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「今更対策しても、もう遅い♡」と毎月ざまぁをしてくる花粉ちゃん  作者: 田中田田中


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2/12

2月 保健委員ヒノキの先回り予防指導♡

 二月。

 僕はドラッグストアで薬を買った。


 買っただけで、安心してしまった。



 ◆◆◆◆◆



 そして翌日、保健室に呼び出された。


点鼻(てんび)くん。 座りなさい」


 保健委員のヒノキさんは、白衣の袖をきっちり整えたまま、僕を見下ろしていた。


 僕はその目に弱い。

 怒られているのに、ちゃんと見てもらえている感じがしてしまうから。


「薬、買ったんでしょう?」


「は、はい……買いましたよ、きちんと!」


「飲んだ?」


「ま……まだです」


「遅い!」


 即答だった。

 ヒノキさんは机の上に、僕が昨日買ったのと同じ薬箱を置く。


「薬を買うだけじゃ、ダメ。 飲むなら『今』、でしょう?」


 ヒノキさんはただ淡々(たんたん)と僕に怒っているだけのはずなのに。

 僕はそのあまり動かない、みずみずしい唇がかえって魅力的で、思わず目を奪われてしまっていた。


「す……すみません」


 話半分になってしまい、咄嗟にいつもの癖のように謝る僕。


「謝る前に、水」


 差し出されたコップを受け取る。


 言われるがまま薬を飲む僕を、ヒノキさんはじっと見ていた。


 視線が近い。


「んくっ、んくっ……ぷはぁ」


 飲み込むだけで緊張する。


「目、赤いわね」


「その、少しかゆくて……」


「目薬、使う?」


「だ、大丈夫です!」


 別に他人の使った目薬を借りるなんて、変なことじゃないはずなのに。

 でもなぜかこの時の僕は、イケナイことのように感じてしまっていた。


 そう、まるでヒノキさんが口をつけたペットボトルに口をつけるような――


「大丈夫じゃない顔してる」


 ヒノキさんは僕の顎を軽く持ち上げた。


 距離が一気に縮む。

 鼻先が触れそうなくらい近い。


「まばたき、しない」


「えっ、あ、はい……」


 まるで淡々とキスを迫るかのように近づいてくる顔は、僕の瞳をまっすぐと覗いていた。


 そしてやがて、目薬の先が見える。

 冷たい一滴が落ちてくる直前。


「……ひ、ひゃぁっ!」


 目薬のあの染みる感覚がやってくることが耐えられず、反射的にびくっと身体が跳ねてしまったのだ。

 そのせいで目薬は僕の目ではなく、額に落ちた。


「…………」


「ご、ごめんなさい……!」


 僕たちしかいない保健室に、静寂が訪れる。


 でもヒノキさんは怒鳴らなかった。

 ため息をついて、ティッシュで僕の額を拭いた。


「本当に、どんくさい」


「うぅっ……はい……」


「でも、放っておくともっと悪くなるから、面倒は見る」


 その言い方はずるい。

 僕みたいな弱い人間は、それだけで救われてしまう。


「今更『自分でなんとかする』って言っても、もう遅い。 今日は私の指示に従いなさい」


 僕は小さく「はい」と返した。

 正直、少しだけうれしかったのは、薬が効いたせいじゃなかったと思う。

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