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第8話

 11月10日ぶん

 もう少し狂ったような人物を書きたい。

 狂人と同じ思考を辿ることが出来ればいいのだが……。まだまだ狂人への道は険しいようだ。

 俺が住んでいる家は平屋ではない。二階建て、それから屋根裏部屋が四方に一つずつ。屋根裏部屋が別れているのは、家族の趣味嗜好がそれぞれ違うためだ。つまりは秘密の倉庫。開ければ家族であっても嫌悪感を互いに抱いてしまう程の物品が詰め込まれた、魔境と呼ぶに相応しい地である。

 そんな屋根裏部屋の一角。家の玄関側に面した屋根裏部屋に俺はいた。満足に立つことすら出来ないこの部屋にいる理由はただ一つ。俺の欲求を満たすために他ならない。



「ああ、素晴らしいですご主人様。リアが私達のために恥ずかしそうに顔を真っ赤にしながらも働いている! これでグラのこともここから観察出来ればよかったのですが……。家屋が邪魔ですね」

「家屋が無ければあんなに遠くても視認できるのか。獣人の五感は人間より秀でていると聞くが、羨ましい限りだよ」

「きっと今夜は二人傷をなめ合うように一緒のベッドで寝るんです。あはぁ……。きっと心地よい子守歌が聞こえてくるはずですよ!」

「俺は少年たちを泣かせたいわけでは無いのだがな。だからどうしても譲れないと言ってきた下着だけは男物にしてやったんだ」



 立って観察できないのなら座って観察する。

 ゆったりとした椅子に腰かける俺とリスタッタ。この部屋に取り付けられた窓は向こう側からは見えない仕様であるため大きな物音をたてなければ気付かれないはずだ。耳が良いとはいえ、ある程度の防音処理を施したこの部屋からの小さな物音を判別することは出来ないだろう。

 心配事があるとすれば、興奮気味に長い尻尾をバッサバッサと動かすリスタッタが大声を出さないかというものと、噂で又聞きした第六感というものが本当に存在していた場合だ。気配なんてものを感知された日にはどうしようもない。



「でも下着を男物にすることを許可したのは僥倖だったかと思いますよ?」

「ほう? その心は?」

「端から端まで女物でかためてしまうと、始めの内は泣きたいほどの酷い羞恥心に襲われるかもしれませんが、根底から男ではなく女であると言われ続けているように錯覚してしまい、一つ間違えると諦めで自分を閉ざしてしまう可能性があります。その点、一部男としての要素を残せば自分は男であると自問自答することが出来ます。なので、慣れは怖いですが心が壊れてしまうよりはよいかと」

「ふむ。まあ、その程度で壊れてしまうような心にお前が育てているとは思えんがな」



 こいつはある程度の幸せに身を置いた状態の弟達を絶望させてその表情の変化を楽しみたいと言ったのだ。絶望の際に表情が消えてしまったらきっと彼女は楽しむことが出来ないだろう。そこら辺は、方向性は違えど同類として理解することは出来た。

 つまり、多少の精神的苦痛程度では家族を守っているという支えがある以上彼らの心が壊れることはない、ということだ。女性ものの下着はそうだな、何らかの罰を与えるときに使うとしようか。



「ああ! 見てください。そよ風なのに必死にスカートの裾をおさえてる! ロングスカートだからその程度じゃめくれないのに!」

「ああ、素晴らしいな。俺はああいう表情が見たかったんだ」

「ふへへ、かわいいですねぇ。うちの弟たちは……」



 魔力に関しては相当鈍いようだ。

 これから沢山リスタッタと共に楽しませてもらうとしよう。


 今日の筋トレ日記

 腕立て伏せ30回

 腹筋30回

 背筋30回

 これを二セット

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