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第六十九話『笑い』

 ロジェさんのところまで追いつくと、ロジェさんはその騒がしい足音に気づいたのかゆっくりとこちらに振り向いた。ロジェさんは後ろから早足でこちらに迫ってくる私たちにびっくりしたように目を丸くしたあと、


「ごめんね。早く、離れたい、だったから……。」


と謝ってきた。やはり、明らかに早く離れたそうな雰囲気は出していたものの少し罪悪感を感じていたのだろうか。少し悲しそうな顔をしている。カジェタノさんはそんなロジェさんの肩を叩きながら、笑顔でありながらも、優しく、どこか慰める様な声色で


「****?**、****!」


と言った。ロジェさんはまだ眉を顰め、真剣に考えているように見えた。カジェタノさんは少し困ったような表情をしていた。私も何か言った方がいいのだろうかと思い、懸命に言葉を考える。


(戦争のことで罪悪感があっても、逃げることは悪くありません!はなんか感じ良くないというか何も考えていないような気がするし、落ち込まないで!みたいなのとか大丈夫ですよ!みたいなのは何が?みたいな感じだし、何かロジェさんを安心させれるような声掛けができたらいいけれど……)


ロジェさんが全く浮かない表情から変化がないので、どうしたものだろうかとさらに真剣に考える。


「ロジェさん!」


というとロジェさんは笑顔で


「どうしたの?」


と返してきた。その笑顔がいつものロジェさんの笑顔ではなく、作られた笑顔だとすぐに気づいた。


(ロジェさん、すごい無理してる……)


親の関係がやはりロジェさんの中ではとても責任が重いものなのだろうか。


「ロジェさん、大丈夫です。きっと、街の人たちは優しいから。ティレが助けてくれます!」


私はなんてことを口走ったのだろうかと思った。街の人たちは優しいと思ったのは事実ではあるけれども、ティレが助けてくれるなんてこと言ってもロジェさんは安心しないかもしれない。


しかし、ロジェさんの反応は全く違ったものだった。ロジェさんはその言葉に一瞬キョトンと首を傾げた後、思いっきり笑った。こんなに笑ったロジェさんは初めて見たと言うぐらい笑っている。逆にこちらの方が困惑してしまった。カジェタノさんもまるでこの世のものではないものを見るような目でロジェさんを見ており、私の方を見て迫真の表情で


「rinn!***、******?」


と言った。何を言っているのかは分からないが、「何を言ったの?」ぐらいの勢いで聞いてきているのは分かった。学生時代のロジェさんもそこまで笑わなかったのだろう。ロジェさんは笑いすぎて、少し目に涙を浮かべ、その涙を胸ポケットにしまってあるハンカチで拭いた。そして私の方を見て


「そうだね。深く考えすぎ、た、かも、しれない。ありがとう、リン。ティレは多分、守る、と思う。モリ・ハルドはとても、いい、国だから。」


と言った。ロジェさんが笑顔になったのであれば、それでいいだろうか。私も笑顔になった。その会話がわからないカジェタノさんだけがその場の状況を理解できずに、なぜ笑っているのかわからないという表情をした。ロジェさんが、そんなカジェタノさんに


「**、*****。」


と声をかけたら、カジェタノさんも微笑んだ。


 しばらく歩くと、荷台にたくさんの荷物を積んだ馬車が点在していた。ロジェさんはしばらくその馬車を眺めた後、その一人の人に声をかける。


「tire morke.」


と言ったが、その人はわからないというように首を傾げた。


「****?」


ロジェさんがさらに声をかけると、その男の人は理解したかのように、


「**、*****!」


と言った。ロジェさんたちが話している言語とはまた違った感じの言語だ。カジェタノさんがそのロジェさんと男の会話に混ざっていないところを見ると余計にそう感じる。そしてロジェさんがその男とある程度話した後、その男の人は荷台の方へと行ってしまった。よく見れば、この馬車はさほど荷物を積んでいない。


その馬車は上に布がアーチ状についているようなものであった。前輪は小さく、後輪がとても大きかった。ロジェさんが私に


「この馬車で少し移動して、いいことに、なった、から。乗って?」


と言った。どうやら交渉をしていたらしい。


(ヒッチハイクみたいな感じだ……)


私はそんなことができるのかと驚いた。乗せてくれる男の人はとても親切なのだろう。そう思って、男の人の顔をよく見ると、髭面で眉が太く、少し怖いと感じてしまった。顔で判断してはいけないのだと改めて感じるのであった。


ロジェさんが先の乗り、ロジェさんが私の方へと手を伸ばす。乗るときに若干の足場はあるが、思ったよりも高く驚いてしまった。ロジェさんの手を取ると、ロジェさんが私のタイミングに合わせて、馬車の方へと引き上げてくれた。カジェタノさんはすんなりと馬車に乗った。ロジェさんもカジェタノさんも足が長いと馬車に乗った二人の空間に余裕がないのを見てそう思った。

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