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シスターズアルカディア~転生姉妹とハーレム冒険奇譚~  作者: 藤本零二
第2部第1章~ワールドアクア~
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第11話「闇の目覚め」

*


 6月22日の土曜日、あたしことカズヒとイツキちゃんとツキヒちゃん、そして陽子ちゃんの四人は“ワールドフラワレス”のイツキちゃんの屋敷へとやって来ていた。



「では、改めて、本日は陽子さんの歓迎会的なものも含めて、この四人で一日デートを致しましょう!」


「いえーい!!」


「い、いえーい…」


「はぁ…、まぁ、いいっちゃけどね…」


「あら?陽子さんとツキヒさんはお疲れのようですけど、昨晩はよく眠れなかったのですか?」


「逆にイツキちゃん達は何でそんな元気なん…?

 昨晩、あんだけエッチして、よーそんだけ体力残っとーね…」


「わたくしとしては、お兄様成分を大量に摂取したことで、通常の三倍元気増しな気分なのですが」


「右に同じく!」


「…分かった、もーツッコまんよ……

 それで、ウチら四人で今日はなんすると?」


「そうですわね…、具体的にはノープランなのですが…」


「ちなみに、お兄ちゃんは、今日の午前中はアキラちゃんとカラオケデートらしいよ?」


「ああ、例の編入試験合格のお祝い的なやつね?

 なーんかアキラちゃんだけズルかない?」


「まぁまぁ、良いではないですか、ツキヒさん。

 アキラさんは、わたくし達とは違って、前世で叶わなかったお兄様への愛が、今ようやく叶ったのですから、それくらいは大目に見て差し上げましょう」


「これが2000歳の余裕か…」


「何かおっしゃいまして?」


「いや、なんも?」



 とまぁ、そんな感じであたし達は仲良し姉妹四人デートを楽しむつもり満々だったのですが……、



「大変ですお嬢様っ!!

 モモヤマ坂に魔獣が同時に四体も出現しましたっ!!」


「分かりましたわ!今すぐに片付けに参ります!」


「うわー、なんかデジャブ…」



 メイドのメイさんからの報告で、あたし達はモモヤマ坂へと向かうことになったのでした。




*


 魔獣とは主に“ワールドダークネス”に住む生物なんだけど、何らかの要因で、この“ワールドフラワレス”に突然現れることがある。


 その理由は、魔人のモモコちゃんから聞いたことがあって、“ワールドダークネス”以外にも、自然由来の魔力“マナ”がわずかながらに発生する場所があるみたいで、そのマナが一時的に大量発生した際に、魔獣が生まれることがあるみたいなんだよね、迷惑なことに…

 お兄ちゃんが「マナというのは、“ワールドフラワレス”にとっては異物みたいなものだから、その異物を定期的に発散するための自然浄化システム的なものが魔獣なんじゃないか」って言ってたけど、よく分からん。


 マナの大量発生によって出現する魔獣は、その場所ごとに決まっていたり、完全にランダムだったりと、その法則そのものは分かっていないらしいけど、モモヤマ坂にはガロメが比較的多く出現する傾向にあるっぽくて、確かにあたし達が最初にこの世界に来た時にもガロメが出現したし、最近もミライちゃん達が退治したばかりだという。



 だから、今回もガロメだろうと思ってやって来たら、なんと違った!


 一体は確かにガロメみたいな見た目だったけど、ガロメが日本のカブトムシみたいな見た目なら、こいつは三本の長い角が生えたコーカサスオオカブトのような見た目をしていた。

 そして、残りの三体は、ギラファノコギリクワガタのような見た目の奴に、パラドキサカマキリのような見た目の奴、そしてタランチュラのような見た目の奴だった。



「いや、チョイスがマニアック過ぎやろも!?」


「分かる人には分かる組み合わせだねぇ…」


「ふむ、あれは“キングガロメ”に“ジャレン”、“ワイルドカギラス”、そして“クモンゲル”ですわね。

 四体同時出現というのは珍しいですが、わたくしとカズヒさんであれば対処は出来るでしょう」


「わっ、私はどうすれば…!?」


「陽子さんはここにいて下さい。

 ツキヒさんは陽子さんの側にいてあげて下さい」


「悔しいけど、ヨウ君がおらんと“戦乙女ヴァルキリー”になれんしね…

 気を付けてよ、二人とも!」


「オッケー!」



 というわけで、サクッと魔獣退治といきますか!




