「ごはん」 机をバンバンと叩き、ラクトーラは朝食を催促する。
「······流石に無駄飯食いに与える食事はこれ以上無い。出ていかないと言うなら、それ相応の代価は払ってもらうぞ。······王宮のメイドだったのであれば給仕は出来るな? 」
「あ」
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「あらあら。可愛い娘ねぇ」
年配の女性客が新しく雇われたメイド服の従業員を見て呟く。
海岸線から少し離れた所にある山間の集落。ジョバンナはここで店を開いている。若者は娯楽と仕事が充実している都市部へ出ていくため、常連客の年齢層は高い。
「海岸で拾った。自立する気が無いようだから『何もしないなら出てって貰う』って脅したら······まぁ······成り行きでね」
まだ少年のジョバンナは、ベテランのマスターの風格をも感じさせる佇まいだ。
店は朝から晩まで開いてる。メインの客層は集落の住人達だが、最近では帝都方面からも食べに来る客が増えてきた。
中には庶民に扮してはいるが、やんごとない身分なのを隠せない気品や所作の者達も立ち寄る。
カランカラン
「邪魔するぞ! 」
穏やかな空間を裂いて割ったのは、一人の男。二十代くらいだろうか。長い黒髪を後ろで束ねた男が入店する。纏っている衣服は、この辺りでは珍しい代物だ。異国の人間であろうか? 腰に細身の長い剣を携えている。
「邪魔······帰れ」
「し、し、しっ辛辣ぅ! 」 と仰々しくリアクションを取る男に、「一応客だ」 とジョバンナはラクトーラに言い聞かせる。
「腰の物騒な物は置け」
「これは某の魂故······! っが! 友の作る糧を食うため······! あいわかった! 」
剣をラクトーラに預けた男は、いつものカウンター席に座る。
「いつもの! 」 っと叫び、腕を組む。常連客の来る時間を把握しているジョバンナは、颯爽と男に『いつもの』定食を出す。
「いただきます」
手を合わせた男はそれまでの豪快な雰囲気とは変わり、静かに定食に口を付けていく。ラクトーラが王宮で見てきた、貴族の嫌味ったらしい食べ方とは真逆の真の高貴さを見た感じだ。これは雇い主となったジョバンナにも言える。彼の食べ方は食材への敬意、そして食材を育て運び調理する全ての過程を尊んでいる気品に溢れたものだ。······と思いながらラクトーラは賄いをボリボリ食べる。
「ごちそうさま」 男は手を合わせて完食の合図を出す。それと同時に「ところで友よ」 と、お小遣いをねだる子供のような表情を浮かべる。
「また『ツケ』か」
「頼む! 金が出来たら返す! 」
期待はしていないが、流石に立て続けにだとバツが悪いとジョバンナは考える。
「ツケ······払うまで······剣、預かる······」
「そんな殺生な! 某の魂だぞ! 」
ラクトーラが男の剣を担保に預かる事にした。「こりゃ良いや」 とジョバンナは大笑いする。
「うーむ······仕方ない。金は作る故に、今暫し待たれよ」
男は店を出る。
ワハハハハ
店内は常連達の笑い声に包まれる。「やるじゃないのさラクトーラちゃん」 「どうせ、ギャンブルで溶かしてるんだから」 「そんな剣売っちまえよ」 とラクトーラを歓迎する声が上がる。
「居場所、見つかって良かったな」
「お前が作ったみたいに言うな······」
客達は孫を見るような暖かい視線で二人を見ていた。
▼▼▼▼
「某の国には寿司と言う料理があるのだ! 」
異国の男は相も変わらず店に来ている。流石にツケは少しずつではあるが払ってはいる。
男の国には寿司と言う生魚を使った料理があるらしいが、オルテリエは実質の内陸のため、魚を生で食べると言う習慣が無い。
「コレにくだらん事を教えないでくれ。客達は生魚を食うと言う習慣が無いんだ。コレの事だ、釣ってきて勝手に作り始めるかもしれん」
「己に釣りの才能が無いのが悔しいのか······? フフフ······」
「はぁ!? 悔しくなど無いが? ウチの看板メニューは肉だが? 」
いつもの夫婦漫才に、常連達はホッコリする。
「僕もいずれはココを独立して、自分の店を出したいな······」
「寝言は寝て言え」
「この前のアレは、魔物の肉を焼かずに食べたような味であったな·····」
