第三十四話『怒り』
ドアが開く音がしたと思い、痛みが来ないと思ってゆっくり目を開けると、マリアーベルさんはドアの方を見ながら、自分の後ろに羽ペンを隠したようだ。
私が動けないでいると、マリアーベルさんが私に早く立つように、急かしてくる。早く立たないとと思い、立とうとするが腰が抜けてしまい動けない。よくみるとマリアーベルさんが、何か怖いものを見るかのように顔を真っ青にして震えていた。
視線の方に目線を向けると、ロジェさんが今まで見たことのないような怖い顔をしていていた。私もそんなロジェさんの顔を見て怖くなる。マリアーベルさんが、何か弁明しようと声を出した。
「roje,**、」
と何かを前にロジェさんは私の目の前にきて、
「リン、ごめん、大丈夫?」
と声をかけて、手を差し伸べてくれた。心配そうな顔をしているロジェさんは先ほどの怒っているしかし、マリアーベルさんが、気になるので、マリアーベルさんの方をチラリと見ると、やっぱり少し怒っている。
「あの、大丈夫です…。だから、その、マリアーベルさんを、」
「ロレンの子供がどうしたの?」
そして、ロジェさんはマリアーベルさんの方をじっと見ている。見ているだけで威圧感があるのは、背が高いからなのだろうか。マリアーベルさんは何も言えなくなっていた。
何気にロジェさんが怒っているところを見るのは初めてである。ロジェさんは怒るとこんなに怖いのか。でも、少し怒ってくれたことが嬉しかった。
すると、マリアーベルさんはすぐにドアを開けてすぐにどこかに行ってしまった。ドアの方にはロジェさんを呼んでいた人たちは何が起こったのか分からないという顔をして呆然と立っていた。
ロジェさんの差し伸べた手を掴み、ゆっくりと立ち上がる。ロジェさんは私の顔を見て真剣に聞いてきた。
「どうしたの?何を、された?」
「あの、ちょっと、押されただけで、大丈夫です。」
マリアーベルさんは少し恋愛的な面で感情的になっていただけだし、それにとてもいいお屋敷だし、ロジェさんの仕事のお話を私のせいで邪魔をしたくない。それに、あの態度を取ってしまった私もマリアーベルさんをイライラさせる原因になっていたのは間違えない。
だから、ここは穏便に済ませた方が多分良い。そう思っているとロジェさんは少しムスッとした顔をして私を見ると、
「嘘。」
と言われ、
「言う、いや?」
と少し悲しそうな顔をして言われた。なぜ、ロジェさんが悲しそうな顔をするのか全く分からない。ロジェさんは優しい人だ。でも、言うべきか分からない。私がここで、マリアーベルさんが羽ペンで刺そうとしていたことを伝えてしまうと、ロジェさんは多分ここでの家庭教師を辞めてしまう。
そうしたら、ロジェさんはお金を得るチャンスを私のせいで無くしてしまう。そんなのは嫌だ。
すると、ロジェさんは机の上から羽ペンを取った。ロジェさんは言った。
「これで、ロレンの子供、リンを叩く、した?」
どうやら最初からわかっていたらしい。少し驚いて、ロジェさんが持っていた羽ペンを見た。もしあれが目に突き刺さっていたら、目が見えなくなっていたのだろうか。
少し、羽ペンのことが怖くなったが、ロジェさんはそんな私を見て確信を得たようだった。でも叩かれてはいないので否定をしようとしたが、ドアが開いたので、話すタイミングを逃してしまった。
マリアーベルさんが、貴族の人を連れて戻ってくる。貴族の人はとても焦っていたのか息が上がっていた。ロジェさんは眉をひそめて、二人を見ていた。何か言われるのだろうと思っていると、突然貴族の人が頭を下げた。
突然のことに驚いていると、貴族の人は
「***、*****。」
とロジェさんに対して、何かを言っていた。それを聞いたマリアーベルさんは焦っているようだった。そして貴族の人に抗議をするように何かを言った。
「****!****!」
「****、**roje nasherd knaup!」
貴族の人がロジェさんの名前を言うと、マリアーベルさんは顔をさらに真っ青にして、頭を下げた。どう言うことなのか分からずにロジェさんの顔を見ると、ロジェさんは驚いた顔をした後、少し困ったような複雑な顔をした。そういえば、ロジェさんは貴族の人やマリアーベルさんに自分の名前をロジェとだけ言っていたのを思い出した。
ロジェさんは軽く、
「*****。」
二人に何かを言う。二人は顔を真っ青にしていたが、そのあと、
「****。*****。」
とロジェさんが何か言ったかと思うと、少し、ほっとした顔をしていた。そして私に、向かって笑顔で
「帰る、いい?」
と聞いてきたので、
「…わかりました。」
といい、うなづくとロジェさんは私の手を取った。やはり、マリアーベルさんが何か言いそうだったが、貴族の人に止められていた。
そして、玄関までつく。二人の案内をしてくれた人が私に向かって、
「***。」
と言った。うまく聞き取れないでいると、ロジェさんが「ごめんなさい。って言う。」と言っていたので、謝罪だったのかと思い、私も頭を下げようとするとロジェさんに手で制された。ロジェさんは
「謝る、しない、でいい。」
と言っていたので、私はロジェさんの言葉を信じることにしたが、心の中に罪悪感が残った。