*


「カズヒさんはワイルドカギラスとクモンゲルをお願い致します!」


「りょーかい!」



 あたしとイツキちゃんは、それぞれ精霊術である『スピリット』を使い、精霊化して空へと飛んだ。

 基本、精霊術で飛行の術『フライ』が使えるのは“光の精霊術師”だけだけど、『スピリット』で精霊化してしまえば、『フライ』を使わなくても空を飛ぶことが出来る。

 今更言うまでもないかもだけど、イツキちゃんは“炎の精霊術師”なので“炎化”、あたしは“風の精霊術師”なので“風化”している状態だ。



「さーてと、どうしますかねー!」



 高さで8~10メートルはあろうかという巨大なカマキリ(ワイルドカギラス)巨大なクモ(クモンゲル)を前に、あたしはしばし考えるが、考える暇は与えんとばかりに、クモンゲルの口から糸が発射された。



「おっと!」



 しかし、“風化”した今のあたしにそんな攻撃が当たるわけなく、超高速で避ける。

 と、避けた所へ今度はワイルドカギラスの両腕の鎌が振り下ろされる。

 これも余裕で避けられるかと思いきや、魔力で速度が上がってるのか、意外と速さがあって、もう少しで当たりそうになった。



「危なっ!?」



 ヒヤッとしたのも束の間で、再びクモンゲルの糸が飛んで来た。

 避けても良かったが、しかし、あえて止まり、あたしはその糸の先端を掴んだ。



「良いこと思い付いたもんね!」



 クモンゲルの糸を掴んだあたしは、それを持ってワイルドカギラスの周りを回るように飛んだ。



「この糸でカマキリ(ワイルドカギラス)を拘束してやる!」



 だが、糸はワイルドカギラスの鎌であっさりと切断されてしまい、あたしの計画はあっさりと頓挫した。



「ありゃりゃ」



 そして、ワイルドカギラスが再び鎌を振り下ろすと、今度はそこから刃状の光線が発射されて、あたしの方へと飛んで来た。



「マジかよ、飛び道具持ちかい!!」



 あたしは距離を取りながら、それらの攻撃を避けるも、そこにクモンゲルの糸攻撃が加わってきて、なかなかに煩わしい!



「えぇい!こうなったら、攻撃は最大の防御、ってね!

 『ウィンドカッター』っ!!」



 あたしは二体の攻撃を相殺するつもりで精霊術である『ウィンドカッター』を放った。

 これまた言うまでもないかもだけど、精霊化している今なら無詠唱で術が使えるのだ。


 すると、あたしの放った『ウィンドカッター』は、ワイルドカギラスの刃状の光線と、クモンゲルの糸を真っ二つに切断してなお威力を落とさず、そのまま本体へと直撃し、ワイルドカギラスの鎌とクモンゲルの足を見事に切断したのだ!



『『キシャァアアアアアアアアアアアアアアアッ!?!?』』



 緑色の血を吹き出しながら、叫び声をあげる二体。



「おおっ!あたしの攻撃、予想以上に強くなってる!?」



 とはいえ、このまま『ウィンドカッター』で切り刻んで倒しちゃうのはなかなかにグロテスクであたし好みでは無いので、ここからはスマートに決めようと思う。



「虫の弱点は炎が相場!

 なので、これで決まりだ!!」



 あたしは『物質転移』の超能力で、目の前に三枚の赤いメダルを出現させ、それらを纏った風の力で浮かせながら、霊力を込める。

 霊力はイメージの力でもあり、あたしがイメージする赤いメダルの力は“炎の不死鳥”。

 “炎の不死鳥”の力を纏った三枚のメダルを横に真っ直ぐ並べ、鎌と足を失って身悶える二体の魔獣へと渾身の一撃をぶつける!



「これがあたしの霊能力メダルシュートっ!

 いっけぇえええっ!!

