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第七十話『駅』

 「***。」


馬車の運転手が気だるそうにそうロジェさんに話しかけ、ロジェさんが、


「***。*******。」


と言ったところで馬車が走り始めた。馬車は思ったよりも揺れ、振動が伝わってくる。ロジェさんとカジェタノさんに挟まるような形で乗ってしまったが、私の位置は本当にここで良かったのだろうかと思うけれども、二人とも何も言わないので大丈夫なのだろう。ロジェさんは私に


「2時間ぐらいで、駅に、着くと、思う。」


と言った。


「駅ですか?」


そう聞くと、ロジェさんは


「バルレッドに、行くまで、船と電車、に乗る。」


と答えた。


「電車ですか?」


「うん、知ってる?」


「はい、とてもよく。」


電車は高校の登校時に使っているのでよく知っているが、この世界にはもうすでに電車が存在しているのだろうか。しかも船で移動するとなると、島国とかってことなのだろうか。


「船に乗るんですね。」


そういうと、ロジェさんはうなづいた。そして、ロジェさんは


「ここから、バルレッドまで、二日かかる。」


「二日もするんですか!」


昔の技術ではそうなのだろう。まさかそこまでかかるとは思っていなかった。二日もあれば、現代の技術であれば、飛行機でどこにでも行けることができるだろう。馬車での移動も初めてだが、そんなに長いこと移動する経験も初めての経験になりそうだ。そのことに若干の不安とワクワクを感じる。


その会話をずっと一人で聞いていたカジェタノさんが、不安そうに口をとんがらせて、私の方に体重を預けてきた。


「roje, rinn ! **!***、****!」


と文句のようなものを言っていた。先ほどから日本語で会話をしているため、つまらなくなったのだろう。私もカジェタノさんと会話したい気持ちは山々なのだが、会話どころか本当に何も聞き取れないので、困ってしまった。ロジェさんは、私の後ろから手を回し、カジェタノさんのことを私から引き剥がそうとしていた。ロジェさんはカジェタノさんに


「**!******。」


と私を離すように言っているようだった。私はロジェさんとの距離がとても近くなりびっくりして放心状態になっていた。


(近い……!)


顔を赤くしていると、カジェタノさんとロジェさんが言い合いをしてないと思い、二人の方を見ると、ロジェさんもカジェタノさんも驚いた表情をしながら、こっちを見ていることに気づいて、さらに恥ずかしくなった。ロジェさんは私の後ろに回していた手を離して私とは反対方向を向いてしまった。カジェタノさんはそんな私たちを見てニヤニヤしている。


(楽しんでいる……!)


カジェタノさんはおそらく私がロジェさんのことが好きだということを気づいているのだろうと悟った。


 しばらく乗っていると、馬車が止まった。いつの間に2時間も経っていたのだろう。運転手の方が


「**。******。」


とぶっきらぼうに言った。ロジェさんは


「******。」


と返した。ありがとうの意味なのだろうか。狭い車内なので、降りる時にはカジェタノさんが必然的に先になった。カジェタノさんが先に降り、私に


「**!******、rinn!」


と言って、降りる際に手を貸してくれた。ロジェさんはすんなり降りたので、申し訳ない気持ちになった。


「リン、あれが、駅。」


と言ってロジェさんが指を指す方向には大きな建物が建っていた。石でできているであろうその白色の壁が光を放っている。東京駅に似た作りになっているように感じた。大きな表面玄関の上の方に時計が飾られており、蝶のように綺麗な生物の彫刻が何個か飾られていた。さらに周りの人たちも貴族というような格好をしている人が多く、ロジェさんやカジェタノさんみたいにスーツで身を包んだ人やとても綺麗なドレスを着た人、燕尾服のようなものを着た人などがいた。


少し怖くなったが、ロジェさんが、


「行こう。」


と言って、一緒に横で歩いてくれる。カジェタノさんも私の横に立ってくれた。重いトランクを持って駅の方まで向かう。ロジェさんがチケットを買ってくるということだったので、カジェタノさんと二人で駅の中の椅子に座って待っていることになった。カジェタノさんは


「**、*****!」


と上の方を指さして、私に見て欲しいと言わんばかりに主張をしてくる。天井の方を見ると、綺麗な絵が描かれていた。世界史の教科書で見るような絵に思わず驚いてしまう。あんな高い天井にどうやって描いたのだろうか。私が目を輝かせているのを見てカジェタノさんは笑っていた。


「**!******!」


と言って、カジェタノさんはさらに駅に描かれている他の絵も指で示してくれた。カジェタノさんのおかげで少し怖かったのが和らいだ気がした。

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