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スキルとクエスト







          【エンドレスファンタジー~スキルとクエスト~】






 儂が光の柱をくぐり抜けると其処は墓地の中にある祭壇だった。

 此処はこの大陸チュウ大陸の首都アルカディアの教会裏の復活ポイントだ。

 このチュウ大陸には全部で三つの街がある。

 首都であり、大陸の中央にあるアルカディア。

 次に大陸の最南端にあるクルーディア。

 大陸の最北端にあるナルーディア。

 チュウ大陸にある国家はアルカディア、つまり首都にそのまんま国の名前を付けられている訳だ。

 勿論その為、首都に城があり、其処には国王が住んでいる。

 とりあえず今儂がいるこの教会の裏の墓地にある祭壇はこの首都の中で北東に位置する場所にある。

 首都だけあってその広い街の中の大概は当たり前だが人家だ。

 初めての者がこう首都に初めて飛ばされると道に迷ったり、何処に何があるか解らない為探すのに酷く時間がかかったりする。

 と言っても、公式サイトに乗っている街のマップを見れば何処に何があるかなんて直ぐに解るんだけどな。

 儂はもう通い慣れた物で、そんな物を一々見なくても何処に何があるかは解っている。

 一番北には城、北西にはギルド。

 ギルドとは冒険者支援組合という正式名称がある物のほぼ全ての人がギルドと呼んでいた為、いつの間にか公式でもギルドと呼ぶようになった場所だ。

 何をおいても先ず、こうして大陸に渡ったら最初にしなくてはいけないのがこのギルドへの登録だ。

 何故ならば、ギルドで登録をしなければ真面に金を稼ぐ事も出来ないからと、ギルドで登録し、クエストをこなした事によって得られるランクと言う物が無ければ入れない場所等が出てくる為である。

 先ず何故金を稼ぐ事が出来ないか、基本的に儂達はモンスターを倒し、そのモンスターから得たアイテムを売って金に変える。

 それを売る為にはギルドでの登録が必要なのだ。

 ギルドで登録し、登録し終えてから漸くモンスターから得たアイテムを街の中の店で売れるようになる。

 そうしなければ何処に行こうと店で買い取ってはくれないのだ。

 例外としてレアアイテムを取得した時や、錬金や薬、クエストに必要な素材の場合、別途露店を個人で開いて売る事が出来るが、これもまたギルドに登録していないと不正販売と言う事でペナルティーを食らう。

 見つかる前に売れてしまえば良いが、見つかってしまえば販売していたアイテムの没収など、かなりきついペナルティーの為、滅多にそんな事をする奴はいない。

 何せギルドに登録するのに別段何も必要無ければ、何もデメリットになる事もないからだ。

 その為、儂もとりあえず最初にギルドに向かう。

 ギルドに向かいながら改めて何処に何があるかを想いだしてみる事にした。

 確か街の東には鍛冶屋、西にスキルショップ、南東にPT募集広場、南に魔法ショップ、南西にペットショップ、そして中央に武器屋、防具屋、道具屋、宿屋がある。

 それ以外は全て人家であり、儂達は家を買わなければ其処に入る事が出きない。

 家を買うと言うのは拠点を得ると言うのとまた違う。

 基本的にHPやSP等を一気に回復させるのに宿屋を使う。

 もしくは疲れを取ったり、休憩したりするのにだ。

 家は一度買えばそれらの事を全て無料で出きる。

 多少高価で有る為、実際は宿屋を使った方が全然安上がりなのだが、世の中には物好きも居るものだ。

 結構家を買う奴は多い。

 と言っても、家を買う者達の半分だけが本当に唯の趣味で買う奴であり、残りの半分はまた違う理由で家を買っている。

 どう言った者達かと言うと、Cを立てることが出来ないので、家を拠点代わりにPTでCの真似事をしたりする者達の事だ。

 そういえばと、回復云々を考えていて思ったのだが、儂の場合死んだらどうなるのだろうか?

