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資金繰り







          【エンドレスファンタジー~資金繰り~】






 儂がこの世界に来てから一年近くが経った。

 少しでも楽しくこの世界で生きる為に数多くのPTに参加し、友人と呼べるような者達が何人か出来ていた。

 と言っても本当に数人、全部で五人程度だ。

 知り合いレベルの者達であればそれこそ優に百を超える人数がいる。

 これでもPT募集広場に行けば必ず誰か彼らから挨拶される程度に顔も広まっている。

 そんな中でやはり一番多くPTを組んでいるのは友人の五人とだ。

 大概この五人と儂の六人でPTを組み色々と遊びに行っている。

 大体夜の9時位から夜中の2時位までらしい。

 らしいと言うのはこの世界では実際時計等と言う物が存在せず、朝、昼、夕方、夜と言った大雑把な感覚で話しをするのだ。

 時間に関して比較的ルーズな世界だと言う事をこの一年で良く知った。

 例えば街の人から頼まれごとをして、昼過ぎ位に行くと言われたので太陽が丁度真上に上って来た時間位から待ち合わせ場所で待っていた。

 それから何時間かは解らないが、その待ち合わせの人が来たのは夕方になる少し手前位の時間帯であった。

 そんな事が何度かあり、儂自身そう言う物なんだと割り切る事にした。

 と言うよりもそうするしか無かった。

 とにかく友人達がいる間は基本的に固定PTでずっと遊び続け、いなくなってからはPT募集広場にいる他のPTに混じって遊んでいる。

 基本的にほぼ全ての事が判明しているこの世界で冒険と言うのは殆ど無い。

 名前こそ冒険者と呼ばれたりしている物の、実際は唯の便利屋見たいな形になっている。

 儂もこの一年で何度か死にかけた事があった。

 それでもどうしても遊びと言う感覚から抜け出す事が出来なかった。

 どうしても実際の死という感覚が湧かない。

 最初の頃は死ぬのが怖いとか良く思っていたと言うのに何時の間にこんな風になってしまったんだろうか。

 もしかしたら最初からそう死ぬのが怖いと思いこんでいる、そう思い込んでいただけなのかもしれない。

 解りづらい上に面倒くさいな、まぁそんな事を一々考えていても仕方がないか。

 儂がそうやって友人がいない間もPTに参加したりして遊び続けているせいか、いつの間にかレベル差がどんどん開いて行った。

 今現在の儂のレベルが93。

 友人達が88から91の間だ。

 一番下のレベルの友人とはギリギリ公平を組めるレベルで、儂が後一つレベルを上げてしまえば公平を組めても経験値効率が可笑しくなる為、一緒に遊ぶ機会が少なくなる。

 折角出来た友人と遊ぶ時間を減らすのも嫌なのでレベルを上げるのを抑えようかと考えたんだが、友人達がいない間暇でしょうがない。

 スキルもギリギリで遊びで取れる物もないのでやはり狩りに行くのが一番楽しいのだ。

 やはり人と一緒に遊んでいるときが一番楽しい。

 その結果今のようにギリギリのところまで来てしまった訳だ。

 どうしようかと友人達と話しているときに、ポロっと出た発言でそれを目指す事になった。

 それぞれで情報を集めつつ、何処が良いかを話し合う。

 何をか。

 それはCを作ると言う事だ。

 実際Cメンバーであればレベル差があっても10レベル差までは公平が出来るようになる。

 実際、儂も最初その考えが思いついた物の、言ってから拒否されたらショックがでかいと思って発言できなかった。

 だからこそ友人達の方からそう言ってくれたときは本当に嬉しかった物だ。

 Cを作るには先ず拠点が必要だ。

 どうせならそれなりの所が良い、友人達と儂の意見が一致して探すのになかなか時間がかかった。

 何せ今現在儂達はレベルがそれなりに高いとはいえ六人しかいない。

 それでそこそこの場所等は大概取られてしまっている場所ばかりで、他のまだ取られていない拠点はどれもがさい物ばかりなのだ。

 どうしようかと考えているときに、友人の一人が吉報を持って現れた。

 どうやらアップデートがあるらしく、次のアップデート後に拠点が一気に増えるらしい。

 増える拠点は全て公式で発表され、場所も発表されている。

 ただしモンスターの強さや、どんな種類がいるか、どれくらいの難易度かは知らされていない。

 つまり公式で発表された写真と場所から大体これくらいの強さだろうと言うのを予想しなくてはいけない。

 そんな中儂達の間で意見が一致した拠点があった。

 写真からは其処まで大きくは無い拠点だったが、場所がこのチュウ大陸の少し北側にあるマウル湖と呼ばれる湖のほとりにある小さな屋敷だ。

 Cの許容人数が30人、人数自体は別段気にしていないので問題ない。

 目を引いたのはそのマウル湖という場所と屋敷の綺麗さからだ。

 湖に面したその屋敷は湖側の部屋にはテラスがあり、天気の良い日はそれこそそのテラスでまったりしたく成る程の良い出来だった。

 それ以外にも屋敷一つ一つの部屋の広さやデザイン、屋敷自体も中世の貴族が住むような威厳のある建物ながら、年季がある感じがする風袋で少し何処となく温かさも感じられると言った物だ。

