char キャストマジック()
今日は仕事日。
隆太は街の治安を維持するための見回りを行っていた。
騎士団を象徴するエンブレムを肩に示し、周囲を見ながら異変が起きていないかどうかを探っていく。
これまでにもすでに数回この仕事を行っており、隆太も段々と慣れてきた。
そんな隆太の後ろで、一人静かについてくる少女がいる。
隆太はふっと後ろを振り返って少女に声を掛けた。
「磯田さん、大丈夫?歩き疲れてない?」
「大丈夫。……まぁ、もうかれこれ一週間にはなるんだけどね」
「はは……。」
「わざわざごめんなさい。私の我儘みたいなものだし……」
実子は今回、バグルートの鑑定の為に隆太についてきていた。
先日の志江の一件でバグルートを初めて鑑定した実子は、バグルートに対し一つの仮説を立てていた。
今回、それが正しいのかどうかを調べるため、改めて野生のバグルートを鑑定したいという申し出があったのだ。
しかし、騎士団と異世界人には、とある確執があったため、実子は隆太にお願いして今に至る。
「えっと、それじゃあ行こうか——」
「あら、騎士さん!」
「あ、この前の!」
隆太はそう言っておばあさんの元に駆け寄る。
「あの後、大丈夫でしたか?」
「えぇ、えぇ!あそこまで運んでいただければ全然!ありがとうねぇ」
「いえいえ。なんてことはないですよ」
「いやいやいや、ほら、お菓子あげる。そっちの子にも!」
「えぇ!……ありがとうございます!」
隆太は一瞬受け取るか逡巡したが、すぐにおばあさんからお菓子を受け取る。
「あ、ありがとうございます……」
実子も戸惑いながらもお菓子を受け取った。
——その時。
「キャー!!!化け物!!?」
女性の悲鳴が響いた。
隆太と実子は声のする方へと顔を向ける。
そこには突如現れたバグルートから逃げ惑う人々の姿があった。
隆太はすぐに剣を取り出し、バグルートに勇猛果敢に立ち向かっていく。
一番最初、全く歯の立たなかったあの時と違い、今度はヒットアンドアウェイでかろうじてダメージを避けながら戦えていた。
「皆さん、すぐに避難してください!ここは危険です!」
隆太はそう言って避難を促す。
徐々に周囲の人たちは逃げていき、辺りの人がいなくなる。
隆太は、逃げ遅れたりした人がいないことを確認すると、ドライバーを装着した。
『武神.g!』
「変身!」
隆太は神石をドライバーにセットし、ボタンを押下する。
すぐに変身を終えた隆太はバグルートを殴り飛ばした。
その様子を見て、慌てて実子は隆太を止める。
「ちょ、ちょっと、隆太君!!鑑定したいから、そいつ、まだ倒さないで!?」
「あっ!ごめん……!」
二人は倒れているバグルートを見て、あたふたとする。
実子は慌てて『鑑定』を発動し、バグルートの姿を捉える。
実子の周囲に複数のウィンドウが浮かび上がり、隆太は目的を達成したことを理解し、バグルートに止めを刺そうとする。
しかし、すぐに状況は一変した。
バグルートが起き上がった瞬間、バグルートの数が増え始めたのだ。
一人、二人、四人、八人と段々と膨れ上がるバグルートの数。
そこからさらに二回ほど増加したバグルートは一斉に隆太たちに襲い掛かってくる。
隆太は剣で対応していくものの、数が多くさばききれない。
必死に抵抗しつつも、ハッとした隆太は懐から青色の石を取り出した。
「それって……志江さんの……?」
「これで、なんとかなればっ!!」
隆太は石を正面にかざし、ぐっと握った。
『魔法神.g!』
隆太はドライバーから赤の神石を取り出すと、今度は青色の神石を入れ、回転させる。
『Loading!Loading!』
隆太はベルトの左側のボタンを押下した。
『Running!』
今度は本や杖、まるでファンタジーの魔法装備のようなものを模した青と白の鎧が隆太に装着される。
『キャスト:マジック!参照先は世界の英知なり!』
先ほどとは一転、落ち着きのある姿に変化した隆太は、自身に大量の魔法の知識が流れ込むのを感じる。
隆太はその知識の奔流が囁くまま、手のひらで空をなぞる。
その瞬間、火、水、風、土、光と言った、ありとあらゆる物体が槍や矢、刃に形を変え、それぞれが意思を持つようにバグルートたちに降り注ぐ。
当然バグルートも抵抗する物の、余りの数に防ぐ術無し。
瞬く間にその数を減らしていく。
やがて、バグルートの数も片手で数えられるほどになってきたその時、隆太はドライバーに装填された神石を回転、必殺技を決めようとする。
『ReLoading!ReLoading!』
隆太は巨大な魔法陣を背に、右側のボタンを押下する。
『ラグナロク:マジック!』
隆太の背の魔法陣から巨大な火の球が出現し、火の玉は瞬時に加速し、バグルートに激突する。
火の玉はそのまま爆発を起こし、そこにはバグルートに変貌したと思われる人が眠っていた。
実子はさらにその眠っている人物にも鑑定をかけ、情報を得ているようだった。
「やっぱりこれって……!」
<バグルート図鑑>
クローンバグルート
身長:308.7㎝
体重:210.2㎏
特色/力:分身
バグルートの一体。
○○が〇に○○ことによって生まれてしまった○○○○〇。
○○も、○○も○○に○○され、○○する。
大量に分身を行うことで本体を見失わせたり、手数で相手を圧倒する。
<ヒーロー>
チィト 魔法神フォーム
SPEC
身長:175.8㎝
体重:70.3㎏
パンチ力:10.2t
キック力:22.3t
ジャンプ力:23m(ひと跳び)
走力:7.8秒(100m)
必殺技:ラグナロク:マジック