 『炎の(ブレイブ)不死鳥フェニックス』ッ!!」



 渾身の霊力を込めて放った三枚の赤いコインは、不死鳥を思わす炎を纏い、ワイルドカギラスとクモンゲル目掛けて飛んでいった。



『『ギシャァアアアアアアアッ!?!?』』



 そして、二体はあっという間に巨大な炎に飲み込まれて、灰すら残さず蒸発してしまった。



「おぉう…っ、まさか、ここまでとは……」



 我が力ながら、とんでもない威力に内心冷や汗を流すのでした。




*


 カズヒさんにワイルドカギラスとクモンゲルの二体を任せてはみましたが、やはり何の問題も無く倒せたようですわね。


 わたくしことイツキは、キングガロメとジャレンの攻撃を避けながら、横目でカズヒさんの戦いっぷりを見ていました。

 苦戦することはないだろうと思っていましたが、ああもあっさりと倒してしまうのを見せられると、わたくしも負けてられませんわね…!



「さて、わたくしも本気を…、出すと、今のわたくしなら周囲一帯を消し飛ばしかねませんので、一割くらいの本気を…っ!」



 まずはノコギリクワガタ(カズヒさんが言うにはギラファノコギリクワガタみたいらしいのですが、違いがよく分かりません)のような見た目のジャレンから。

 ジャレンは、その頭の二本の角のようなもので敵を挟み、同時に電撃を流すという嫌な戦い方をする魔獣ですが、要は挟まれなければ何の問題もありません。



 わたくしは距離を取って『フレイムアロー』を放ちましたが、ジャレンの『電磁シールド』によって阻まれてしまいました。



「そういえば、そのような技を使えましたわね…!」



 わたくしの攻撃を防いだジャレンは、反撃とばかりにその頭の二本の角で挟もうと接近してきましたが、わたくしはその間をすり抜け、ジャレンの頭部へと近付き、右手を直接触れました。



「この距離なら、バリアーは張れませんわね?

 『フレイムアロー』っ!!」



『ギシャァアアアアアアアッ!!』



 わたくしの攻撃はジャレンを左右真っ二つに引き裂き、その後裂け目から引火して燃え上がり、灰も残さず蒸発致しました。

 しかし、わたくしの攻撃はジャレンを引き裂いた後も地面を突き進み、モモヤマ坂の地面に亀裂を入れてしまいました。



「ふむ、なかなか加減というのは難しいものですわね…」



 と、そう言えば先程からキングガロメが見当たらないことに気付き、周囲を見回していると、



「イツキちゃん、上だよっ!!」


「よ、陽子ちゃんっ!?」



 下の方からツキヒさんを振りほどかんばかりの勢いで飛び出してきた陽子さんの声が聞こえたので、その声の通り上を見上げますが、何の姿も見えません。



「イツキちゃんの真上っ!!

 数十メートルくらいの所にあのカブトムシみたいなのが隠れてるっ!!」


「ほっ、本当におるん!?うちにも全く見えんっちゃけど!?」


「ふむ…、確かにわたくしにも見えませんが……、」



 しかし、わたくしは陽子さんの言葉を信じ、自身の真上へと向けて術を放ちました。



「空ならば、ある程度本気をだしても問題ありませんわね?

 『バーニングエンド』ッ!!」



 無数の『フレイムアロー』を炎で束ね、一本の巨大な槍へと変えたこの術は、相手を貫通させて、内部から燃やし尽くすことに特化した術です。

 以前、カズヒさん達を前にガロメを屠った時も同じ術を使いましたが、今回はあの時よりも遥かに威力も速度も増しております。

 なので、放った瞬間に真上へと飛んで行き、直後、



『ギシャァアアアアアアアッ!?!?』



 という断末魔の叫びと共に、空には花火が上がりました。



「汚い花火ですわね」



 と、こうしてわたくし達は、王国騎士団達が到着するまでのわずか5分程の間に、四体の魔獣をあっさりと討伐したのでした。




*


「た、倒したん…?」


「う、うん、多分…。

 キングガロメの気配は感じなくなったし…」



 イツキちゃんとカズヒちゃんが魔獣達を相手に戦っている間、“戦乙女ヴァルキリー”としての力が使えんウチことツキヒと、姉妹・・の中では唯一の一般人である陽子ちゃんと一緒に、少し離れた場所から二人の戦いを見守っていたのだが、イツキちゃんとジャレンが戦っている最中に、突如姿を消したキングガロメ。

 そして、何故かそのキングガロメの行方に気が付いた陽子ちゃんが隠れていた場所から飛び出し、イツキちゃんに伝えたのだ。

 どうやら、キングガロメは周囲と同化して姿を隠すことが出来る能力を持っているようだ(多くの生物が持つ擬態能力の応用みたいな感じらしい)。



「キングガロメの気配って…、陽子ちゃん、魔獣の気配を感じられると?」



 魔獣の気配、つまりは活性化した魔力の存在を感じられるのは、同じく魔力を扱う魔人だけのハズだ。

 なのに、何故陽子ちゃんはそれを感じられたのか…?