 何故これほどまでに解るかと言うと、実際に見に行ってみた。

 次のアップデートまでは実装されない物の、その屋敷自体は以前からずっとその場所にあったからだ。

 ただし今まではただあるだけで中に入る事が出来なかった。

 次回アップデートで拠点として開放されるので、一時的に中に入る事が可能となっているだけだ。

 勿論他の拠点も同じように中に入る事が可能になっている。

 他の拠点もいくつか見てみたが、どうしてもこの拠点が一番だった。

 儂達はお互いを見あいながら「これしかない!」と消め、アップデートの日にかけて準備を進めた。

 回復アイテム等を大量に購入していく。

 儂の友人達のPTはバランスが良く前衛、後衛、支援がそれぞれ二人ずつに分かれている。

 だからこそある程度度の狩り場にもいけるし、少し上の敵であっても倒しに行ける。

 回復アイテム等を各自揃えて、今現在の資金を確認する。

 六人全員の全財産を合わせて約35000000L程。

 足りない、絶対に足りない。

 他の友人たちも「先ず足りないだろうな」とぼやいていた。

 次のアップデートまで後三日。

 儂達は多少の無茶を覚悟に二つ上の迷宮にチャレンジする事にした。

 実際レベルだけ見れば此のレベルでも問題なく行けるのだが、普通であれば十人は欲しいところだ。

 それを六人で特攻する、かなり危険だが、何とかなるだろう。

 何故此処を選んだかは、モンスターの数が多い事が上げられる。

 モンスターの数が多ければ多いほど儂にとって有利になり、他のメンバーにとっても大量殲滅が得意なメンバーばかりだ。

 同じ前衛の友人は両手斧を使うタイプのSTRとVITを只管上げ続けた耐えながらの一撃必殺タイプに見えて、実際耐えながら大量殲滅スキルタイプだ。

 後衛の二人は土と雷の魔法使いタイプと氷と火の魔法使いタイプだ。

 魔法使いタイプは基本的に殲滅力が高い。

 一対一ならまだしも、一体多の戦闘になった時の殲滅力は他の追随を許さないレベルだ。

 それも儂のPTには四属性全て揃っている為度の敵が来ても問題ない上、氷属性以外の場合、氷属性の魔法で凍らせてから雷で基本属性関係無く大ダメージを与える事が出来る。

 支援の二人は純粋に身体能力向上や属性攻撃軽減の支援魔法に特化させたタイプと、範囲回復を主に回復量を上げ、アンデッドや不死属性の敵に絶大なダメージを誇る聖魔法を収めたタイプの二人だ。

 儂ともう一人の全英でモンスター共を混乱させている内に後衛の二人が魔法で仕留める。

 その間儂達を死なさないように支援をする二人。

 普段の戦法はこんな形になる。

 今度から金を稼ぎに行く迷宮では流石にその手は使えないが、似たような物だ。

 基本的に儂の役割は変わらない。

 ただ、この迷宮はモンスターが可笑しいほどに多いうえ、ターゲットが移りやすい。

 その為儂が飛び込み、もう一人が後衛や支援の護衛をする事になる。

 後衛の方に流れる数自体少ないとは言え、それでも10匹以上は流れるとみて間違いない。

 その隙に二人の後衛が儂ともう一人の前衛の方に共に範囲魔法を仕掛け殲滅する。

 ただ、この迷宮のモンスターの一部が恐らくその魔法一発では仕留める事が難しいと思われるので、生き残った奴等が光栄に流れないように儂ともう一人が気をつけねばならない。

