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第八十八話『信念』

ロジェさんは私からもらったハンカチで軽く涙を拭ったが、それ以上涙を見せることはなかった。そして私に言った。


「戦争は嫌い。だから、研究する。……戦争は、私たちの、未来?社会?のために、大事、言う人いる、けど、私は、戦争で、無くなった昔、があるなら、そこから、未来のため?だけのことを、学べばいいと思う。……難しい、伝えるの。」


そう言って、ロジェさんは私に微笑んだ。そして、ロジェさんは続ける。


「えっと、つまり、その、戦争が生み出す、ものを、先に、作れば、戦争の、必要ない?ってこと。」


ロジェさんの言っていることはなんとなく分かるのでうなづく。確か、戦争によって科学技術が進歩したと言う話は耳にしたことがある。私たちの生活に欠かせない、コンピュータやインターネットもそうだったと思う。日本人にとってすれば、原子爆弾が最も思い浮かぶかもしれない。今の原子力発電所で使われているものとなんら原理は変わらなかった気がする。


そんなことを考えながら、ロジェさんの話を聞いていた。さらにロジェさんは言った。


「自由も、その一つ。」


自由。考えたことがなかった。でも、言われてみればそうなのかもしれない。女性の権利拡大が一番わかりやすいのだろう。確か、戦争で工場などの軍事施設での活躍から、参政権をもらえたみたいな話があったような気がする。


ロジェさんの話を聞くと、ロジェさんの本気度が伝わってくる。なぜロジェさんが研究をしているのか本筋が見えた気がする。


(私もこんなふうに情熱のこもった研究をしてみたい……!)


そんなことを考えていると、受験のことをふと思い出す。


(私にもそんなふうにすごく強い興味があるものがあったけど、結局、その後の就職のことを見ちゃって、大学も国公立の中の知名度で選ぼうとしてたし、研究のこと、諦めかけてたかもしれない。)


「ロジェさんは本当にすごいです……。」


急にロジェさんが遠くに離れた感じもする。前々からすごい人だと思っていたけれど、もっとすごい人だ。信念が見えたからこそ、私とは全く違う存在のように思えてくる。ロジェさんは私に言った。


「そんなことない。だって、私は、先生に言われる、まで、研究する、続ける、こと思ってなかった。」


「そうだったんですか?」


その私の意外そうな声かけにロジェさんはうなづく。


「私は、ずっと、何かを、探している、気がした。でも、それを教えてくれた、のがアレック先生。先生は私のこと、『何も知らない、子供』って言った。だから、もっと、世界を知りなさい、って。だから、私は、研究した。そしたら、私の知らないこと、たくさんあった。それが、楽しかった。… …まだ、形には、なってない。けど、私は、いつか、世界を平和に、近づける、そんな、研究、をしたい。」


違うと否定していたもののやはり、ロジェさんはすごい人だ。でも、私はそんなロジェさんに劣等感を感じるどころか、今はなぜかさらにロジェさんのことを言語で支えられるかもしれないと考えた。今私は、ロジェさんと同じように、ジパングの研究の手伝いを続けていいのだろうか。私は少し不安になりながらもロジェさんに聞いた。


「……私は、まだそこまで、信念、えっと、叶えたいものがないのに、ロジェさんと一緒にジパングのこと研究していいんでしょうか。ロジェさんの助手として、隣に立ち続けてもいいですか……?」


ロジェさんは少し意外そうに目を見開く。しかし、そのあとすぐに笑顔になり、


「もちろん!」


とうなづいた。


 図書館の方へと戻ると、黒鉄さんは大きな辞書のようなものを広げながら、本を読んでいた。とても分厚い本であった。私たちが目の前にくると、黒鉄さんは私たちに目線を向けた。そして、ロジェさんに声をかける。


また先ほどのような重圧感のあるような感じになってしまうのではないかと冷や汗を流していると、黒鉄さんはロジェさんに、


「roje, ****、rinn,*****?」


と言った。先ほどとは違い、ロジェさんのことをロジェ・ナッシェードとは呼ばなかった。ロジェさんはそのことに対してか、問いかけに対してかは分からないが少し動揺した顔を見せたあと、黒鉄さんに向けて言った。


「**、****。」


その言葉を聞いた黒鉄さんは少し、ロジェさんことのことを見た後、私の方へと目線を向けた。そして英語で私に伝える。


I want to (私は、ロジェ)have time(と話す時間) to talk wi(が欲しい)th roje.」


また一人になるのだろうかと不安になるが、扉の方へと視線を向けると先ほどまではいなかったカジェタノさんとブレンダさんの姿が見えた。二人して手を振っている。私はその二人のことを見て言った。


Of course(もちろん)!」


その言葉に、黒鉄さんは納得したようにうなづく。ロジェさんはよく分かっていなさそうであったが、私が廊下の方へ行ったのを見て、少し悲しそうな顔をしながらも、黒鉄さんの方へと向き合った。

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