 普通であればデスペナルティーとして経験値のマイナス10%減るだけで復活ポイントまで戻るか、蘇生魔法で復活させてもらう事が出来る。

 それはあくまでゲームの中であった場合だ。

 儂の場合未だ是が夢か現実かが解っていない。

 いや、何となく痛みとかもあれば疲れも感じ、身体の感覚一つ一つが余りにもリアルに感じられるから現実っぽいが、もう少し時間をおいてから結論を出す事にしよう。

 もし現実だった場合、死んでしまえばそれで終わりかもしれない。

 そう考えると無茶な事や、無謀な事は出来ないな。

 まぁ、例えゲームであっても儂は死ぬと言う事が嫌だから滅多に無茶や無謀な事はしなかったし、今は未だ気にしても仕方が無いか。

 実際その時にならなければ解らない事だしな。

 そんな事を考えていると漸くギルドに辿り着いた。

 広いだけあり、移動するだけでかなり時間がかかるのだ。

 儂はギルドの扉を開け中に入った。

 中では酒場となっている一階で未だ日が落ちていないと言うのに飲んだくれている冒険者達がいる。

 これも普通に当たり前の光景だ。

 このゲームの中で味覚が再現されている訳ではないが、雰囲気的な物と相談する場所と言ったら酒場で酒を飲みながらと言う印象が強いからだろう。

 実際にリアルに飲んでいる風景が見られるが、あくまで風景が見れるだけなので酔う事等あり得ない。

 ただまぁ、実際今この場にいる儂だとどうなるんだろうか。

 少し考えてみて試しにとカウンターにいる酒場の親父にビールを頼んで飲んでみた。

 あービールだ、完璧にビールの味がする。

 と言う事は儂の場合味を感じる事が出来ると言う事は恐らく酔っぱらう心配もあると言う事だ。

 注意しないといけないな。

 勿論ここにあるのは酒だけじゃ無く、飯だって食べられる。

 実際ゲームをしていた時にキャラクターには空腹等は無かったが、儂は今少し小腹が減っている感じがする。

 やはりゲームの中と違い、食事等もきちんと取らねばならないのか。

 と言う事は睡眠もか、面倒くさいと感じるが、実際それが当たり前なんだよな。

 とりあえず、簡単なサンドイッチを頼むと直ぐに出てきた。

 食べてみるときちんと卵と野菜の味がした。

 儂はそのサンドイッチをばくつきながら二階にある、ギルドの本部へ向かう。

 階段を上った先には二階の半分を境にカウンターが置かれ、その手前には丸い四人座れる程度の椅子が三つばかり置かれている。

 カウンターの両端にはクエスト板という、クエストが書かれている板が置いてある。

 先ずは登録をしなければいけないのでカウンターにいるギルド受付員に話しかけた。



  「ようこそ冒険者支援組合へ。今回はクエストの受領ですか?クエストの破棄ですか?それともクエストの完了報告ですか?」


  「いや、登録をお願いしたい」


 儂がそう言うと「かしこまりました」と言って、一枚の書類を手渡してくる。

 其処に書かれているのは『名前』と『種族』と『レベル』と『専用武器』の四つだ。

 基本的に登録は難しい物ではない、と言うか酷く簡単な物だ。

 其処に書かれている所にそれぞれを記入すればそれで終わり。

 因みに種族や名前、レベルや専用武器に嘘の報告を書いた場合直ぐにばれる。

 受付の人から「間違えていませんか?」と言う答えを繰り返し頂く事になり、先に進まないので面倒な事をせず素直に記入する。



  「はい。確認致しました。ギルドの登録は以上となります、専用武器のクエストがございますが受けられますか?」



 儂は一も二も無く頷いた。

 このクエストを受ける為にわざわざスキルのレベルを上げずにいたのだから。

 今現在のスキル経験値は900程溜まっている。

 モコモコ一匹で3貰える事から大体300匹位倒した計算になる。

 そしてこのクエストで得られるスキル経験値は4000。

 それこそのちのち、レベルが上がれば一匹のモンスターからでもこの経験値は得られるが、最初にしてはかなり大きい物だ。



  「ではこちらがクエストの詳細になります。頑張ってくださいね」



