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第八十九話『和解……?』

<>の中はルイーニャー語です。


「<ロジェ、俺は君が彼女に嘘をついているのかと思った。……でも、その様子だと、話したんだ。>」


黒鉄は覚悟を決めたように、こちらを見るロジェを見据え、言った。ロジェはそのことにうなづきながら答える。


「<私は、話すのが怖かった。……あなたに言えることではない。あなたには、私から何を話せばいいか、わからない。>」


そううなだれるロジェを見た黒鉄は少しため息をついたあと、ロジェに向かって言った。


「<何も話さなくていい。俺は、謝罪もいらないと思っている。……自身の秘密を人に言うのは、気が引けるだろう。別に怒っているわけではない。……俺は、君の研究に取り組む態度で、全て分かる。>」


ロジェがその言葉に少し顔をあげる。


「<君が研究に取り組んでいたとき、寝る間も惜しんで研究をしていた。鼻血を出しても、倒れても研究の手を止めることはしなかった。……アホだと思った。>」


「<……アホ?>」


「<アホだろ。馬鹿か?>」


「<でも、私は、あなたに追いつけなかった。……知識も実力も、私は結局”戦争”を知ることができなかった。>」


その言葉に、さらに黒鉄はため息をつく。


「<君がリンという、少女と特別な信頼関係があるのだろう?>」


「<……それが?>」


「<なぜ、研究以外では察しが悪いのか全く理解できない。……君が作霖人に似た少女といたこと、それだけで十分だ。>」


ロジェは首を傾げる。黒鉄は再びため息をつき、訝しげな表情を浮かべ、


「<他のポリットの人間は、作霖の人間と見ただけで、攻撃的になる。君はそれをしなかったんだろう?……まあ、君は元々そうだったが。>」


ロジェは本格的に黒鉄の言っていることが分からなかった。その様子を見た黒鉄は諦めたかのように言った。


「<正直言って、ポリットのことは嫌いだ。君のことなんて、遺伝子レベルで嫌いだった。……でも、君の姿勢を見る限り、そんなことはないと思った。……ジパングの研究を続けているんだな。彼女はジパング語を話せるのか。>」


「<……どうして、知ってるの?リンは、カタルーニャ語を知らない。>」


「<ブリタニアン語を彼女は話せる。それで聞いた。……追放されてもなお、研究を続けているんだな。君にジパングの資料を渡したかいがあった。>」


ロジェは困惑を隠せなかった。ロジェにとって、ジパングの資料を渡したのが黒鉄であると知らなかったし、凛がブリタニアン語を話せるなんてことも知らなかった。


「<え、どういう?>」


「<言わないでくれって言ったんだ。君が学校から追放されたとき、俺は違うと思った。国籍なんかで追放されるべきじゃないって。学問は国籍に関わらず、すべての人間に共通して与えられるものだ。……もちろん地位にもよらず。>」


ロジェは口をつぐんで、黒鉄の話を聞いた。


「<君は作霖には原則として、ポリット人だから入国禁止だ。……君はジパングの研究をしているが、その資料がなかなか手に入らなかったのは、作霖にたくさんのジパングの資料があるからだ。>」


「<持ち出したの?>」


「<ああ、君の研究に役に立つと思ったから。協力をしてもらった。……そして君が旅立つ時、ジパングの資料を送った。それだけの話だ。>」


「<なぜ、そこまでするの?>」


「<君の研究理念に賛同するものがあるから。>」


黒鉄がそう真剣に言うのに対し、ロジェは目を見開いた。ロジェは黒鉄は少なくとも私のことを恨んでいるのだろうと思っていた。それに対して、ロジェは特に言うこともなかった。ロジェが戦争による利益のお金で学校での研究活動に励むことができたのは明らかだと、ロジェ自身も確信していたからである。


「<……それと、>」


黒鉄がそう言ったのに対し、ロジェはまだあるのかと驚く。


「<君が、父親を殴ったと聞いた時に、少し……その、すごいと思った。>」


その言葉に、ロジェは顔を真っ赤にする。


「<なんで、そのことを……!>」


ロジェが古代言語学に進んだのは、ロジェの父親の意向であったが、ロジェが、全く父親の意向とは反する言語学の研究をしていたことが発覚し、里帰りの時に父親と殴り合いになったのは事実である。ロジェはそのことがきっかけで、実家とは決別しているが、まさかそのことが黒鉄に知られているとは全く思わなかった。


それに、親を殴ったという事実はロジェの中で一種の黒歴史のようになっていた。


「<……カジェタノが言っていたが。>」


(<カジェ、言ったな。>)


ロジェは少し、カジェタノに恨みを心の中で吐いた。


こっそりと、凛とカジェタノとブレンダは二人の会話を聞いていた。凛は二人がなんの会話をしているかは全くと言っていいほど分からなかったが、二人の雰囲気が穏やかになっていることを感じ取り、少し安心していたが、隣のカジェタノは冷や汗をかいていた。


(<ロジェに殺されたら、どうしよう……。絶対に言うなって言われてたんだよな。>)


カジェタノは一人で、ここから逃げ出そうとしていたが、ブレンダがカジェタノの襟を掴んで、止めていた。

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