第十六話『教会』
ロジェさんと街を歩くと、教会のようなところについた。ここで、言語を教えているらしい。
どうやら街の中にあるため、世俗の教会のようであった。もう少し想像していたのは、丘の上にあるのかなとも思っていたが、違ったらしい。
教会は本当に綺麗で、今のこの時間には人はいないようで、とても静かで大理石に革靴の当たるようなロジェさんと私の足音が響いているだけだった。
教会には、とても綺麗なステンドグラスが壁一面にはめ込まれており、光が差し込んでいてとても綺麗だった。そのステンドグラスには鳥がたくさん描かれており、想像していたような、女神や神の肖像画のようなものは一つもなかった。
教会には行ったことがないので、元の世界にもあったかもしれないが、蝋燭がたくさん壁にかけてあり、たまに暖炉が置いてあったため、教会の中は全体的に暖かかった。
ーこんな綺麗なところで授業されても、耳に情報が入る気がしない…
そんなことを考えていた。
ロジェさんに歩きながらついていくと、黒板がすでに用意されており、その前には神父さんのような人がいた。神父さんは、白色のその神父さんにロジェさんが「ティレ・モルケ」と挨拶をしていたので、私もそれに続いて「ティレ・モルケ。」と言うと、神父さんはロジェさんに私を見ながら、話をしていた。
「ジェ・ロジェ。***、****?」
「***、リン、****。」
と私の方を見たので、軽く会釈をすると、神父さんは私に微笑んでくれた。
「*****、****。」
「*、*****。」
「****、*****。******、****、*****。」
ロジェさんと、神父さんが何を言っているのかは何もわからなかったが、今日の言語の授業の打ち合わせでもしているのではないかと思った。すると、神父さんがそそくさとどこかへ行ってしまったので、実は違うのでないかとも思った。
ロジェさんは私の方を見て、
「手伝う、いい?」
と聞いてきたので、
「はい!」
と全力でうなづいた。ロジェさんは、私に小さな黒板のようなものと、チョークを渡して、
「これ、来る、子どもたちに、渡す。」
と言ってきたので、ロジェさんから、黒板のセットと二、三十枚ぐらい受け取り、子どもたちが来るのを待っていた。しばらく、暇だったので、ロジェさんに、
「自己紹介とかはしたほうがいいですか?」
と聞くと、
「じこ…しょう…?」
「あ!えっと…私のことを、子どもたちに伝える、教える?紹介する?ことです。」
と言うと、ロジェさんは私に
「uii yhe リン。が自己?紹介?」
と言われたので、
「ウイ、イェーへ、凛ですか?」
と聞くと、ロジェさんは「上手。」と言ってうなづいた。多分、英語圏の発音のほうが似ているので、英語のスペルで覚えた方がいいのかなと言うふうにも思う。
活発な話し声が聞こえてきたと思うと、子どもたちとその親、母親と思わしき人たちが来た。そのため、私が「ティレ・モルケ!」と言って黒板を手渡すと、子どもたちは不思議そうな顔をしていて私を見ており、「**?」「***?」などと何かを聞いているのはわかるのだが何を聞かれているのか分からないので、ロジェさんに目線で助けを求めた。
ー…ロジェさん!助けて…。
ロジェさんは私の方を見て、
「人気。」
と微笑んだあと、子供たちの目線に合わせて屈むと、「****、***。」と何かを言い、すると、ロジェさんに何か子どもたちが言い、それを聞いたロジェさんが、「誰?って、聞いている。」と言われたので、さっきロジェさんに教わった。
「…ウイ、イェーへ、リン!」
と言うと、子どもたちから、腕を引っ張れて、何事かと思えば、ロジェさん曰く、子どもたちは、私と遊びたいらしい。
ロジェさんは困ったような顔をしながら、子どもたちに何かを言うと、子どもたちは不屈そうな顔をしながら、教会の席についた。その子たちの母親らしき人たちは、その様子を微笑ましく見ていたようだった。
その後から来た子たちも私の顔を見て、とてもワクワクしたような表情を見せたが、ロジェさんに引き止められて、座っていた。
ーかわいい
と思っていると、ロジェさんは全員が席についたことを確認し、授業を開始した。