「わ、分からない…、でも、確かに感じられたの……」



 う~ん…、昨晩ヨウ君の加護を得て魔術を使った時も、体に影響が無かったみたいだし、今回の魔力を感じ取った能力といい、最悪の予想が現実のものとなりそうだ……



「やっぱり、陽子ちゃんは……、」



 魔人、あるいはそれに近い存在、と言いかけて、それ以上は言えなかった。



「ツキヒちゃん、私…、」



 不安そうな陽子ちゃんに、ウチは笑いかけた。



「いや、陽子ちゃんは陽子ちゃんのままやけ、気にせんでええっちゃん!

 第一、魔人の姉妹なら他にもおるし、それに“吸血鬼ヴァンパイア”とかもっとヤバい存在だっておるんやし、なーんの心配もいらんけん、陽子ちゃんはタイタニックにでも乗った気でおり!」


「タイタニックって、それ沈むってこと!?」


「ちょー、二人で何楽しそうに話してるのー!?」


「あらあら、わたくし達も混ぜてもらいたいですわね」



 と、そこへ魔獣を倒したイツキちゃんとカズヒちゃんが戻ってきた。



「ま、タイタニックは冗談やけど、ウチらには世界を何度も救ったヨウ君がおるんよ?

 女の子一人くらい救うなんて楽勝やけん、もし、陽子ちゃんの身に何かあったとしても、絶対に大丈夫よ!」


「ツキヒちゃん…、うん、ありがと♪」



 ま、実際そうなのだ。

 相手が魔王であっても、救ってみせたヨウ君なのだ。

 きっと、今回も何があっても大丈夫だ!



 それから、王国騎士団達がやって来る前にウチらはその場を離れ、元々の予定だった姉妹デートをするために王都小倉(こくら)タウンのセントラル地区へと向かうのでした。




*


 イツキとカズヒとツキヒ姉ちゃんと陽子が“ワールドフラワレス”で姉妹デートをしている頃、“ワールドアクア”にて午前中のカラオケデートを終えた俺とアキラは、自分達の家へと帰って来ていた。



「あら、お帰りなさい、イッ君、アキラちゃん♪」


「ただいま、サクヤ姉ちゃん」


「たっだいまー!」



 家に帰ると、サクヤ姉ちゃんが出迎えてくれた。

 サクヤ姉ちゃんはキッチンで昼食の準備をしていたようで、「もう少しで出来上がるから、手を洗って居間で待っててね」と言うと、キッチンへと戻っていった。

 この匂いからすると、どうやら今日の昼飯は焼きうどんのようだ。


 洗面所で手を洗い、居間へ向かうと、テーブルにはマイカ姉ちゃんとナナカ姉ちゃん、そしてセイラがすでに座っていた。



「お帰り、二人とも!デートは楽しかった?」


「たっだいまー!うん!すっごく良かった♪」


「ほほ~う?どうやら、二人とも朝から盛り上がったようじゃのう♪」


「うん♪ヨウ兄ってば、もうすっごく大胆で…♪」


「そ、その話はやめようか、アキラっ!!な!?」


「えー?お姉ちゃん、気になるな~?」


「私も気になります!」



 カラオケで俺とアキラに何があったのかはいずれ何処かで語る機会があるかもしれないが、今はそれよりも大事な話をしなければならない。

 そのために、今日はサクヤ姉ちゃんとマイカ姉ちゃんとナナカ姉ちゃん、そしてセイラという年長グループ(セイラは最年少ではあるが、精神年齢的には最年長なので)に集まってもらったのだ(アキラはデートからのおまけだ)。

