婚約破棄は終わりの始まり
新作です、暇つぶしにどうぞ。
「レミア・ハーネット、君との婚約を破棄する」
「……はい?」
私は思わず聞き返してしまった。
今日は王家主催の社交パーティー、王太子様の婚約者である私ことレミア・ハーネットはいきなり王太子様に婚約破棄を宣言されてしまった。
「婚約破棄、ですか……、理由を聞いてもよろしいですか?」
「真実の愛に目覚めたのだ!私が本当に愛しているのはこのミレイユだったのだ!」
よく見ると隣には見知らぬ少女がいた。
「そうですか……、因みに国王様はご存知なんですか?」
「勿論父上には報告済みだ」
うん、あの親バカ国王なら王太子様が何をやらかそうと咎めもせず賛成するだろうな。
「……国王様が知っているのであれば私は何も言いたい事はありません。婚約破棄、了解しました」
私はそう言ってお辞儀をした。
「ミレイユ様、どうか殿下をよろしくお願いいたします。私は失礼させていただきます」
そう言って私は入口に向かった。
こういう時は一旦引くのが一番だ。
王太子様は思い込みが激しい方で一旦決めるとテコでも動かない人だ。
それに間違ったとしても謝らない人で注意しても聞かないし都合の悪い話は聞き流している。
本当に王族で無かったらぶっ飛ばしたいぐらい嫌な奴だ。
色々言いたい事はあるけれど後はお父様にお任せしよう。
私は入口の扉に手をかけようとしたその時だ、バァン!と勢いよく扉が開いた。
「ぎゃん!」
私はもろに扉とぶつかってしまい吹っ飛んでしまった。
「いたぞ!アイツが王太子だっ!」
「俺の娘に手を出した癖によくも平気に捨てやがったな!」
「俺達に高い税金を払わせて自分達だけ贅沢しやがって!」
「ここにいる貴族共は皆殺しだっ!」
突然入ってきたのは武器を持った平民の群衆でした。
「かかれーっ!!」
『おぉーっ!!』
群衆達は一気に襲いかかりました。
「あわわ……」
私はパーティー会場の隅で体を縮こませて震えていました。
「な、何を……ぎゃあああぁぁぁぁっっっっ!!」
「ま、待て、話し合おう……うわああああぁぁぁぁっっっっ!!」
貴族達も武器を持っていれば立ち回っていたでしょうけど神聖なる王城に入る時は武器を持つのは騎士や兵士以外は禁止されています。
なすすべもなく群衆の餌食になっていきます。
ある者は串刺しにされある者は棍棒で殴り殺され……。
華やかなパーティー会場は一瞬にして地獄絵図みたいになりました。
「王太子を捕まえたぞっ!」
「その横にいるのは婚約者だな、コイツらは公開処刑だ!」
「磔にしてやろうか?」
「いや火炙りだな」
「首吊りでもいいだろう」
「ひっ、ひぃぃぃぃぃ!!」
王太子様はガタガタ震えています。
「ま、待って!私は婚約者じゃないわっ!人違いよっ!」
真実の愛の相手のミレイユ様は必死に否定していますが多分聞く耳を持ってないでしょう。
「おいっ!別班が国王を捕えたぞっ!!」
「本当かっ!よしっ、公開処刑だっ!」
そう言って群衆達は王太子様とミレイユ様をズルズルと引きずっていきます。
「レ、レミア!た、助けてくれっ!」
「レミア様、私が悪うございました!お願いです、説得してください!」
もしかして私が仕組んだと思ってる?
残念だけど私は一切関係ない。
群衆達が去りパーティー会場は嵐が去った後になった。
床に散乱するグラスや料理、そして死体の山々……。
どうやら無事だったのは私だけみたいだ。
「婚約破棄されたと同時にまさかクーデターが起こるなんて、ね……」
私はヨロヨロと立ち上がりパーティー会場を後にした。