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第四十九話『英雄とは』

 「あれがオリオン座って言って、あの明るくて赤い星が左肩に見えて、その隣が右肩、三つの星は腰の部分で、男の人が武器を持って手をこう、上げてる風に見えるんです。……わかりますか?」


ロジェさんに聞くと、


「なんとなく…?」


と答える。私も古代のギリシアの人たちはすごい想像力を持っているんだなと思いながら星座を見ていた気持ちがあるのでなんともいえない。


「私も見えるか、と言われれば、微妙?わかりにくいと思います。」


と素直な気持ちをいうと、ロジェさんは、少しホッとしたような表情をした。


「どうして、人が星座?」


とロジェさんは言った。オリオン座がどうして星座になったのかという意味だろうか。そう思い、思い出してみる。


「確か、何かが原因で、オリオン?が、地母神、えっと、土地、大地の神様を怒らせちゃって、」


ロジェさんの様子をチラリと見ながら、話をする。ロジェさんはうんうんとうなづきながら私の話を聞いていたので、分からない単語はなさそうだ。


「それで、大きなサソリを使って、大地の神様がオリオンを毒で殺したんです。」


そういうと、ロジェさんは、


「サソリ?」


と聞いた。サソリは砂漠にいるイメージが強いし、日本の文献に出てくるかと言われれば、そうそう出てはこないだろう。だから、ロジェさんが分からないのは無理もない。


「大きなお尻の方に大きな毒のついた尻尾がついていて、大きなハサミがある、確か、虫の仲間?いや蜘蛛の仲間だったと思います。」


「大きな尻尾がある、ハサミのある、蜘蛛……?」


ロジェさんはなかなか想像がつかないようだったので、今度絵を描いてみようかと思った。


「それで、オリオンが可哀想だから、天にあげる?星座として、残したと言われてます。」


というと、ロジェさんは


「可哀想だと、星座になる?」


と聞いた。


「可哀想でも、そうですし、英雄もですかね。」


他にあまり思いつかない。星が好きと言ってもあまり星座に関しては得意ではないので、あまり教えられる立場ではない。


(あんまり、好きとか言わなきゃよかった。)


と少し後悔をした。


「英雄?」


ロジェさんは首を傾げる。


「英雄は、普通の人にはできないような、すごいことをした人です。例えば、国を救うとか、人として勇気のある、なかなかできないことをするみたいな。」


例えばの具体例が全く具体例になっていないと思いながら、ゲームに出てくるような勇者を出しても、現実的ではないような感じもした。ロジェさんの反応を見てみると、真剣な顔をしている。何か引っ掛かるところでもあったのだろうかと慌てて、


「えっと、英雄と言っても人によって、誰が英雄かは人によって異なるといいますか、」


というと、ロジェさんはその言葉を聞いて、


「リンは、英雄はどんな人だと思う?」


と言われた。ロジェさんの質問の意図は分からないけれど、何かを期待されているような、何かを不安に思っているような顔をロジェさんはしていた。


『英雄とは』そんな題材の道徳の授業を小学校の時に受けたことを思い出す。いやヒーローとは何かだったかもしれない。幼稚園の時期に見ていた、国民的なヒーローがそこには描かれていたような気もする。無難に「偉大なことをした人」とか「人々の規範となる人」とか答えればいいのかもしれないが、そういった類の答えはロジェさんの望んでいるものではないのだろう。


うんうんと悩んでいると、ロジェさんが口を開いた。


「例えば、戦争の、上の人は英雄?と思う?」


ロジェさんは言った。聞きたかったのは、そのことだろう。友達か親戚、親あたりがそう言った人物に当たるのだろうか。どことなく、その人の特徴を聞いて「〜という人、どう思う?」みたいな会話はされたことがある。


(どう返せばいいのだろうか。)


私はさらに戸惑ってしまった。正直私が答えを出せるようなものではない。ロジェさんはそんな私を見て、さらに悩ませてしまったと焦ったのか、


「大丈夫。ごめんね、変なこと、聞く、した。」


と言って、若干目を逸らした。


「正直にいうと、分からないです。」


そう私がいうと、ロジェさんは、少し驚いたようにこちらを見た。


「えっと、なんていいますか、人によって違うので、その人が英雄かどうかは私には判断が難しいです。特に戦争だと、その味方の国の人は英雄だと思いますし、敵の国の人は悪魔、悪い人だと思うと思います。だから、私には難しいですし、分からないです。それは、ロジェさんがどう思うかだと思います。」


これで通じるのだろうか。というか、そもそも誰かそういう人がいるという前提で話をしてしまった。焦っていると、ロジェさんは、少し煮え切らないような顔をして、笑いながら、


「ありがとう。」


と言った。ロジェさんは何かを隠している。でも、そのことに私が今は突っ込んで聞くべきではないのだろう。


(いつか、話をしてくれる日は来るのだろうか。)


そんなことを思いながら、星空を眺めていると、流れ星が通りかかった。


「ロジェさん、流れ星です!」


というと、ロジェさんは「流れ星?」と少し疑問そうに聞いた。


「流れ星に3回願い事言うと叶うって、私の国では言われてました!」


と言うと、ロジェさんは、


「どんな、お願いごと、する?」


と聞いてきた。


「えっと、来年もお祭りに参加することにします!」


と言うと、ロジェさんは


「私も、そのお願い事にする。」


と言って笑った。流れ星は再び降った。流星群の時期なのだろうか。しばらくすると、三つから四つほどの流れ星が同時に流れるようになった。私はその流れ星を見ながら綺麗だなと思うと同時に、願い事をするのだった。

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