表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/6

2



 第一騎士団の団長様に期間限定の交際を提案されました。


 (うん、なんで??)


 エラは訝しげに目の前に立つ男、第一騎士団の団長ウィリアム・シンシア卿を見る。


 ウィリアムといえば、そのずば抜けた戦闘能力から、わずか28歳にして昨年騎士団長に抜擢された男だ。

 平民出身でありながら、王の特別な恩恵によりシンシア卿の称号を与えられており、絶対に他国へは渡さないという王家の強い意志が感じられる。


 平民出身であることから反発の声が聞こえてきそうなものであるが、圧倒的な強さに加え人柄も良く、部下にも慕われているらしい。

 一部の貴族出身の騎士が反発した際には、その言葉通り力で彼らを黙らせたそうだが、貴族のみで構成される近衛騎士団からは今も反発の声が上がっており、王が頭を悩ませているそうだ。


 そんなウィリアムがなぜ。


 「...フィッツアラン嬢?」


 返事をしないエラを不思議に思ったのか、再度エラのことを呼ぶウィリアム。


 そうだ、そもそもなぜ私の名前を?と先ほど感じた疑問に再度思い至ったところで、彼が何やら手紙を手にしていることに気づく。


 「シンシア卿、そちらは?」

 「っえ、ああ、君が書いた手紙だろう?」


 ウィリアムは交際の提案を無視して手紙に興味を示したエラに少し戸惑いつつも、質問に答えた。


 「少しお借りしても?」

 「もちろんどうぞ」


 受け取った手紙を確認すると、


 『ずっと好きだった。前の恋人と別れたと聞いた。一ヶ月という期間限定ということは知っている。それでもあなたと付き合いたい。そして私は必ずあなたを変えてみせる。あなたに真実の愛を教えてみせる。今晩、あなたの仕事が終わった後に植物園の裏で返事を聞かせて』


 といった内容がとても上品な文章でつらつらと書かれている。


 エラは見覚えのある文字にドキドキしていた。

 そして差出人の名前を確認して笑った。


 『ルイーズ・フィッツアラン』


 (そういうことね...、姉様、シンシア卿のことが好きだったのね)


 それならばと、顔をあげウィリアムに返事をしようとしたところで、後方に走ってくるルイーズの姿を見つけた。

 いつもの騎士服ではなく、ドレスを身に纏っているようだ。


 「シンシア卿」


 エラはよく妖精のようだと評される笑顔でウィリアムを見る。


 「ん?もしかして違った?」

 「いいえ合っています、エラ・フィッツアランです。これからよろしくお願いします。」

 「...あれ?ルイー「エラです、よろしくお願いしますね?シンシア卿」


 記憶違いだったかな...と1人納得するウィリアム。


 「それじゃあエラ、今日から楽しもっか」

 「はい、早速ですが...、確かシンシア卿も寮にお住みでしたよね?一緒に帰りませんか?」


 ウィリアムに肩を抱かれるよりも先に、彼の手を握りながら上目遣いで見つめるエラ。


 「!...いいよ、一緒に帰ろうか」

 「?」

 

 なぜか少し戸惑っている様子に同じく戸惑うエラ。


 (期間限定でお付き合いしているくらいだから、相当遊び慣れているのだと思ったんだけど...)


 実際に先ほどの「楽しもっか」という台詞には少々妖艶な響きが含まれていたように思う。

 まあいいかと、ウィリアムと手を繋ぎ歩き出す。


 最初普通に手を繋がれたので、いわゆる恋人繋ぎにし直したら彼は驚いたようにビクッと反応したが、今はそんなことどうでもいい。

 私たちの存在に気づき、最初は呆然とした表情で見ていたものの、途中から憎々しげに私を睨んでいるルイーズの方が重要だ。

 怒りなのか、ショックなのか、プルプルと体も震えているようだ。


 (声はかけないのね、さすがの姉様も好きな人の前ではいつものように怒鳴れないみたい)


 ウィリアムと手を繋ぎながら震えるルイーズの横を通り過ぎる。

 

 「シンシア卿、これからとーっても楽しみですね?」

 「ぅん...」



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