ラクトーラは自分の店を出す野望を抱き始めたが、この女に料理の才能は無い。いつか出す店のメニューと称したゲテモノ料理を食わされているのはジョバンナと異国の男なのだ。ジョバンナは食材に罪は無いと完食はするのだが、店に出すとなると断固拒否なのだ。
カランカラン
風を斬るように入店したのは女性騎士であった。背がとても高く、スラッとしたスタイルの美人だ。
「マスターは居られるか? 」
「······ちゅーもん」
「すまない。私はそう言うのじゃないんだ」
「客じゃないなら帰れ······」
店内は大慌てだ。「ラクトーラちゃん! お貴族様になんて口を! 謝りな! 」 と常連のおばあちゃんは言うも、「構わないよ」 と余裕の笑みで常連達を安心させる。
「昼時に来るなと言ったはずだ。客の邪魔になる外に行くぞ。ラクトーラ、しばらく店を頼むぞ」
「フフフ······可愛い玩具を見つけましたね」
女性騎士に言われると、ジョバンナは顔を赤めながら駆け足で外に出る。
ラクトーラはザワザワした心に駆られる。ジョバンナが自分以外の若い女と一緒になるシチュエーションは初めてだからだ。
「ラクトーラちゃん。あの方は帝国最強の騎士団長様だよ。名家のご令嬢でもあるんだ」
「ラクトーラ殿が来られてからは初だな。たまに来るのだよ。お忍びで来る貴族は多いが、公務で堂々と来るのは彼女くらいだ」
常連や異国の男が説明するも、問題はそこでは無い。
そうだ、これは『ヤキモチ』なのだと気付く······
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「あの女······誰? 」
その日の夜。ラクトーラはいてもたっても居られず、ジョバンナに女性騎士の事を問いただした。
「ああ。山間の集落だからな、お忍びで来る貴族の警護のための段取りと周辺の魔物を間引いて欲しいとお願いしただけだ」
「ただの釣り人が、貴族と何であんなに親しげなの? 」
「私は誰に対しても媚びぬ。それだけの事だ。······さて、私は帰る。君もあまり料理に熱中せずに、休みなさい」
カランカラン
答えになってない返答を述べて、ジョバンナは自宅へと帰っていった。
ラクトーラは腑に落ちない点を呑み込めずにいたが、グツグツと音を立てる鍋と変色した食べ物が発しては行けない禍々しい色に焦り火を止めるのであった。
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いつも通りの平穏な日、お昼時。仕事を中断した労働者や隠居したお年寄り達が店に押し寄せる。
都市部で人を多く雇っている大型店でも目が飛び出るような客数を、厨房とホールをそれぞれ一人ずつで捌いていくジョバンナとラクトーラ。
カランカラン
「今満席。待て」
「ああ。大丈夫だよ」 と入店したのは、集落の長を務める中年であった。
働いている現役世代からは『オヤジ』と言う愛称で呼ばれている。
「マスターにコレを渡してくれるかな? 」
オヤジに渡されたのは、一枚のチラシ。
隣国シジラの王都で、料理コンテストが開かれるらしく優勝者には海の主と呼ばれる巨大な魚『タイロ·タツーヨ』が贈られる。あと賞金も出るが、タイロ·タツーヨの価値に比べれば微々たる物だ。
「ラクトーラちゃんが来てから、魚のメニューが増えたからなぁ。集落の皆も、魚に肥えてきてる頃だ。頼めないかい? 」
「アンタに言われるまでも無い。当然参加するさ」
厨房からジョバンナが声を出す。店中が歓喜に沸いた。
巨大魚の保存手段は、こんな小さな集落には無いため、すぐに食べ尽くす事にはなるが構わないのだ。オヤジは集落の笑顔を作りたい。ジョバンナは料理人として、伝説の魚を調理したい。交渉成立だ。
「なんか大事な事を忘れてるような? 」
ラクトーラは故郷に凱旋する事になるが、オルテリエに逃げてきた理由を思い出すことは無かった。
「僕もエントリーして良いかな? 」
店内には静寂が訪れる。客達は顔を青ざめるばかりだ。
「僕の店······持ちたいから······皆に認められる料理を作りたい······」
「焦らなくて良いんじゃない? 」 「そうそう! ココで働きながら、いずれ······ね? 」 客達は慌てて止める。
「安心しろ。ヤバイと思ったら私が辞退させる」
店内はホッと一息といった感じだ。ジョバンナに監督させれば、最悪の事態は防げると。
ガシャアン!