 受付の人がそう言って微笑みながら儂を見送ってくれた。

 因みにカウンターの人は女性、かなりの美人だった。

 そしてにギルドにはランクと言う物があり、このランクによって受けられるクエストも変わってくる。

 その上ランクが上がらなければ入れない場所等もある為、このランクは上げておいた方が良いのだ。

 ランクはEからSまであり、受けたクエストが一定数を超え、ランクアップのクエストを受ければランクが上がる。

 ランクアップのクエストがまた、それまでのクエストのワンランク上のクエストになるのでそこそこ難しくなる。

 そういう時はPTを組んだりして助けてもらう事が多い。

 勿論レベルを上げて一人でやり遂げる事だって出来る。

 とりあえず今は、専用武器のクエストだ。

 このクエストの詳細は簡単に言うと舞の練習と扇の使い方の練習だ。

 とりあえずそのクエストで指定されている場所に向かう事にする。

 と言っても場所は直ぐ傍で、このギルドの直ぐ裏の空き地だ。

 其処に教えてくれる人がいると言う訳だ。

 このクエストも実際以前に体験している。

 普通の人であれば下手すれば一週間たっても終わらない場合もある程、初めてのクエストにしては難しい。

 だがそれも仕方の無い事だろう。

 扇という特殊な武器で戦うからには特殊な戦い方が必要であり、それを身につける為には何も知らない状態からでは時間もかかる。

 何より可哀想なのは、このクエストを受けられない者達だ。

 最初にスキルレベルを上げてしまった者達はこのクエスト自体紹介されない。

 そうすれば戦い方や動き方を教わる事無く戦闘に赴かねばならないのでいざ扇を手に入れて使ったとしても全く扱いきれない。

 むしろ今まで使っていた短剣や剣の方が全然良い方だ。

 だが、そうしてしまうと専用武器に扇を選んだ意味が無い、そんな事が多くあった。

 儂は教えてくれる人の元に辿り着くと、其処にいたのは細いとても戦いをする様な感じのしない人だった。

 真っ白い肌、華奢な手足、細い首。

 切れ長の綺麗な目に、腰下位までの綺麗な真っ直ぐに伸びた黒い髪。

 貴族の令嬢という者を見た事は無いが、きっと見るとしたらこういう人を言うのだろうと言う手本みたいな人だ。



  「ようこそいらっしゃいました。舞と舞を元にした戦闘技術の取得の為に来たのですね?」



 儂が頷くと、目の前の女性も頷き「では」と続いた。

 何処からともなくその手に扇が握られ、実際に踊る。

 途切れる事無く、決して早く無いと言うのに一つ一つの動作に目が追いつかない。

 何より、確り見ようとしても余りにも綺麗なその動きにいつの間にか魅いってしまい、終わってからハッと目が覚める。



  「今のが基本的な動きになります。先ずは今の足運びから覚えて貰いますね」



 途中から見惚れて見れていなかったが、これでも過去何度も見ている上に、死ぬ間際まで実際その舞の技術で戦闘をこなしていたのだ。

 もう頭の中にその動きは嫌と言うほど叩きこまれている。

 足運び、基本となる足運びは決して足を宙には浮かせない。

 滑るように、それでいて音をたてないように次の動作に邪魔にならないように動かしていく。

 足運び一つでも、足だけを注意していては意味が無い、腕や身体、首や頭も全て気を付けなければ成功しないのだ。

 儂は基本となる動きをとにかくゆっくりと、正確にこなしていく。

 戦闘で思い知った。

 最後にゲームをしていた時の儂のキャラクターとは全然感覚が違うので、同じ感覚でやってしまえば失敗すると。

 だからこそ、本当にゆっくりと動かし続ける。

 動けるのが解れば少しだけ速度を上げ、それを繰り返す。

 そして今現在、実際どれくらいの速度で行えるかを確認し終えてからその足運びを終える。



  「まぁ、お見事です。初めてでこれほどとは、以前にも経験が御有りでした? あらあら、申し訳ありません、栓無き事を尋ねてしまいましたね、今の貴方の動きを見ていると基本は全部出来てしまっていますね。ならばその動きで実際にモンスターと戦えるかを試しましょう」



 おや?