 ちなみにカナン姉ちゃんは、“ワールドアイラン”で忙しくなった“喫茶妖獣メイド”のアルバイトだ。

 サクヤ姉ちゃんもそこでアルバイトしているのだが、代わりにハルカやレイヤ達が出てくれている。


 そして、この話し合いにはもう二人参加することになっているのだが、ちょうど焼きうどんが出来上がったところで、玄関の扉が開く音が聞こえた。



「ただいま」


「お帰り、母さん」



 居間に入ってきたのは元六魔皇の一人であり、現俺とカズヒの実の母親である陽恵はるえ母さんだ。


 そう、今日は陽子のことについて、母さん達に何か知ってることはないか聞こうと思って、仕事で海外に行っている両親を呼んだのだ。

 元魔人として魔術も支える両親なら、『転移』の魔術を使って海外からでもすぐに帰って来られるからね。



「いい匂いがすると思ったら焼きうどんですか。

 これはサクヤちゃんが?」


「はい、お母様のお口に合えばよいのですが」


「家族の作った料理が口に合わないわけありません。

 早速いただきましょう!話は食べながらでも、」


「ちょ、ちょっと待って、母さん!父さんはいないの?」



 同じく元六魔皇の一人である一郎かずお父さんの姿が見えないようなのだが…?



「ああ、あの人は留守番です。

 ちょっと、色々とやらかしましてね、あの人…」



 ふむ、これはそれ以上深く尋ねない方がいいパターンだな、うん。

 にしても、ウチの両親にしても、“ワールドアイラン”で“喫茶妖獣メイド”の店主をしているダイダロさんにしても、六魔皇時代とは話し方も性格も少しずつ変わってるのが面白いな(父さんはあんま変わってないっぽいけど)。


 とくにウチの両親なんて、六魔皇時代は超ラブラブのバカップルで滅多なことでは喧嘩なんてしたこと無かったと聞くし。

 母さんが嫉妬深かったのは当時からも変わってないようだけど…



「あら、陽一よういち君、何か言いたそうね?」


「い、いえ、何も!?」


「そうですか」



 顔は笑ってるけど、オーラがどす黒い!!

 アルテス時代にもここまでのヤバいオーラは見たことないんですけど!?

 父さんは何やらかしたんだよ!?



「あらあら、だとすると、お父様のために作った焼きうどんが一人分余ってしまいますね」



 サクヤ姉さんのそのセリフに、母さんが答えた。



「あ、それなら大丈夫ですよ、父さんの代わりに別の方を呼んでますから」


「別の方?」


「ええ、陽一よういち君もよく知る方ですよ」



 それを聞いた瞬間、俺の背筋に寒気が走った。



「…それって、まさか……?」


「やっほー!!ヨウイチー!!

 元気しとったー!?」



 背後に「バーン!!」という効果音有りで居間に入ってきたのは、銀色の長い髪に、両耳にはディフォルメされた幽霊のマスコット付のピアスをはめ、左胸の辺りにドクロのマークの入った真っ白いワンピース姿の美少女だった。



「ん?今私の胸見た?

 そりゃヨウイチの姉妹達と比べたら小さいかもしれんけど、これでも一応80はあるけんね!?」


「いや、別に貧乳とか思ってねーし!!

 つーか、このやり取り、つい最近もしたよな、ヘラーナ!!」



 そう、その少女の正体は、なんと元六魔皇のヘラーナだったのだ!



「というかなんでヘラーナがここに!?」


「いやー、ハルエちゃん達に話さんといけんことがあったんやけど、ちょうどヨウイチ達も()()()で話があるって聞いたけん、ならついでにヨウイチ達にも話しとこーち思ってね」


「話さんといけんことって、陽子のことで、か?」


「そうそう!」



 まさかヘラーナが陽子の件に絡んでくるとは思わなかったので驚いた。

 あと、どうでもいいけどヘラーナも随分と話し方というか性格が六魔皇の頃と変わってる気がするんだが…



「ま、とりあえずサクヤちゃんの焼きうどん食べよーか!

 冷えたら不味いとは言わんけど、やっぱせっかくならあったかい内に食べんとね!」


「いや、なんでヘラーナが仕切るんだよ…」



 そんなこんなで、俺達はひとまず昼食を済ませ、その後ヘラーナから陽子に関する衝撃の事実を知ることになった……




*


「ただいまー」



 “ワールドフラワレス”で、イツキちゃんとカズヒちゃんとツキヒちゃんとの“姉妹デート”を終えた私こと陽子は、私達の世界“ワールドアクア”に戻ってきて、小倉こくらにある自分の家に戻って来た。