そんな店内の空気を叩き壊すように、荒々しく開く扉。
「友よ! 糧を所望する! 魚が良い! 」
「満席······察しろ······お前も運ぶの手伝え」
ラクトーラに言われ、配膳を手伝う異国の男。
「あれ!? 某の後に来た者に越されてない!? 」
「今までのツケの分だ。お前は残り物だよ」
「某の魚ぁ~! 」
異国の男は嘆きながら、客達に料理を運び続ける。
╴╴╴╴
お昼時が終わり、客達は店を出て午後からの仕事や日常に戻って行く。
「椎茸のソテー定食。お待ち」
「某は魚を所望したんだけど!? でも美味そうだからいただきます! 」
腹ペコの異国の男は椎茸をオカズにライスを流し込む。 「おかわり! 」 一噛みだけで、過酷な労働をした後のガテン系職人達は一気にライス大盛りを平らげる程だ。ラクトーラが来る以前はおかわり無料だったが、彼女は当然のごとく追加料金を設定した。
「ごちそうさまでした! と言うかラクトーラ殿! そろそろ、某の魂である刀を返してくれ! 」
「ギャンブル辞めるまではダメ······あとお前、店終わった後にスシの作り方教えろ」
「あい、わかった!」 と異国の男は声を荒げる。故郷の料理を異国の人間に誉められるのは誰だって嬉しい。
料理コンテストまで、残り数日と迫っていた。
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「皆様! お待たせいたしました! シジラの誇る多くの娯楽に目もくれる事なく、料理コンテストに足を運ばれた皆様! 安心してください! 貴方は今日! 世界一の料理人を目撃する事になるぅ~! 」
「やかましい」
ドガ! っと司会を蹴るラクトーラはコンテストのトップバッターだ。
トップバッターとは聞こえは良いが、言ってしまえば前座だ。名のある料理人達が集まる中で無名のラクトーラは場違いであったのだ。
「蹴るの止めて貰って良い? マジで······それでは、気を取り直して! トップバッターはメイドのラクトーラ! 今大会のテーマは魚料理! 何を出す!? 」
「フフフ······見よ! 東洋の魚料理! 『サシミ』だ! 」
会場は唖然とする。明らかに、人が食べてはいけない色合いの断面をしている。
「言葉も出ないか······フフフン! 流石にスメシ? は用意できなかったから『スシ』は勘弁な······! 」
呆れ返った顔でセカンドバッターのジョバンナが会場に飛び出る。
「一応聞くが、何の魚を使った? 」
「オルテリエ·バスだ······! 恐れ入ったか? 」
「淡水魚じゃねえか! 」 と司会を含め出場した料理人達はズッコケる。
「峠の沼で釣った······! 」
「川で釣れる淡水魚は、寄生中が多くいる······本場の極東でも焼いて食うぞ······つーかオメー、この程度の知識も無い分際で! 自分の店を出したいなんて分不相応な叶わぬ夢! 二度と口にするんじゃねぇえええええええ! 」
「ウウウ······」 目を濡らしながらほっぺを膨らませるラクトーラ。
「ブー! 」 会場は大ブーイングだ。神聖なる料理の祭典を素人に汚されたのだから。
「おいおい! このガキは審査員の先生方に、寄生虫まみれの魚を食わせようとしてたのかよ! ふざけんな! 失格だ! 失格! 」
司会は更に捲し立てた。審査員の大御所シェフ達もカンカンだ。
「待ちたまえ。この娘は私の連れだ。二度と料理はさせんが食材達に罪は無い。良いだろう、淡水魚の底力······見せてやるよ」
「なに言ってんだ? コイツ? 」
ラクトーラの言葉に、会場も頷きたかったが、同時にこうも思ったであろう。「お前が言うな」 と。
しかし、そんな声は何のその。ジョバンナはラクトーラが出した『刺身』のような物に火を通して行く。香ばしい匂いに観客達のお腹がグゥーと鳴り出す。
「お待ち」 と店と変わらない声色で、ジョバンナは審査員達に料理を配膳する。
