レベル上げ
【エンドレスファンタジー~レベル上げ~】
「お疲れ~また今度あったらよろしくね~」
「こちらこそまたあったら宜しく」
儂は今日何度目かのPTを終えて、今まで一緒に組んでいた者達に別れを告げる。
この世界に来てから一週間ほどの時間が経った。
ぶっちゃけ、廃人なんて目じゃ無いレベルでレベルが上がり続けている。
当たり前と言えば当たり前だろう、あちらにはどうしても現実という枷があるにもかかわらず、こちらはこれこそが現実で常に此処でモンスターと戦ったりしているのだから。
正直、レベルが低く、金が無い今はこの世界でやれること等殆ど無いし、何より今はレベルを上げていたい。。
東の大陸には博打場と言うかけをして遊ぶ場所があるが、大体1000000L位は最低でも持っていなければ真面に遊べない。
西の大陸には遊技場という遊園地みたいな場所もあるが、正直男が一人でそんな所に行ってどうしろと言うのだろうか?
他にも金があったり、一人で無ければそこそこ楽しめる所はあるのだが、今の儂にはどちらも無い。
とにかく今は、PTをくりかしながら気の合う仲間を探して、ついでに金稼ぎとレベル上げをしている所なのだ。
レベル自体は実際、50位までは直ぐに上がる。
と言っても直ぐに上がると言う感覚は儂だからだ。
儂じゃないとしても真面に武器を使いこなしたり、身体を動かせる者であれば比較的簡単に上がる。
まぁ50からはそんなこと関係無くレベル自体が上がりにくくなるんだけどな。
とりあえず、今は少しでも死ぬ可能性を下げる為にレベル上げを頑張ろう。
そんな事を考えながらまたPT募集をしている者達が集まる広場で手ごろなPTを探していく。
レベル上げを続けて更に二週間でレベル50を達成した。
金もある程度溜まったりしたのでそれなりに防具なども揃えた。
残念ながら武器だけは見つからず未だ鉄扇のまま。
なかなか扇をドロップするようなモンスターがいないうえ、いてもかなりレベルが高い奴等がおおいいせいだ。
もう少しレベルががれば儂自ら探しに行けるのだが、いかんせん、今は未だ無理だ。
それでもレベルが50になり、ギルドランクもAになった今、新しい狩り場が一つ追加される。
レベル制限とギルドのランク制限がある場所で、迷いの迷宮と呼ばれる場所だ。
正直モンスターのレベルが一気に上がる。
ついでに経験値や取得したアイテムによる金銭面も凄い。
今現在、良く行っている場所での狩りだと六人PTで分配して一人当たり一時間程度の経験値が300000程で、金は一人当たり30000L稼げれば良い方だ。
だがその迷宮ならば上手くやれば、六人PTでも一時間程度で一人頭の経験値が1000000も出来る位だ。
金だって250000L程度一人頭で貰える上に、レアアイテム等が出ればそれだけで倍以上の金が貰える。
ただしその分危険も大きく、死ぬ可能性も高いので、地道に今の安全圏内の狩り場でやっていた方が良いのだろうが正直飽きてしまった。
娯楽も無く、友人等も居ない今、強くなる事だけが唯一の慰めみたいなものだ。
だからこそ、儂は其処に行く事に決めた。
なるべくバランスの良いPTを探し参加する。
運良く後衛二人に支援二人と前衛一人のPTがあったので参加させてもらおうと頼み、成功した。
儂は準備を済ませてあったので、そのまま迷宮に向かう事になった。
支援の一人がテレポートを覚えていたおかげで一瞬で其処まで行く事が出来る。
テレポートは記録した場所に瞬時に移動する事が出来る魔法であり、レベルによって移動できる人数の上限が決まる。
最低で自分1人、最高で20人だ。
レベルが1上がるごとに2人ずつ増え、最後のレベル10だけ三3人増える。
不思議な感覚を味わった瞬間目の前にその迷宮の入り口だった。
「確認だが先ず儂が突っ込んでかき乱す形で良いんだよな?」
もう一人の前衛が頷きながら「次に俺が後方にモンスターが流れないように注意しながら殲滅していく」と言うと、「その間に私達が纏めて始末するよ」と後衛の二人が任せろと言った感じで頷いた。
「私は絶対に死なせないように頑張りますね!」
「とにかくよっぽどの事が無い限り大丈夫だと思うよ」
と支援の二人も結構自信ありげだ。
意外と当たりPTかもしれない。
儂はそんな事を思いながら、迷宮の中に足を踏み入れる。
迷宮自体に魔法が掛かっていると言う設定があり、時間ごとにランダムで道が変わる。
さっきまで真っ直ぐいけた場所が気付けば行き止まりとかも良くあるのだ。
儂達は間違えても分断されないように気を付けながら移動していく。
暫く一匹二匹程度のモンスターが襲ってくるが、纏まった数で無ければそれこそ問題は無い。
強いとはいえ、一対一で勝てないレベルでは無いのだ。
この迷宮が物凄い経験値と金を得られ、死ぬ可能性が高い理由は所々にある小部屋にあるMHのせいだ。
大概そう言ったMHには最低でも20以上のモンスターがいる。
ちまちまと襲いかかってくるモンスターを倒しながら進んでいると、漸く一つ目の小部屋に辿り着いた。
入り口前で全員に確認をとり、OKサインが出ると儂が部屋の中に飛び込む。
やばい。
多すぎる。
中に入った瞬間冷や汗が出てきた。
全力で行かないと死ぬ。
間違いなく死ぬ!
