第六話『ジパングについて』
ロジェさん曰く、今の時間は朝はやく、この後もうしばらく経ってから、お店が開くらしかったので、手掛かりが欲しかった私は、ロジェさんに質問をすることにした。
「ロジェさん、私以外に、古代の人が来たことはありますか?」
ロジェさんは首を横に振った。
「リンが、初めて。」
やはり、そのようなことは起こったことはないらしい。元の世界に戻るためには、手がかりをどのように見つければいいのかについてはおそらく、他の人に聞いても見つかりそうにはない。元の森の中に戻ってみるのが良いのか、それとも文献等で調べてみるか、など色々なことを考えてみる。
ロジェさんは真剣に悩んでいる私を見て、
「帰る。焦る、大丈夫。手伝う。」
と言ってくれた。そして、
「ジパングの、本、私が、すべて、持っている。だから、服、買う、後、見る?」
と提案してくれたため、全力でうなづいた。
「ありがとうございます!」
ロジェさんは本当にジパング研究について一人で行っているらしい。どうやら3階は全て書庫になっているらしく、おびただしい文献の量があるのかと思えば、ジパングの資料は本当に少なく1000冊ほどしかないらしい。1000冊と聞くと非常に多く感じるが、他の古代文献は10万で少ない方らしいので確かに少ないのだなぁと思う。
ロジェさんはジパングについて分かることについてたくさん教えてくれた。ロジェさんは説明するのを難しそうにしていたので、多分こういうことを言いたいのかなと思ったところに関しては、ロジェさんにジパング語ではこういうと思うと言いながら話すと、ロジェさんはみるみるうちにジパング語を覚えっていった。らしく、すぐに使っていた。
ーさすが、研究者…
などと考えていた。ジパングについて分かったのはたくさんあったが、主要な部分に関してはこんなところだろうと頭の中で整理した。
- ジパングの文献については少なく、探すのに旅をしていて、各国から集めたこと
- ジパングは4000年前に存在したとされるが、具体的には分からないこと
- ジパングは閉鎖的な国で他国の文献からジパングの記述が出てくることは珍しいこと
- 他の古代の国々とも同じだが、たくさんのロストテクノロジー的なものを持っていること
- 古代の国々は全て戦争によって滅んだこと
など。戦争のよって滅んだことを聞いた時には私はびっくりして、目をまんまるにしていたと思う。ロジェさんはそんな私を見て、
「戦争は、すべて、奪う。人、すべてが、戦争、原因、亡くなる。でも、まだ、人、生きる。」
というとんでもなく、びっくりするような発言をしていて、耳を疑った。おそらくこの世界は、戦争で一旦、人類が全て滅んだあと、また何らかの形で文明を再建した姿なのだろう。そうしたら、私が違和感を持っていたものが、何となく辻褄が合う気がした。
そして同時に、日本もそうなるのかという、虚しさが湧いてくるのだった。それと同時にこの話を私が聞いて良かったのかなどと思ってしまった。
しかし、研究について話すロジェさんは本当に生き生きとしていて、研究が好きなことが身に染みてこちらに伝わってくる。こんなに熱心にできるものがあるってすごいなと尊敬の念が湧いてきた。それと同時に自分と比較をしてしまう。
しばらくすると、窓から入ってくる太陽の角度が、上に上がってきた。ロジェさんは2階に上がると昨日来ていたコートともう一つ毛糸で作られているであろうポンチョのようなものを持ってきた。ロジェさんはポンチョを私に渡してくると、
「着る?」
と言ってきたため、「ありがとうございます」と言って受け取った。ポンチョは上からかぶるものらしく、上から被り頭を出すと、とても暖かった。ロジェさんは、私に思い出したように言ってきた。
「リン。作霖の人、似てる。気をつけて。」
「作霖ですか?」
「作霖、今、ポリット、戦争、する。」
「ポリットはこの今いる国ですか?」
と質問するとロジェさんは複雑そうな顔をした。
「ここは、モリ・ハルド。ポリットの、一部。」
多分、ソ連時代のウクライナ的な立ち位置なのだろうか、などと考えていた。続いてロジェさんが言った。
「モリ・ハルドは、ポリット嫌い。だけど、一部、危ない人が、いる。」
「…わかりました。」
「一緒に、動く、いい?」
「はい!」
その返事を聞いた、ロジェさんは笑顔で微笑んで、「服、買う、行く?」と言い、玄関の扉を開けたため、私はうなづいて外に出た。




