第三十一話『貴族』
ティレへのお祭りの日が近づき賑やかになってきた頃、ロジェさんはいつも通り教会での授業を行なっていた。最近では、子供たちの授業への関心が伸びているらしく、ロジェさんは「前より、聞く人が、増る、から、嬉しい。」と喜んでいた。
神父さんが最近私に報酬として、ロジェさんと同じようにお給金として、お金を渡してくれるようになったので、申し訳なく思い、断ろうと思ったら、ロジェさんに止められ、「リンの、おかげで、いい、なる、から、受け取る、いい?」と断る私にお世辞のようなことを言った。そして、神父さんもそのことをよく思っていないのか、笑顔で圧力を感じたため、素直に受け取ることにした。
お金はどのくらいの価値でどれほどのものなのか分からなかったので、ロジェさんに聞くと、なんと言えばいいのか悩み、少し考えたあと、「一週間、ご飯食べる、できる、くらい?」と言われたので、なんとなくわかったような、分からないような気持ちになった。
今日も、ロジェさんと一緒に神父さんから報酬を受け取ると、教会の外からスーツ?ではないが、明らかに上品なコートを羽織った男の人が二人ほど入ってきた。ロジェさんが軽く私を腕で庇う。なんだろうと思っていると、神父さんが入口付近で二人を立ち止まらせ、要件を聞いているようだった。
そして、神父さんはロジェさんに
「je roje,******、*****。so,****、*****。」
と言った。ゆっくりしゃべっている場合は聞き取れるのだが、このペースで話されていると何を話しているのかは全く分からない。そしてロジェさんは神父さんに
「***、*****、***。***。」
と言ったかと思うと、私に、
「軍の人、では、ない、から、大丈夫。」
と言った。ロジェさんは軍隊の人を考えて、私を庇ったようだった。そして、ロジェさんと一緒に、その二人の人に話かける。私は何を言っているのかはさっぱり分からないので、ただ耳を傾けていた。
「uiir yhen ****、****。」
そう言って、二人の男の人はロジェさんに言った。自己紹介なのだろうか、そう思っているとロジェさんは
「tire morke , uii yhe roje. ***。」
とロジェさんが言ったので、私も
「tire morke , uii yheリン。」
と言って、頭を下げる。しかし、頭を下げるのではなく、ロジェさんが握手を男の人たちと交わしたので、私もロジェさんを真似て、握手をした。男の人たちは、ロジェさんに再び向かい、何かを言った。
「je roje, ****、****、*****。******?*****、********。」
と何か言っていた。ロジェさんは少し考え込んだ後、
「ya, ****、*******。*********。********。」
とロジェさんは返事をしていた。なんと言ったのだろうかと思っていると、男の人たちの表情が少し緩んだので、交渉か、提案みたいなのが受け入れたれたということなのだろうか、と思った。
「***、****?」
と男の人がロジェさんに言う。ロジェさんは私の方を向いて、言った。
「この人たちは、ロレンの家、の人。ロレンの子供に、言語、教える、ほしいから、今、行く、いい?」
とのことだった。ロジェさんがそう言っていたので、私も「いいですよ。」と返す。すると、ロジェさんは私に「ありがとう。」といい、その男の人たちに返事をしていた。すると、男の人たちは、「morke、***。」と言った後、私たちを誘導するかのように前を歩いた。その後ろをロジェさんと一緒についていく。
すると、大きなお屋敷についた。白色の壁を基調とし、綺麗な彫刻が至る所に施されていた。ざっと見ても窓がとても広く作られており、いかにも貴族みたいなお屋敷ではあった。左右対称に作られた家には、大きな庭がついており、畑のようなものも見受けられた。
歩いた体感的には15分程度だったので、こんなところにお屋敷があったなんてと思って、驚いていたのも束の間、男の人はすぐに歩いていってしまい、ロジェさんもそんなにお屋敷に興味がないのかついて行ったので、私も慌ててついて行った。
少し小走りでロジェさんに追いつくと、ロジェさんは、私に「珍しい?」と聞いてきたので、「…はい。」と息を切らしながらいうと、ロジェさんは少し笑って、「大丈夫?」と私の息が上がっていることを心配してくれた。
お屋敷の中に入ると、早速貴族の身なりだと思われる人が登場した。私はこの文化の礼儀とか知らないけれど、大丈夫かなと思っていると、ロジェさんは私に軽く目配せをし、微笑んで、口パクで大丈夫と言った後、ロジェさんは慣れたように、軽く挨拶を交わし、私のことも紹介してくれたようだった。その人が手を差し出してきたので、ロジェさんが握手を交わした後、私も同じように握手を交わした。
ロジェさんは貴族階級の礼儀にも強いらしい。そして、ある一室に通された。そして紅茶を出されたが、緊張で口をつけられなかった。ロジェさんとその貴族らしい人が会話をしている。
「****、*****。」
「*****、*******。」
「ya、*******。******。****。」
何を会話しているのかについてはやはり分からないのであるが、ロジェさんに対して、貴族らしい人にいい印象を持っていると言うのは、話のトーンや表情などを見てわかった。
そして、貴族の人が「マリアーベル。」だろうかそういった後に、先ほど入ってきた部屋の方から一人の女の子が出てきた。ロジェさんが席を立ったので私も同じく席を立つ。おそらく、私と同じぐらいか、それよりも少ししたぐらいだと思う。綺麗なドレスを着ていて、金色のふわふわした髪に、その子の目と同じ綺麗な緑色の宝石が髪飾りとしてついていた。
「car yht maria-beru.」
と貴族の人が言ったので、マリアーベルと言う名前で間違いなさそうだ。
その子の顔を見ると、ロジェさんを見て、顔を赤くしていた。ロジェさんはこの子と会ったことがあるのか、初対面なのかについては分からないが、はっきりとわかることが会った。
ーマリアーベルさんはロジェさんのことが好きなのかな
そう思うと同時に不思議な胸が痛んだが、その気持ちには見てぬふりをした。