「何故シジラの港で川魚を食わねばならんのだ!? 」 と審査員の一人は声を荒げるも、目の前のこんがりと焼けた魚には逆らえない。
ジャリッ
別の審査員は食欲に抗えず、皮ごとかぶり付く。
「っ! 」
本当に美味しい物を食べた時、人は何も発せられなくなる。他の審査員達も連れて貪り食う。
一流シェフと言う権威を忘れ、彼らは料理人を志した時の初心に戻る。幼い頃の純粋に美味しい物を食べた時の感動······童心に帰ったような清々しい表情で完食した。
「僕の分は······? 」 とラクトーラに言われ、いつも食べてるだろと返すジョバンナ。審査員の心は掴めても、目の前のじゃじゃ馬を納得させるのは難しいとジョバンナは溜め息を吐いた。
╴╴╴╴
「優勝はジョバンナ! 文句無し! 」 と司会は観客を煽る。
審査員の出した100点満点を後の挑戦者たちは越えられずに、実質一番手と言う不利な状況で逃げ切り、ジョバンナは優勝を遂げた。
「内陸のオルテリエの奴に、俺達シジラのシェフが何で······」 と言う負け惜しみに、ジョバンナは声を上げる。
「我々内陸の料理人は鮮度と言うハンデを負う分、客にどれだけ美味しく食べて貰えるかに全神経を集中させてる。取れ立ての鮮度を自分の手柄のように振る舞う者達に、私が負ける道理は無い」
シジラの料理人達は、何も言い返せず項垂れる。
「お魚! お魚! 優勝賞品の『タイロ·タツーヨ』早く出せ······! 」 と自分が優勝したかのように振る舞うラクトーラ。その時、係員から報告が入る。
「すみません。タイロ·タツーヨが逃げました」
「ハァアアアア!? 」
╴╴╴╴
ラクトーラ達が料理コンテストに挑んでいる頃。港では貴族達による祭事が行われていた。
年に一度、海に祈りを捧げ国の安寧を願う儀式である。執り行うのは大陸の中心、大神殿の教帝。
国と言うものは、大神殿から統治の正当性を認められた血筋が治めることが出来る。そのため、今回の儀式で第二王子エッサーへの王位の継承を教帝に認めさせねばならないのだ。
「くどい」 と教帝はシジラ国王を突き放す。
「何故ですか!? 倪下! 長子シーデジル亡き今、弟のエッサーが王位を継ぐのは当然の事ですぞ! 」
「王太子を殺した下手人は市井の者と申していたな。魔法と言う天使様より授かった偉大な力を、未来に繋ぐのが貴様らの使命であり、民草が汗水垂らして働いた金をむしり取りふんぞり返ってられる理由だ。力を持たぬ民に殺される王族などに誰が従う? 」
「うぅ······」 と国王は情けなく押し黙ってしまう。無力な平民に殺されてしまう王太子の弟など、王に相応しくないとの教帝の判断だ。
「マルノミーヌ。見間違いじゃないか? 周りの貴族に怪しい動きがなかったか、もう一度確かめよう」
「······」 エッサーの言葉に沈黙を貫くしか無いマルノミーヌ。犯人なのだから当然である。
「まぁ。仮に貴族が殺したとしたら王位の簒奪だ。大神殿は絶対に認めぬよ」
「どうなるんだろうな? 」 「流石に平民に殺されたなんて、外聞が悪すぎる」 「大神殿が暫定統治だろうな、王家は終わりだ」 「ボンクラ王のせがれだ、どちらも変わらんさ」 貴族達にとって、だれに付くかは死活問題だ。神殿関係者にハイエナの如くコネクションを作りに行く。
「とりあえず、些細な事は今は良かろう。朕は魚が食べたい」
祈りを捧げる前の会食。大好物の新鮮な魚を食べられるため、教帝はご機嫌だ。
それとは裏腹にこの世の終わりのような顔のシジラ王。
そして、(計略は完璧ですわ) と心の中で勝ち誇るマルノミーヌはニタリと顔を歪める。
マルノミーヌは転生のギフトである、毒魔法を使い教帝の料理に毒を仕込んでいたのだ。
教帝が死ねば、大神殿は跡目争いでシジラに構ってる余裕は無くなり、なし崩し的にエッサーが王位を継承できる。
(頭の固い老害はどの世界にも居るものね) と前世のクソ上司を思い浮かべて、王妃への一歩を踏み出そうとしていた。
ザバァン!