最初は劣りと時間稼ぎだけで良いと思っていた思考を切り替える。
すぐさまスキルを発動させる為に必要な動作に移った。
何時もの様に足を滑らせながらモンスターに近付き扇を振い、三度目の扇をモンスターに叩きつけた所でスキル動作の完了。
「円舞!」
そのスキル名を叫ぶと、人間が近くできる限界を超えた速度と動きで周囲一メートル全てにいるモンスターに扇による一撃が入る。
まだまd終わりではない。
「瞬舞!」
回り終えると同時に次のスキルを発動させる。
タイミングが重要で、少しずれただけで発動しないが、儂はミスをするほど下手じゃ無い。
スキル名を叫んだ瞬間儂は囲んでいたモンスター達の背後にいる。
今まで入り口付近で囲まれていた処、今現在出口付近にいるのだ。
テレポートをした訳では無く、唯単純に知覚できない速度でモンスター達の間をすり抜けてきたのだ。
勿論すり抜けてきた範囲内にいるモンスターには全員に扇での一撃を食らわせている。
真っ直ぐに通り抜けた儂はモンスターに背中を見せた状態だ。
モンスターも背中を向けた状態なので背中合わせ。
「背鏡舞!」
通り抜け、振りかえると同時に儂の扇が何も無い空間を真横に振りぬく。
次の瞬間無数の透明な扇が現れモンスターに襲いかかる。
モンスター共はその扇に対処する為こちらに向かう事が出きない。
そして最後のスキル。
「四終舞!」
振りきった扇をそのまま頭上に持ってくる。
頭上に来た時点で今度はその扇を振り下ろし、儂はモンスターの中に突っ込む。
此処からは実際儂自身が知覚出来る物ではないが、慣れれば何となくどう言う状況で、どう言う感じになっているかがうっすらと解る。
慣れている儂でさえ是なのだから、傍から見たら何が起こっているか解らないだろう。
ただ純粋にモンスターが動く前に攻撃を繰り広げたうえ、それでも攻撃してきたモンスターの攻撃を流し他のモンスターにダメージを与える。
それを180度全てモンスターに囲まれ、一斉に襲い掛かられた状態で行うのだ。
普通にスキルを使った状態のサポートが無ければ出来る事じゃない。
スキルが終わり、漸く儂が動きを止めた時には仲間のメンバーも部屋の中に入ってきており、後衛の魔法が炸裂する瞬間だった。
儂が全力でスキルを出し切ったと言うのに、倒せたのはたったの五匹。
残りざっと軽く見ただけでも30は残っている。
儂は魔法にまきぞえにならないようにモンスターの攻撃を受けながらもその場から離れる。
次の瞬間儂がいた所を中心に、三メートル範囲内全てから炎のが吹きあがりモンスター共全てを焼き払った。
儂はスキルを使い終えた段階でHPが四割程度まで減っており、最後無理に抜け出した御蔭で二割位しか残っていなかった。
だが直ぐに支援から回復が来て全快する。
「おーお疲れ―。ってか良く耐えたねぇ。AGI型でしょ? 基本的にあの数だと即死したと思ったよ」
「いや、本当にね。思わず最初死んだと思って一度入った後、慌てて部屋からでちゃったくらいだしね」
「まぁ支援の二人が気付かなければ全員で逃げてたかもしれないは。何とかなってるって解ってから慌てて詠唱に入ったけど何とか間に合って良かった良かった」
そんな事を言いながら笑っていた。
正直突っ込みたかったが、確かにあの状況ならそう考えても仕方ないかと儂も思った。
正直儂も最初勢いよく飛び込んでいなければ直ぐに逃げたのだが、勢いよく飛び込みすぎたせいで逃げられなくなったから仕方なく対応しただけだからな。
「にしてもレベル50って本当ですか? いやまぁ今入った経験値を見れば恐らくそうなんだって思うんですけど、普通レベル50位ならあの数の相手は無理ですよ」
支援の一人が「凄いですよね」と言いながらそう言ってきた。
正直儂の専用武器が扇で、スキルの舞を使っていなければ不可能だった。
舞は基本的に数が多くなれば成程回避率が上がる。
普通であれば数が増えれば増えるほど回避率は下がる物なのだが、これこそ舞の特徴でもある。
攻撃力が上乗せされるのと回避率の上昇。
ただし、回避率はそれこそモンスターが10匹以上いなければ発揮されないので、本当に集団戦に向いたスキルなのだ。
「専用武器で扇やスキルの舞って初めて見ましたけど意外と使えるんですね。今までずっとネタスキルだと思ってました」
もう一人の支援はそう言って「意外と凄いんですね」と呟いている。
確かに真面に使えなければそれこそ本当にネタにしかならないスキルだが、使いこなせれば十二分に強力なスキルになる訳だ。
とりあえず皆のそう言った称賛をうけ、てれ臭くなった儂は「とりあえず先進もう」と言って、歩き出した。
人に褒められたりするのって何か恥ずかしいな。
そんな儂を後ろの五人は笑っていた。
その後、最初に部屋見たいに可笑しな数のMHが無いまま無事最深部まで行き、BOSSを倒して迷宮を出た。
やはり名銃は疲れる。
それでもやはりうまい。
一度潜っただけでレベルが二つも上がった事を確認して改めてそう思った。
とりあえずこれから暫くは迷宮生活だな。
儂は疲れそうだ、そう思いながら次のPTを探した。