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第十二話『違和感』

 ロジェさんが出ていって、一人になった室内で世界史探究の本を開いた。そこで違和感に再び出会う。


ー地図が全然違う。


見る方向が違うのだろうかと地図をぐるぐると回してみるが、やはり違った。


見覚えのある国の名前が何個か載っているが、どれも古代の名前や王朝の名前、少なくとも2025年では使われるような名前ではなかった。


ー漢、ガリア、オスマン、アッシリア、聞いたことはあるけど…。


世界史で習った国、王朝の名前をいくつかなぞってみる。特に時代に統一性はないし、地図が全然違うせいもあるが、位置にも何の法則性もなかった。


その中にジパングの表記を見つける。キタンと書かれた隣の島国の上に書かれていた。しかし、よく知っている日本列島の形をしていなかった。


何となく、横に広い感じがする。島は大きく分けて6つに分かれているようだった。


ータイムスリップしてきたと思うけど、本当は違った…?


この地図を見るに、日本とは全然違う。少なくとも日本の教科書で日本のことをジパングと書くことはないだろう。タイムスリップではなく、実際には最初に思った通り、異世界にきてしまっていたようだ。


それにしては地名には見覚えがあると思うが、考えてしまうと切りがなかった。


ー実は並行世界とか…?それとも世界史の勉強のせいでこんなリアルな夢を見ているとか…?


と思い、頬を引っ張るが、


ーい、痛い…。


痛かったのでやはり、ここは夢ではないのだろう。一旦、バーリーを飲んで心を落ち着かせようとしたが、全く心は落ち着くことはなかった。


頭を抱えそうになるが、それ以上考えても切りがないので、一旦これ以上考えるのはやめて、読んでみることにした。


 読んでみると最初の流れはいつも読んでいた世界史の教科書に似ていて、文明の誕生から始まり、都市の誕生、農耕文化、貨幣文化など、読んだことがある内容が記されており、文明の名前は異なっていても重なる部分が多くあった。


産業革命あたりまでは戦いの名前が違うところなどがあったが、その後の流れは全く違った。世界がおかしくなっている。そのことに気づく。


何回も大戦を行っている。どうやら、この世界はほとんど機能不全になっているようだった。写真が全て生々しいというか何というか。そんなことを思っていると気持ち悪くなって、本を閉じた。


ーこの本は私の知っている世界史とはまるで違う。


色々考えて、ファンタジー要素の強くない異世界に来たのだろうと結論づけた。


いつ前の文明が滅んだのかは気になるところではあるし、ロジェさんは実際にどのくらいこの本の内容を知っているのだろうと思った。


 「リン?大丈夫?」


そう言われた瞬間、体が跳ね上がり、心臓が止まりそうになった。ロジェさんが知らぬ間に帰ってきたようだ。


ー扉の開いた音にも気づかなかった。


「…ロジェさん。お帰りなさい。気づきませんでした。…すみません。」


そういうとロジェさんは


「気にする?大丈夫。リン、顔の色が、おかしい。大丈夫?」


ロジェさんにそう言われ、


「大丈夫です。」


と返したが、内心は全然大丈夫ではなかった。気持ちを紛らわすためにロジェさんに質問をしてみる。


「ロジェさん、ロジェさんはこの本の内容はどのくらい分かるんですか?」


ロジェさんは私の持っている本の表紙を見た後、苦笑いを浮かべて、


「まだ、何も。難しい、本、だから。」


と答えた。ロジェさんがまだ知らないことに安心したのも束の間、私の中には一つの不安が浮かんだ。


ー私が、本当は古代のジパングの人ではないことを伝えてもいいのだろうか。


という不安である。ロジェさんが研究のために”古代ジパングの人”である私を保護してくれているとしたら、私は価値がないからである。


日本語が話せる、読めるというただそれだけでも置いてもらえるだろうか。役に立てるだろうか。ロジェさんは優しいから、内心思っていても、置いてくれるかもしれない。


でも…。


ネガティブな気持ちが心の底から無限に湧き上がってくる。


何か私がここにいる価値は?理由は?と哲学的なことを考えてしまった。

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