「な······何事だ!? 」
突然に上がる水しぶき。海面を破って現れたのは、伝説の巨大魚であるタイロ·タツーヨであった。教帝は護衛騎士に庇われ退避させられる。
儀式の広場は大混乱に陥る。騎士と兵達が駆け付け、貴族達の避難は完了する。
「マルノミーヌ! 無事か!? 」
「は······はい! 無事ですわ! 」
エッサーもマルノミーヌを庇い、「化け魚め! 俺のマルノミーヌには指一本触れさせんぞ! 」 と勇み立つ。魚だから指は無いんだけどね。
「魚ァアアア! 」
突如として現れた人影。細身の剣を握り、タイロ·タツーヨを一刀両断する。
キシャアアア!
断末魔を上げて、タイロ·タツーヨの命は終わる。
「貴様は! 」 「平民のメイド!? 」 エッサーとマルノミーヌは自分達が陥れた者が目の前に現れ、血の気が全身から引く。
大魚の返り血に染まったメイド服を着た少女は二人の事など眼中に無く、両手を上げて喜ぶ。
「ラクトーラ! 探したぞ! 」
異国の男から奪った剣で、海に帰りたかっただけの魚を殺したメイドの名前を呼ぶ声がする。ジョバンナは大魚が逃げた事を聞かされ会場を飛び出した彼女を追い、ここまで駆け付けた。
「誰だぁ! 貴様らは! 神聖なる儀式の場であるぞぉ! 」
もう儀式どころでは無いがエッサーはラクトーラとジョバンナに威勢よく怒鳴り付ける。
「 っ! 」
しかし、ジョバンナは教帝が食べる予定であった食事を睨みつける。手を握りしめ、身体は怒りで震えていた。
「そこの女。この料理、食べてくれないか? 」
ジョバンナの言葉に「平民風情が口を開くなぁ! 」 とエッサーは怒りを露にする。
「口を慎みなさい。神聖なる儀式をメチャクチャにして······お前達だけでは済ませませんわ。連座で一族皆殺しにしてさしあげますわ」
「話を逸らすな。食べてくれ」
ジョバンナはマルノミーヌの声になど耳を貸さずに、教帝の料理を食べるよう彼女に迫る。
「それは倪下に召し上がっていただく料理ですわ。私が食べられるワケが無いでしょう! 平民風情はそんなこともわからないのかしら? 」
「話を逸らすな。食べろ」
「食べれない理由······あるのか? 」
ラクトーラの言葉に教帝は「まさか! 」 と口を開けて、最悪の想定を行う。
「まさか······朕を······! 」
会場はざわつく。大神殿のトップを暗殺しようとするなど、国が消えてもおかしくない事件だ。
「平民風情がぁ! 貴様に食えと言われて食うわけ無いですわ! 毒を仕込んだのも貴様らだろうが! そのメイドは王族を殺した大罪人ですからね! 倪下も殺そうとするとは······おぞましい! 」
マルノミーヌは冷や汗をポタポタ垂らしながら、空間を切り裂きかねない身振り手振りで弁舌する。
「毒などと、この者達は一言も言っておらぬではないか」
教帝の一言で、疑いはほぼ確信に変わる。
「楽しそうな事をしてるじゃないか」
「あっ! クソ女騎士······! 」
以前、店に来ていた女性騎士が音も立てずに現れる。
「帝国最強の騎士が何故ここに? 」 と貴族達は驚愕する。
「ご報告します。前王太子の前にも、王位継承権のある者達が、全て不審死しております。全員、死の当日は健康そのもので、マルノミーヌと会っていたとの証言も」
「お前······一体······」
女性騎士はラクトーラに向かってウインクをする。
ジョバンナは大義であったと一言。
「そう言えば公爵領でも流行り病でかなり死んでるって······」 「マルノミーヌ様の妹君も確か······」 貴族達のマルノミーヌへの疑いは、完全にクロの認識へと変わる。
「だからどうしたぁ! 状況証拠に過ぎない! 」