「お帰り、陽子」


陽一よういち君達とのお泊まりは楽しかった?」



 家に帰ると、早速お父さんとお母さんが声をかけてきて、私にそう尋ねてきた。



「う、うん、まぁ、楽しかった、かな…?」



 さすがにヨウ兄ちゃんやカズ姉ちゃん達と多人数エッチしたとは言えず、口ごもってしまった私。

 ちなみに、両親は私の気持ちに気付いていて、私がヨウ兄ちゃんと結婚しても構わないと思ってくれている。

 ところが、肝心のヨウ兄ちゃんにその気が全く無いことも分かっているので、前途多難だね、と心配されてもいた。


 しかし、ヨウ兄ちゃんが事故にあって異世界パラレルワールドから帰って来てから状況が変わり、ようやく私の想いを知ってくれて、ヨウ兄ちゃんの方も私を()()()()()愛してくれるようになった。

 一般的な恋愛では、“妹のように愛される”というのはバッドエンドみたいなものだが、ヨウ兄ちゃんに限って言えば、イコール“恋人として愛される”ということになるのだから、私的にはハッピーエンドだ。

 まぁ、カズ姉ちゃんだけでなくて、他にも愛されてる姉妹が20人以上いるってのが問題だけど、それでもただの従妹いとことして扱われるよりは遥かにマシだ、と思う。


 とはいえ、その辺の事情はさすがに両親には話せていないが…



「ふぅ~ん…?でも、何だか少し雰囲気が変わったみたいね?」


「そ、そうかな?」


「分かるわよ~?

 陽一よういち君とうまく()()()のね?」


「うぐ…っ!?」



 お母さんがどういう意味でその言葉を言ったのかは分からないが、勘のいいお母さんなら、私とヨウ兄ちゃんの関係が少し前進したことに気付いてもおかしくはない。

 さて、何と答えたものかと考えていると、お父さんが先に口を開いた。



「あ、そうそう、急で悪いんだが、父さん仕事の都合で海外に行くことになってな、それで今日の夜にはもうたないといけないんだ」


「え!?メチャクチャ急過ぎない!?」


「そうなのよ~!

 それで、お父さん一人だと心配だから、お母さんも付いていくことにしたから」


「ええっ!?じゃあ、今夜から私一人暮らし!?」



 そんな急展開、漫画とかアニメとかでしか見たことないんだけど!?



「それはそれで心配だから、陽子ちゃんは今日から陽一よういち君の家にお泊まりさせてもらいなさい」


「ええええっ!?」


「いやー、ちょうど陽一よういち君との仲が進展した後で良かったじゃない!

 今まで通りだとちょっと気まずかったかもしれないけど、もう大丈夫でしょ?」



 いやいや、別の意味で気まずいよ!!



「ま、ともかくお父さん達がいない間に、陽一よういち君と()()()()を作ってしまっても結構だぞ!はははは!!」



 そう言ってお父さんが私の肩にポンと手を置いた。

 いやいや、普通父親って娘がお嫁に行く時とかって、反対したりしない!?

 いや、反対されても困るんだけど、堂々と学生の間に子供作れって言う父親もどうなの!?



「い、いやー、さすがにそれは…、」


「あ、もう陽子ちゃんの荷物はまとめてあるから、今からでも陽一よういち君の家に行って大丈夫よ」


「荷物まとめるのはや!?

 いや、っていうかそういう事情なら昨日泊まる時点で教えてくれてたら、今日ここに帰ってくる必要なかったやん!」


「だから、急で悪いと言っただろ?

 父さん達も今朝その話を聞いたんだから」



 いや、今日土曜日で仕事休みのハズなのに仕事場から連絡来てすぐ海外に行けって、どんだけブラックな会社に勤めてんの、ウチのお父さん…



「ま、そんなわけだから、陽一よういち君によろしくな!」


「お母さんの方からも連絡はしておくから、他に持っていく物があるなら、今の内に準備しておきなさい」



 そんなこんなであっという間に話は進み、私は門司もじにあるヨウ兄ちゃん達の家へととんぼ返りすることになったのだった。



 ……今からして思えば、この時のとってつけたような急展開に、違和感をほとんど覚えなかったのが不思議なくらいだ。

 明らかに不自然なタイミングでの両親の海外行き、それによる私のヨウ兄ちゃん達の家への居候計画。



 それらは全て、私が“魔王”へと覚醒するために仕組んだ、()()の計画だったのだ………

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