 これは初めてだな。

 普通であれば、此処から扇の持ち方から、使い方。

 身体の動かし方と姿勢の矯正が入る筈だったんだけど。

 と言う事は元々、この動きが出来る人であれば他の練習を飛ばす事が出来る様になっていた訳か。

 道理で最初から何で一番難しそうな、足運びの練習から何だと思ったらそう言う理由か。

 儂はとりあえず、その人から練習用の扇を借り、練習用モンスターと書かれた自動で動く木の人形を相手に戦う事になった。

 やはり短剣等を持つより扇を持っている方が安心できる。

 長年使い続けた武器だから当たり前と言えば当たり前だ。

 ゲームの中での出来事であっても、実際儂自身が考えて動かし続けていたのだからそう思っても可笑しくは無いだろう。

 人形は意外と素早い動きで儂に接近してその拳を突き出してくる。

 儂は左足を滑らせ半身になりながら扇で突きだされた拳をいなす。

 そのままクルリと回るように背後を取り右足で人形の足をからめ捕り、体勢を崩す。

 体制を崩し、辛うじて転ぶのだけを回避した人形にその扇を頭部に振る。

 ダメージ自体は大したことが無い、それはそうだろう、実際問題未だスキルを取った訳でもないのだからダメージ自体はそんなに出ない。

 それでも、体勢を崩し、無防備な頭部への攻撃の為、普通に攻撃した時よりはダメージが出ている上、上手く当てられたようで少しふらふらとしている。

 儂は叩きこむように滑り込み人形の懐に入り込むと下から顎を身体全体の動きを使い打つ。

 勿論打って終わりな訳が無い。

 下からの打ち上げた後、上から打ちおろす。

 そしてまた足を滑らせ人形の側面に動き、脇に扇を一閃させ一度距離を取る。

 今までのが一動作。

 舞の動きでの攻撃による一動作だ。

 勿論その間に随時変更を加えたり、中断させたりする場合もある。

 基本となる動きというだけだ。

 儂が距離を取ると同時に人形が倒れ、人形との模擬戦闘練習も終わった。



  「お見事です。やはり以前に経験が御有りの様ですね。動き自体、考えた通りに身体がついて行っていないようでしたが、見事の一言につきました。これでは私がお教え出来るような事は何もございません。より良い舞を舞えるようになる為これからも頑張ってくださいね」



 儂は扇を返すとそう言われ微笑まれた。

 相手が同じ台詞や決められた台詞しか言わないのが解っていてもこれだけ綺麗だと目をどうしても引いてしまう物だ。

 そんな儂自身に苦笑を洩らしながら「ありがとう」と返事を返しその場を後にする。

 因みに今回は儂一人だけだったのであの人が一人だけしかいなかったが、実際何人もクエストを受けている場合は他にもこの場所にその教える人が現れる。

 儂と同じように扇を使う場合、あの人が一人でクエストを受ける者全員に教える事になるが、扇以外に短剣や片手剣、杖等様々な武器がある為、その武器のクエストの場合は違う人が現れてクエストを行う。

 この場所がそう言う場所なのだ。

 儂は改めて扇を持ち、動いた時の感覚を思いだす。

 やはり良い物だ。

 実際扇以外にも片手剣や斧等色々な武器を使った事があったが、やはりどうしても一番は扇だ。

 是がもし、儂が長年使い続けた武器が扇で無ければまた変わっていたのだろうが、実際使い続けていたのは扇なのだ。

 やはり扱い慣れた物が一番だ。

 よりいっそう扇を少しでも早く手に入れたいと思いながら、ギルドに行き、クエスト完了の手続きを終える。

 手続きと言ってもただ、終了しましたと言うだけだ。

 達成の確認自体は自動で確認されているらしいので、虚偽の報告は一切通用しない。

 儂は「おめでとうございます」という言葉と共にふわっと全身に光の粉みたいなのがかかるのが見えた。



 「これでクエスト完了となります。何かクエストを行う際はクエスト板からクエストを選び、私に一言受領許可を求めてください」



 そう言って、ぺこりと頭を下げてきた。

 儂はとりあえず近くにある椅子に腰を掛け、ステータスを確認する。

 其処には確りとスキル経験値が+4000されていた。

 儂は此処で漸くほくほくしながらスキルのレベルを上げて行く。

 とりあえず五つある全てのスキルを1ずつ取る。

 最初にスキルを取る時に使う経験値は100、全部をレベル1にした時点でスキル経験値が500減った。

 レベル2に上げるには500必要になり、3にあげるには1000、4で3000、5で5000、6で15000、7で30000、8で100000、9で2500000、10に上げるのに500000必要になる。

 なかなか一杯一杯まで上げるのが大変なのだ。

 とりあえず、足運びは今までの動きから何となく出来るので後回しにして、先ずは扇知識をレベル3まで上げた。

 舞もレベル3まで上げて一度スキルウインドウを閉じた。

 先に扇知識と舞のレベルを5まであげる。

 そして他の奴を5まで上げてから扇知識を10にする。

 扇知識が10になれば両手で扇が使えるからだ。

 儂の基本スタンスは両手での舞だった。

 先ずは其処を目指す。

 儂はレベルが低いスキルとステータスを見て、まだまだ先は長いと思いながら、頑張らないといけないと改めて決心した。

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