エッサーは庇うも、もう終わりだ。物的証拠より、明らかにコイツがやったと思われる醜聞こそが、貴族社会での致命的な傷なのだ。
「早くコイツらを殺せ! 」 と騎士達にエッサーは命令するも、誰も言うことは聞かない。汚物を見る目で睨む騎士も居る。大神殿を敵に回すと言うのは、こう言う事なのだ。
「······その者共を捕らえよ! 倪下を害そうとした天悪だ! 」
心を鬼にし、決断をするシジラ王。エッサーとマルノミーヌは騎士達に捕縛され、連行される。
「離せ! 俺は王だぞ! 」 「私は何もやってない! 証拠が無いのにこんなのおかしい! 」 と二人は叫ぶも、誰も相手にしない。
「ヨハン皇子か。大きくなったな」
教帝の言葉に、貴族達は驚愕する。
「このお方こそが、オルテリエ帝国のヨハン=ナウド皇子である」 女性騎士は自信満々に紹介するが、「もう皇族では無い、護衛も要らないと言うのに」 とジョバンナは文句を垂れる。
「それ程までに、皇族の血と言う者は貴いのだ。貴殿を御旗にして、反乱を起こす輩が出んとは限らんからな」
高貴な血を引くものに、自由は無い。生涯つきまとう血を受け入れつつ生きる他無いのだ。そして、その血を悪用しようとする輩から守るため、そして監視の為に国内最強の騎士が見守っているのだ。
「······と言う訳だから、君の恋敵では無いから安心してくれたまえ、メイドちゃん? 」
「紛らわしい事すんな······カス······」
こうして、シジラ王国で起きた王太子毒殺事件と教帝暗殺未遂事件は、幕を閉じたのであった。
▼▼▼▼
「起きたか······? 」
「へ······平民!? 平民風情が許可無く口を開くなぁ! 」
牢屋で寝ていたマルノミーヌは、ラクトーラに叩き起こされる。
目を覚ませば薄暗い牢屋では無く、満天の星空の輝きで明るい外であった。ザザーッと波が引く音が聞こえる、恐らく浜辺なのだろう。
「平民のアンタとは違って、私は最悪で修道院行きで済むわ。見てなさい······いつか表舞台に返り咲いて、アンタをブッ殺してやるわ! 」
「いや無理······お前は死ぬから······」
突如宣告された死に、マルノミーヌは顔を真っ青にする。
「ふざけるなぁ! 平民風情が······」
「儀式を妨害したから、タイロ·タツーヨは大神殿に没収された······あの教帝絶対自分で食べるだろ······」
「そんな下らない事、知るかぁ! 」 とマルノミーヌは叫ぶも、ラクトーラは表情を変えずに淡々と説明する。死ぬ理由を。
「だから自分で釣る事にした······お前の毒魔法······死にそうになると自動的に毒の防壁が発動されるから、殺すのは難しいらしい······だから、暴れるタイロ·タツーヨにお前をエサにして毒で弱らせる······」
「ふざけるなぁ! 」 と納得しきれないマルノミーヌは怒りの形相だ。何故、高貴なる自分が平民風情に殺されなければならないのか分からなかった。
「お前の妹······地下室で生きてる······何とか一命は取り留めた······公爵家は妹に婿を取らせて家を継がせる事を決めた······そこで邪魔なのは、お前······家の醜聞だ······本物は流行り病で死んで、入れ替わられてた筋書きにするらしい······って事で、お前の親父に頼まれた」
「なんで······あのクソ女が······生きてるのよ······何で私の人生こうも上手く行かないの······」
「知らね······その家柄で失敗するなんてよっぽどの無能なんだな······」 と言い渡し、ラクトーラは夜の海にマルノミーヌを投げ込む。タイロ·タツーヨが横切るタイミングで、奴は食い付く。
「イヤアアアア! イヤイヤイヤイタイイタイ! グボボボボ! お願い! 許してェ! 」
ギジャアアアアア!