 支援の二人は何とか儂ともう一人の前衛が死なないように支えてもらう。

 儂の方は比較的余裕が多少あるが、もう一人は純粋に耐えるタイプなので数が多くなれば成程、支援の一度のミスが命取りになる。

 そんな感じで話しあいつつ儂達は迷宮に挑んだ。

 此処のモンスターからは儂が望んでいた高レベル用の扇が手に入る。

 ただしドロップ率が物凄く低い為望み自体は薄い。

 それでももしかしたらと思うのは悪い事じゃない筈だ。

 そんな思いを抱きつつ、かなりギリギリに近い状況で狩り続け二日目、後衛の一人「レアが出た!」と大声で叫んだ。

 儂達は湧いたね。

 此処のレアはどれをとっても凄い良い値段になる。

 扇であれば儂がもらえる事になっているが他の奴は資金繰りの為に売りに出させる。

 儂は多分他のメンバーよりドキドキとしながらその後衛に近付いた。

 どうだと言わんばかりに差しだしたレアアイテムは残念ながら扇では無かった。



  「おお、鎮魂の札かよ! 是一個で多分拠点買えるだけの金溜まるぜ!」



 もう一人の前衛が嬉しそうに叫んだ。

 鎮魂の札。

 扇よりさらにドロップ率の低い極レア品だ。

 効果として、BOSSの全能力を半減させる効果がある。

 正直言って反則に近い位のアイテムだ。

 ただ、今現在この手のアイテムを使ってまで倒そうとしな毛r場いけないBOSSと言うと、それこそ拠点に潜むタイプのBOSS位だ。

 低レベルで挑むのならまだしも、ある程度レベルが上がってから挑むのであれば、拠点BOSSを除けば普通に倒す事が出来る。

 だからこそ、Cを作る目的で第人数で上位の拠点を探してる者には喉から手が出るほど欲しいアイテムだ。

 是一つで安く見ても500000000Lはする。

 上手く露店に一つとして出ていなければ1.5倍位までならふっかけられるかもしれない。

 儂達はいったん此処で止めるか、この調子を生かしてもっと頑張るか悩んだが、正直類は友を呼ぶと言った感じで集まった仲間内の決断は早かった。



  「こりゃやるしかねぇ! ガンガンこの調子でレア出そうぜ!」


  「そうよね! こんなレアが出たんだから他のだって出て可笑しく無いわ! むしろ出ない方が可笑しい筈!」


  「よっし! ガンガン行こうぜ!」


  「拠点の内装もかなり来れるだけ貯ちゃいましょう!」


  「いやいや! この調子でいけばそれ以上に俺達の装備だって一新出来るかも知れねぇぜ!」



 と言った感じで誰一人帰ろうとする者がいなかった。

 一応意見を出した儂でも、実際帰ろうと言われれば必死に止めただろう。

 そんな感じでその後も狩りを続け、三日間狩りをし続けた。

 まぁ結局そんな上手い話しがある訳も無く、レアはそれ一つきりだった訳なんだけどな。

 とにかく、ログアウトをする必要が無い儂がとりあえず鎮魂の札を露店で出す事になった。

 一応、このアイテムが売れなくても拠点を買えるだけのお金は貯まっていると思われる。

 実際、実装されてみないと値段が解らないので少しでも多く持っておきたいところなので、出来れば売れてほしい物だ。

 とりあえず、通常の1.5倍ぷらす少し上乗せの800000000Lで出してみたところ、出した瞬間売れた。



  「なっ! 売れたよ」



 思わず呟いたね。

 出して一分経たないうちに売れちまったんだからしょうがないだろう。

 念の為持ち金を確認するが、きちんとある。

 凄い運が良いと思っていると、クスクスと儂を見て笑っている者が一人いた。

 そちらに視線を向けると「あっ、すいません」と言って謝ってきながら「実は」と話し始めた。



  「私達のPT、丁度貴方達があの迷宮にいるとき近くにいたんですよ。そして偶々そのアイテムが出たのを見てたんです。そして騒いでいる声が聞こえて、そのアイテムが売りに出されると知ったのでずっと待ってたんですよ」



 そう言ってから、速攻売れた時の儂の驚きようが面白くて笑ってしまったと言う事だ。

 此処一ヶ月ほど幾ら探してもこの鎮魂の札が見つからず、仕方なく自分たちで取りに行っていたのだがやはり出ず、その矢先だったので多少高くても即買したと言う事だ。



  「まぁ笑われた分も含めて結構高い値段で買ってもらったから良いですよ。毎度ありです」



 儂はそう言ってそいつと別れた。

 そして次の日、拠点を取る為ログインしてきた五人に悪徳商人の烙印を押されながら儂達は見事その拠点を手にする事が出来た。

 拠点の値段は予想よりはるかに高く、鎮魂の札が売れていなければ買う事が出来ないレベルの値段だった。

 拠点値段、550000000L。

 予想金額の優に約五倍の金額だった。

 流石に高すぎだった為全員から苦笑が漏れた。

 だがそんな物は直ぐに収まり、中に入って自分達の部屋等を決めた時には全員が全員物凄く嬉しそうに笑っていた。

 こんな姿を見られ、こんな思いが出来るならこの金額た大して高く無い。

 そう思った瞬間だった。

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