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正しい底辺のつくり方  作者: 義経
親からつくる底辺の種
2/3

10歳 小学四年生

二階建てのテナントの1番左奥、残り7件は全て田舎の場末のスナック、そこが私の家。


母親が居ない男3人の生活が突然始まった。あんなに非日常的なセリフを言われた次の日も自動的に、強制的に学校に行かなければならない。学校ではみんな楽しく笑っているが私は笑えない。勉強もわからない、歯が痛い、心も痛い。


家に帰れば親父は仕事で居ない、飯が無い、弟と2人ゲームとテレビで寂しさを埋める。カラオケが煩くて3時ごろにやっと気を失う様に寝れる。また朝が来て学校、親父は寝ているから起こさない様に静かに準備をする、朝飯は無い。


【注意】ここから先、食事中の方は後で読んでください。











まず玄関を出て3秒以内に最初に目に入るのがゲロだ。 昨日の酔っ払いが吐いたゲロが毎日量産されていて、毎朝必ず5〜6箇所ゲロを飛び越えなければならない。そこにネズミやカラスやゴキブリが群がる。毎朝必ずあの光景、あの匂いを嗅がないと学校へ行く事が出来なかった。8歳〜13歳迄の5年間毎日。


友達と遊んでいる時以外は辛い、だから遊ぶ事が大事になった。心が壊れない様に。必死に遊んだ、真剣に遊んだ、夢中で遊んだ、心が壊れない様に。友達と遊ぶと言う現実逃避、今で言うトー横やグリがあれば間違いなく行っていたと思う。


下戸な親父もスナックを辞め中距離トラックの運転手になり、家にいない時間が更に増えた。朝飯はテキトーにパンを食べ,晩飯は近くの知り合いの店でツケで食べさせてもらっていた。


問題は夏休み。今まで昼は学校の給食があったので良かったが夏休みはそうはいかない。なので歩いて30分の距離に住んでいた親父の姉さん、つまり俺達からすれば【叔母さん】の家に昼と夜を食べに行く事になった。親父とは15歳ほど歳の離れた叔母さん、親父とは少し不仲だったらしく今まで数回だけあった事があり何となく顔は知っていた。叔母夫婦の息子達は成人して家を出ていて今は2人で気ままに田舎の定食屋をやっていると言った状況なので俺たちを気に掛けてくれたらしい。



天気の良い真夏、蝉が鳴く川沿いをずっと下り30分ほど歩くと橋と道路が出てくる。そこの近くの【きらく家】と言う看板が叔母夫婦のお店だ。


親父は母親方の親戚以外に親戚付き合いをしなかったので、親しく無い他所の家のご飯と言うのを初めて食べた。母親とも親父とも違う何とも言えない違和感のある味、お店で食べる味でも無い。不味くは無いが違和感としか言いようがない。


その時   ピュン!   と音がした。


叔母が何故か手に持っていたハリガネで出来た細いハンガーを素早くふるった音だ。そのハリガネハンガーは弟の背中を激しく叩き  「パシィン!!」 と音がした。

続いて私の太ももを激しく叩く。  パシッ!



叔母曰く【行儀】が悪かったらしい。

叔母曰くこれは【躾】らしい。

叔母曰くこれは全て俺達が悪いらしい。


その日から毎日【躾】と称した体罰、いや本物の虐待が始まった。



1日2回、昼と夜虐待を受けに30分歩いて行くあの道のりは地獄だった。何で俺と弟にだけこんなに嫌な事が起こるのかと空を見上げて神様に色々お願いしたが全く聞き入れてもらえなく、夏休みが終わる頃には神や仏は存在しない事を知れた。今思えば夏休みの研究課題にすれば良かった(笑)


地獄の様な夏休みがやっと終わったと思ったら、夜ご飯だけは毎日アソコに食べに行く事が継続と決定した。神や仏は居ないのに鬼や悪魔はいるんだと思った。 だから空を見上げて悪魔にお願いしてみた。


「何でもするから助けて下さい」


偶然とは怖いもので私の悪魔への切なる願いは届いた。叔母夫婦の旦那が体調を崩して入院となり、その日から虐待が無くなった。


私を取り巻く環境や心の傷はまだまだ最悪だが、身体に対しての直接的な痛みが無くなったことは天にも昇るほど嬉しかったのを覚えている。生まれて初めて泣いて喜んだのはあの時だった。


しかし1ヶ月もするとまた地獄が始まり、今度は悪魔も願いを聞き入れてくれなかった。虐待を受けて家に帰るとゴキブリだらけ、寝ようとするとカラオケが邪魔をする、学校へ行く時は毎朝アレを飛び越えて酸っぱい臭いがする。


あの時は友達だけが救いだった、今でも本当に感謝している。


ある日とうとう虐待に耐えかねてアソコに行くのを辞めた。翌日親父に連絡が入り何故いかなかったのかと聞かれ「いっぱい叩かれるからもうイヤだ、行きたくない」と伝えると親父は短く「わかった」とだけ言い、この日から虐待から解放された。


ただ、親父からは「順番が逆だ」と言われた。つまり約束をすっぽかしてから言うのではなく、先にちゃんと理由を言えと。向こうも準備して待っているし、来なかったから心配していると。


この時は腑に落ちない感じがずっと残り、それは数十年してからようやく答えを得ました。


①先ず虐待に気付かなかった自分の不甲斐なさを謝らない。そして虐待に関して子供は一切悪くないのにイジメ問題によくある【イジメられる方にもナンタラ】理論を出す。これで子供に深い深い傷をつけれます。

ま、虐待はする方が100%確定で悪いんですけどね。



②あの時親父が言った言葉【先方も心配している】は今だに腹立たしい。加害者には心配をかけてもいい。順序が逆でも別に言わなくていい、そこのアナタ、ヤバい会社からはすぐに逃げなさい。人間以外の動物はヤバくなったら必ず逃げます、人間だけです逃げないのは。

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