食われたマルノミーヌと毒を口から飲み込んだタイロ·タツーヨの絶叫が木霊する。
タイロ·タツーヨは泡を吹き、苦しみながら死んだ。
「毒は······浄化魔法かけて火ぃ通せば大丈夫だろ······」
「お願い······助け······て······」
「極東だと······介錯だっけか······食い逃げ野郎言ってた······楽にしてやる」
ラクトーラは剣を振り下ろし、マルノミーヌの苦しみを終わらせる······
命は、儚く散る。だからこそ美しいのかもしれない。
▼▼▼▼
結局タイロ·タツーヨを運ぶ手段を考えていなかったラクトーラは、翌朝にシジラの警備兵に見つかり泳いでオルテリエまで戻る事に。昼、ジョバンナに磯で釣り上げられる。
「また君は下らない事を······」
「魚食べたかったよ······」 と涙目になるラクトーラの頭にポンッと手を乗せるジョバンナ。
「コンテストの時、君に料理人は向いてないと言ったな? 」
「もっと酷い事······言われた······」
「ハハハ。自分の店なんか出させないよ······ずっと側に居てくれないだろうか? 君無しの人生など考えられない······」
「······う、うん······」
ジョバンナは顔を紅潮させるラクトーラを抱きしめ、口付けをする。
いつもは荒れている磯は、今日は穏やかだ。二人の少年少女の門出を祝うかのように······
fin
╴╴╴╴
※※※※
いつもの昼時。人々で賑わう店。
集落の主は、新聞を広げて食後の珈琲を飲んでいた。
「はへー。シジラでの教帝暗殺未遂事件。主犯の第二王子エッサーは獄中で急死、婚約者の公爵令嬢マルノミーヌは領内の流行り病で死んでて、成り代わった偽物が唆したと······国王は退位し公爵家が王家にスライド、マルノミーヌの妹が教帝の三男と結婚して王位か······大神殿の傀儡だな、こりゃ」
「オヤジ。悪いな、魚は貰えなかった」
「なーに。お前さんが大陸一の料理人に輝いた事の方が遥かに嬉しいよ、俺達は」
カランカラン
「友よ! 糧を頼む! って言うかラクトーラ殿、いい加減に刀返してくれない? 」
「君が極東の剣豪か!? 私は騎士団長を努める者だが、君も騎士団に入ろう! 」
「えっ? 結構ですが······? 某は友の糧を······」
「諦めろ······お前の借金はあの女に肩代わりされてる······逃げ場は無い·····」
「助けてくれええええええ!」
「共に汗を流そうではないか! 」
女騎士に連行され、食い逃げ野郎は騎士団に入らされる事に。
「そういえばラクトーラ。タイロ·タツーヨはどうなった? 公爵家の情報で釣り場を教えてもらったと聞いたが? 」
「シジラ兵に見つかって台無しだ······」
「まぁ、伝説の大魚より、君が釣ってくる魚こそが、私にとっては天よりの晩餐に等しいけどね」
「まさに、内陸の人魚姫とは僕の事だな······! 」
「ラクトーラちゃんは人魚すら釣りそうで怖いけどね」
食堂は、今日も笑いのスパイスで満たされるのであった。
またね
タイロ·タツーヨの二匹目も教帝が美味しくいただいたが?
ジョバンナは帝国の末席の皇子だが、それでも皇族と言う血は何物にも代えられないんだが?
シジラ王国は馬鹿兄弟以外にも王位継承権ある奴はたくさん居たが、マルノミーヌが皆殺しにしてしまった。
マルノミーヌ妹は性格はあんまり良くないけど、姉より貴族としてはマトモ。
作者が好きな寿司はチーズハンバーグ寿司です←聞いてない
女騎士の名前はランギスで身長は185cm
食い逃げ野郎は極東での決闘で負けて逃げてきた。




