第七十九話『朝ごはん』
ロジェさんとカジェタノさんの何か準備をしている音で目が覚める。結局、ジェラートを食べた後に激しい眠気に襲われ、ロジェさんとカジェタノさんに許可をとり、先に眠らせてもらった。いくら蒸気機関車の移動中に寝ていたとしても、疲れは溜まっていたらしい。船の中で揺れていたとしても、横になって寝れたのは久しぶりで深い眠りについてしまったようだ。
二段ベットの下の方で眠らせてもらった。部屋が狭いため、圧迫感を感じるが、私にはむしろ広すぎず、安心して眠ることができた。
二段ベットについているカーテンを開けて、顔を出すと、ロジェさんとカジェタノさんは二人ともすでに準備が終わっているようだった。すでにスーツを着ており、降りる準備はできているようだった。
「おはよう。リン。」
「お、はよう。」
「はい!おはようございます!」
というと二人は微笑んでくれた。昨日買った服を整理して、新しい服を取り出す。もし、今日ロジェさんの通っていた学校に行くことになるのであれば、ワンピースみたいな浮ついた服装はよくないだろう。そう思い、カジェタノさんの選んだ服ではなく、ロジェさんの選んだ服に身を通す。
二人は私が着替えている間、朝ごはんを見てくると言って、外の方へと出ていってくれた。
ロジェさんの選んだ服は比較的、大人らしく落ち着いた印象の服が多い。軽くコートのような上着を羽織り、そこにロジェさんからもらったブローチをつければ完成である。着替え終わり、ロジェさんたちをベットに座って待った。
そして、扉を叩く音がするので、ドアを開けると、ロジェさんが立っていた。
「朝ごはん、食べ、よう。」
と言ったので、私は
「はい!」
と言って、船の個室から出る。そして、廊下を移動し、大きなレストランのようなところへ着いた。こんな豪華なレストランで食事するのだろうかと思い、あたりを見渡す。すると、カジェタノさんがこちらに向かって手を振っているのが見えた。
ロジェさんが手を振り返したので、私も手を振りかえす。そして、カジェタノさんの元へと向かった。
テーブルは円を描いたような形のもので、白色のテーブルクロスがついている。その横にフォークやスプーンなどが並べられており、高級レストランでしか見ないものだと思いながら、恐る恐る席に座る。
(緊張する……!)
と思っていると、ロジェさんが笑って、
「大丈夫。別に、ルールとか、ない。」
と言った。その言葉に少しホッとするが、ロジェさんにとってはそんなにないかもしれないが、私のように一般庶民には知らない常識のようなものがあるのではないかと少し怖くもなった。
テーブルの端の方に木の板でできた何かが置かれている。文字が書いてあるようだった。
(メニュー表かな……?)
そう思い手にとってみるが案の定全くわからない。ロジェさんに目で助けを求めると、ロジェさんは
「一個目の料理、パンと、ベーコンと卵の焼いたもの、サラダに、じゃがいものスープ。二個目の料理、えっと、そば粉の焼いたのもの……わかる?」
「はい……多分、ガレット?ですかね……。」
「ガレット?とサラダと……」
と上から順番に説明をしてくれた。カジェタノさんは指を差して、これがおすすめと言わんばかりに指をさしている。
「これですか……?」
というと、「**!」と言いながら、カジェタノさんは笑顔でうなづいた。ロジェさんが、
「トマト、バジルを上に、乗せた、パン?、に揚げた……えっと、チューレ……説明、難しい。にあたたかい、チョコレート。」
と説明していたものだ。
「じゃあ、これにします!」
というと、ロジェさんは笑顔でうなづいた。そして、店員さんを呼び、注文を言ってくれた。まだ緊張している私にロジェさんは声をかける。
「大丈夫。ここは、夜は、とても、高い場所。だけど、朝は、普通のお店。」
と言った。周りを見ると、確かにみんなラフにおしゃべりをしているかもしれない。それに、サンドウィッチを食べながら、トランプをしている人もいた。
「そうなんですね……。ありがとうございます!もう、大丈夫です!」
というとロジェさんは微笑んで
「無理、しないで。」
と言った。
しばらく待っていると、料理が出てきた。ロジェさんは一番最初に言った朝食を、カジェタノさんはハムとチーズを挟んだクロワッサンのようなものを食べていた。
私は目の前に出てきた料理を見てみる。トマトとバジルが乗ったバゲットが二切れ、それにチュロスと思われるものとホットチョコレートのようなものが一緒に出てきた。
「いただきます。」
と手を合わせ、バゲットから食べてみる。バゲットに乗ったトマトが思ったよりもみずみずしくて驚いた。トマトとバジルの組み合わせはよくみるがやっぱり美味しい。おすすめしてくれたカジェタノさんの方をみると、不安そうに私の方を見ているので、美味しいですと言わんばかりに笑顔で、首を縦にふるとカジェタノさんは嬉しそうに微笑んだ。
チュロスのことはここではチューレというのだろうか。食べてみると思った以上に甘さは控えめであり、朝食として重くなく美味しい。ホットチョコレートもチョコをとかしたものとまではいかないが、飲み物よりもサラサラとはしていないので、よく絡めることができる。ちょっと苦めのチョコがチューレと合っていてとても美味しい。
こんなに美味しいものがあるのかと感動していると、カジェタノさんは嬉しそうに、ロジェさんは少し驚いたように私の方を見ていた。
「とっても、美味しいです!」
というと、ロジェさんは笑顔で
「よかった。」
と言った。




