第五十四話『地下室』
そういえば、この大量の荷物をどこに収納するのだろうかと思う。キッチンには簡易的な氷によって冷やされている冷蔵庫はあるものの、そこまで大きくはない。すると、ロジェさんは自身の持っていた荷物を置いた後、床にある四角の金具がついている部分を手にかけた。
それをロジェさんがゆっくりと引き上げる。すると、小さな部屋のようなものが出てきた。私がびっくりしていると、ロジェさんは、
「初めて、見る?」
と聞いてきたので、
「はい。びっくりしました。」
軽い地下室のようなものになっていて、小さな階段がついていた。ロジェさんが先に中に入り、ランプを持って室内を照らす。続けて降りると、外の気温よりも若干低いのを感じた。ロジェさんがギリギリ立てる程度なので、2mはあるようだ。2mの正方形の部屋であるように感じ、奥には木でできた棚が設置されていた。
その棚にはワインやイチゴやリンゴと思われるジャム、魚のピクルスのようなものが瓶に入っているものもあった。ジャガイモも一袋まるまる置かれており、追加で買わなくても良かったのではないかとも思うが、ここにきてからジャガイモを食べる回数が明らかに増えているためそうでもないように思う。
(上にそこまで収納スペースがないように感じたけれど、ここが食品保管室みたいになっていたなんて…。)
と感じるとともに、どうしてこれまで気づかなかったのだろうと思った。ロジェさんと一緒にキッチンに立つようになったとはいえ、まだロジェさんに家事を任せっきりな気がすると反省した。資料を集中して読んでいるときにはロジェさんが料理を始めたことにほとんど気づけない。キッチンに火をつけることも知らない私が、どうして手伝っていると言えるだろうかと思った。
「リン、ジャガイモと、野菜と、ベーコンとチーズ、運ぶ、いい?」
とロジェさんが言ったため、
「はい!」
と返事をして、一階へと上がった。
「あの、こういう、地下室、床の下にある部屋は多いんですか?」
と聞くと、ロジェさんはうなづき、
「ほとんどの家、にある。ここが、一番、長く、保つ、こと、できるから。もっと、広い、ところ、もある。」
と答えた。どうやら地下室は一般的らしい。おそらく、冷蔵庫がない時代からあるのだろう。冷蔵庫に保管するのは基本的にその日に食べないと腐るもの、それから瓶に牛乳しか入っていないので、ここが主な保管場所なのだろう。
保管ができない時代にとって香辛料が大事だと言うことが現実味を帯びて理解できた。お肉は腐りやすいので、ベーコンといっても原木のようなもので、燻製にしてある。昔の人たちが編み出した知恵なのだなと言うことを感じた。
ロジェさんが重いであろう、ジャガイモを持ち、地下室へと運ぶ。私はその後に続いて、人参や大根などの野菜を運んだ。その後もたくさんのものを運ぶ。基本的なものを運び終え、上に向かうと、ロジェさんはその地下室への扉を閉めた。
「ご飯に、する、いい?」
と聞いてきたので、
「はい!私も一緒にやります!」
といって、ロジェさんと一緒にキッチンに立った。もっとロジェさんの役に立てるようになりたいと思った。今日はポトフを作る予定だったようで、ジャガイモや人参を切り、さらにキャベツも切る。ロジェさんにキッチンの火の付け方を教えてもらった。薪で火をつけるのは難しく、結局何度やってもつかなかったので、ロジェさんにつけてもらう形になった。
キッチンの鍋を置く部分が全て鉄でてきており、さらにその下にオーブンのような部分がついていることがわかる。その鉄に上に鍋を置く形になっている。
鍋に先ほど切った野菜を入れ、牛の骨でだしをとったスープを入れ、火にかければ、美味しいポトフが出来上がる。もうちょっと自分でできるようになりたいと思った。
ポトフを食べ終わり、寝る前の準備をする。ロジェさんに
「おやすみ。」
と言われ、私も
「おやすみなさい。」
と返し、自分の部屋に戻り、お布団に入る。明日からは授業はなくなるので、基本的には家にいて、資料を読むことになるだろう。もう少し、ポリット語を喋れるようになりたいので、ロジェさんから教わろうと思った。




