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第2話:「初めての依頼」

朝の光が、町の石畳に柔らかく降り注ぐ。小さな薬局の扉を開けると、まだ昨夜の余韻が漂う薬草の香りが鼻をくすぐった。


「さて……今日から本格的に営業ね。」


華は、埃を払いながら棚に並べられた薬瓶を一つずつ確認する。現代の知識では効能や副作用が明確にわかるが、ここでは伝承や迷信がまかり通る世界だ。だからこそ、正しい薬学で人々を救うことに価値がある。


そこへ、扉のベルが鳴った。


「お嬢さん、患者さんですよ」


ルーカスの声に、華は振り返る。薄紫色のマントを羽織った少年が、緊張した面持ちで立っていた。


「えっと……私、昨日から熱が続いてて……」


小さな声で話すのは、宮廷近くの街区に住む少女、エリナ。表情はどこか怯えている。手首に古い包帯が巻かれているが、華の目はすぐに異変を察した。


「この包帯……自分で巻いたの?」


少女はうなずく。「でも、痛くて……薬も効かなくて……」


華は薬袋を取り出し、ノートを広げる。症状や既往、体質、使用した薬……一つずつ整理していく。ここで現代の知識が生きる。


「わかりました。原因は……使用していた解熱薬の成分に、あなたの体質ではアレルギー反応が出ていた可能性があります。あと、偽造された薬が市場に出回っているのも関係しているかも」


華の言葉に、少女は目を大きく見開いた。


「偽造薬……?」


「ええ。私がちゃんと調合すれば、すぐに熱も下がるわ」


そう言うと、華は調合台に向かい、薬草を手際よく組み合わせていく。刻む音、すりつぶす音、温度を確認するための小さな器具の音――すべてが計算され尽くした科学的手順だ。


やがて完成した薬を渡すと、少女の顔にほっとした笑みが戻った。


「すごい……こんなに効く薬、初めて……!」


華は微笑む。だが、安心したのも束の間、少女の口から思わぬ言葉が飛び出した。


「でも……お屋敷では、私が薬を飲むと必ず誰かが監視して……本当は、病気じゃないのに熱が出るって言われてるんです」


華の眉がぴくりと動く。監視……それは宮廷内の陰謀の匂いがする合図だ。薬学的な調合だけでは解決できない、別の“病”が潜んでいる。


「なるほど……これは単なる病気じゃないわね」


小さな薬局の窓の外、王都の喧騒が今日も流れている。だが華の心には、ひとつの決意が芽生えていた。


“この町の薬も、噂も、すべてを正す――。”


そして最後に、少女が落としていった手帳を華はそっと拾う。そこには、次の薬の依頼先らしき、不思議な名前が記されていた。


「……ふふ、次の謎はもう始まっているみたいね」


華の眼差しは、薬学の知識と論理で宮廷の闇を解き明かす覚悟に満ちていた。

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